今日の一曲!KOTOKO「421-a will-」 | A Flood of Music

今日の一曲!KOTOKO「421-a will-」

 【追記:2021.1.4】 本記事は「今日の一曲!」【テーマ:春|卒業/別離】の第四弾です。【追記ここまで】

 「今日の一曲!」はKOTOKOの「421-a will-」です。元はメジャー2ndアルバム『硝子の靡風』(2005)の収録曲ですが、同年の内に4thシングル曲としてリカットされました。

 KOTOKOを含めたI've Soundに関しては、「今日の一曲!」がバージョン1.0だった時に書いたこの記事が一応網羅的なものとなっているので、説明はそちらに全て投げてしまいます。


 サウンドクリエイター陣の名前で言えば、「421-a will-」は中沢伴行さんによる楽曲です。編曲は尾崎武士さんとの共同で、I'veではお馴染みのコンビですね。現在は両名とも脱退しているためI've Soundというわけではありませんが、この記事で紹介したやなぎなぎの「here and there」(2017)は、中沢さんによる作編曲でギターに尾崎さんが参加しているナンバーなので(ソースは中沢さんのTwitter)、参考までにリンクしておきます。

 タイトルの「421」という数字はそのまま日付のことで、KOTOKOのメジャーデビュー日(2004年)にちなんでいます。ゆえに曲中で描かれている季節は春なのですが、シングルリカットは10月、初出のアルバムも6月の発売だったので、タイミング的にどうなんだ?と当時は思いました。笑

 KOTOKO楽曲にはストレートに「春」(2006)があるので、どちらを紹介するか悩んだのですが、春テーマの「今日の一曲!」でここまでに紹介した三曲が全て哀しい別れを描いた(或いは思わせる)ものだったので、そろそろ前向きなトラックを登場させようと思い「421-a will-」を選びました。別れを描いた曲には違いないのですが、「出立」や「感謝」の趣が強いので方向性が違います。


 歌詞に書いていない英語詞からスタートしますが、このパートがまず素敵です。ボーカルに施された処理も含めて、その役割はあくまでコーラスだとわかりますが、メインに負けない綺麗なメロディだと思います。特にラスサビでは、サビメロに呼応するような使われ方をしていて、そこが曲中で最も美しい瞬間だという認識です。

 Aメロでは、"桜色のブーツが ああ…/早く連れ出してと誘う午後"という穏やかな立ち上がりを見せる歌詞と、"きっと去年見た景色よりも"のところのバックコーラスが好み。Bメロに入ると少し影が差した感じになるというか、新しい環境や生活に対する不安の表現と思えるような展開になりますが、適宜挿入される透明感のあるシンセの音が、そんな弱さを振り払うために奮い立つ心のようで、芯の強さを感じさせます。

 サビは特に歌詞が素敵で、"はち切れそうな鞄にもたれる私が居た"と、"薄い手帳に記した溢れそうな計画"というフレーズが特にお気に入りです。生活に密接した春の表現として、KOTOKOさんのナチュラルな観察眼が活きていると思いました。メロディも良くて、単に綺麗というよりは普通に格好良い旋律だと評価しています。やわらかく感じるのは主にアレンジとコーラスワークのおかげで、メロ自体はなかなか尖っている気がするんですよね。