今日の一曲!avengers in sci-fi「Riders In The Rain」 | A Flood of Music

今日の一曲!avengers in sci-fi「Riders In The Rain」

 【追記:2021.1.5】 本記事は「今日の一曲!」【テーマ:雨】の第十五弾です。【追記ここまで】

 「今日の一曲!」はavengers in sci-fiの「Riders In The Rain」(2014)です。5thアルバム『Unknown Tokyo Blues』収録曲。

 5thに関しては嘗てこの記事の中で全体的な言及を行っているのですが、本曲のことは見事にスルーしていたため、今回スポットライトをあてられる機会が巡って来てよかったです。

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 アルバム全体に対する感想を頭に入れておいたほうが以降の話も理解しやすいと思うので、上にリンクした記事も必要に応じてご覧になっていただけると助かります。ブログの更新を再開して未だ不慣れな段階で書いた記事なので、視認性(改行位置や文字サイズ関連)に対する配慮に欠け、読みにくくてすみません。


 先にメロディとアレンジから見ていきましょう。イントロから続くビートメイキングは非常にノリの良いものとなっていて、これだけを聴くと楽しげな印象も受けるくらいなのですが、ギターとシーケンスフレーズがインしてくると途端に切ない趣が醸され始めるため、「雨の曲だな」と直感的に理解するのには充分なアレンジですね。

 後程詳しくふれますが、A/Bメロに関しては歌詞の内容的にもハードでスタイリッシュなイメージがよく似合うので、メロディそのものにもエッジィな質感の底に切なさを滲ませているかの如き奥深さがあります。しかし一転、サビに入ると俄にファンシーに変質するとでも言いましょうか、雨に喩えるなら横殴りの状態からいきなり『雨に唄えば』的な明るさが見えてきたような気分になり、歌詞の世界観とあわせて聴くと一層キュートだなと思いました。かといって、サビだけが本曲の中で浮いているという感じでもないので、変化を感じさせながらも統一感は薄れていないという意味で、巧みなアレンジなのだろうと評価します。



 以降は歌詞解釈セクションです。パターンa~cの三つを思い付いたので、欲張って全て掲載することにしました。cはおまけみたいなものですけどね。ちなみに、なぜ欲張ったのか?についての答えも一応最後に用意してあります。


【パターンa】

 タイトルの「Riders In The Rain」をストレートに受け取るのであれば、本曲は「雨の中を走るバイク乗り達の歌」であると言えます。"ライダース"だけでは乗り物を限定出来ないかもしれませんが、"濡れたレザー着て"という表現があるため、直接「バイク」が歌詞に登場せずとも、そこに繋げたい意図はあるのではないでしょうか。

 アルバムでは「Citizen Song」と「Tokyo Techtonix」の間に据えられているナンバーで、前後の曲が「現代人/近未来人」ひいては「東京」にフォーカスしたものであることも考慮すると、本曲のイメージとしては景勝地をツーリングするような楽しげなものではなく、雨夜の首都高を走り抜けるといった類の都会的なビジョンが浮かんできます。集団暴走的な含みはなく、孤独な個が寄り集まって塊を成しているような映像です。

 "絵空に素敵な素敵な素敵な/傘描いて雨に転がって/絵空に素敵な素敵な素敵な/傘があって誰もが踊っていた"はサビの歌詞ですが、"絵空"とあるように非現実の世界を描いている風にも思えるので、"ライダース"は必ずしも現実に縛られていない気がするという意味で、あくまでも「イメージ・ビジョン・映像」と表現しました。アレンジのセクションで示したように、このパートだけはファンシー且つキュートな印象を受けるので、ここは"ライダース"のというよりも、雨が持つ二面性を描き出しているとの理解です。


【パターンb】

 "絵空"を拡大解釈したものだとも言えるかもしれませんが、本曲の歌詞はアヴェンズお得意のSF的な目線で読み解くことも可能だと感じたため、今度は曲名の「Riders In The Rain」をなるべくひねってみた場合の考察(半ば妄想)を載せてみます。

 "どうか今だけは宇宙転げながら"と、"月までも続く都市遡ってね"がわかりやすいですが、視点が地球外まで飛ぶ場面があることをまず重視しました。現在の人類の技術力では…と考えると非現実の描写ではありますが、未来に於いては実現可能かもしれない世界を描いているというところは、まさしくSFだなと。


 この理解に基いて歌詞を見ていくと、"ライダース"は「宇宙船の」としたほうがしっくりきます。偏に宇宙船と言っても色々なタイプが想定出来ますが、ここでイメージして欲しいのは「一人乗り且つスタイリッシュな船体を有したもの」です。

 宇宙船の補足:アニメ作品で例示すると、『ドラゴンボール』の丸型宇宙船に代表されるようなポッドタイプではなく、『マクロスシリーズ』の可変戦闘機(ファイター形態)や『カウボーイビバップ』のソードフィッシュⅡのような飛行機タイプを意識しています。アヴェンズというか木幡さんの好みを忖度するならば、『スター・ウォーズ』を始めとした映画に登場する宇宙船を持ち出すべきなのでしょうが、僕があまり詳しくないので得意分野のアニメに寄せてしまいました。映画に絞って一応画像検索もしてみましたが、最近のものでは『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』に出てくるスカイジェットがなかなかイメージに近かったです。レクサスがデザインを手掛けたそうで、現実と地続きになっている未来っぽさが気に入りました。


 若干脱線していますが、ここで主張したいのは「歌詞の内容を宇宙空間での出来事だとして見てほしい」ということです。そうすると、"雨"も"傘"も別のものを指しているのではないかと思えてきます。連想のプロセスは省くのでなんとなくで理解してくれと感性に丸投げしますが、"雨"は「小惑星群」で"傘"は「パラボラアンテナ」だというのが僕の宇宙的理解です。たとえば「隕石雨」という言葉もありますし、パラボラアンテナの構造は傘に近いとも言えるので、そこそこ共感を得られやすいのではないかと期待を込めて。

 …と、ここまで宇宙に寄せておいて何ですが、これらが仮に比喩として正しかったとしても、歌詞に於ける整合性についてはあまり深く考えていません。要するに、歌詞中の"雨"と"傘"をそれぞれ上掲の語に置き換えたとしても、論理的には意味は通らないだろうということです。通常、人はそれを「理解が間違っている」と言いますしその可能性は大ですが、ここでも重視しているのはあくまでもイメージであることに留意してください。"傘描いて雨に転がって"という言葉の連なりを見た時に、宇宙空間的なビジョンが脳内に映し出されてもいいのではないかと感じたので、その解釈を助ける言わばTIPSとしてこのパターンbを提示した次第です。


【パターンc】

 先に「おまけのようなもの」と書いたのは、自分の中では有力ではない解釈だからです。しかし思い付いてしまったものはしょうがないので、ごく簡単にではありますが披露します。

 収録アルバム内の別の曲「Soldiers」の歌詞に依存しているのですが、そこに出てくる"ミサイルの雨"という表現を見て、本曲の"雨"も実は「ミサイル」のことで、"傘"は「シェルター」のことではないかと捉えた怖い解釈です。"誰もが踊っていた"は、仮初の平和の下での現実逃避じみた狂乱を表しているのかなぁと。SF的な世界観に照らすと宇宙空間での戦闘や惑星単位の戦争も珍しくはないので、なくはないかなという気がしたのですが、"絵空に素敵な"のような形容にはそぐわないですよね。



 長くなっていますが、パターンは関係なく気になっていることがあるので最後に言及させてください。

 本曲が収録されているアルバム自体=CD本体に注目すると、レーベル面に「それは、まわりに/狂ったふりです。/私はおぼれました。」という、海外で見かける間違った日本語のような言葉が載せられているのが確認出来ます。これは上掲の歌詞解釈セクションには引用していないフレーズですが、"溺れてたのさ/濡れたライダースには/いかれたふりした君が似合ってた"に近い表現ではないでしょうか。

 つまり、本曲はアルバムの中で重要な位置付けがなされたキー曲の可能性があると言いたいのです。『Unknown Tokyo Blues』と題された作品ゆえに、歌詞上で東京への言及がある「Citizen Song」「Tokyo Techtonix」「No Future」「Anonymous」(+歌詞には書いてありませんが「Metropolis」も)あたりは、作品全体のストーリーを読み解く際にも意識されやすい楽曲群でしょうが、プロダクトデザインという外部要因まで含めて考えると、「Riders In The Rain」も重要なピースなのかという気がして、あれこれ想像出来るところが面白いと思っています。歌詞解釈パターンを3通りも披露したのは、実はこういう背景があったからなのでした。


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