第7話 母の命
妹が母の主治医から聞いてきた言葉。
母の検査結果が出たのが
10月の中ごろ・・・
年を越せないって何?
それは余命宣告なの?
母の命は、あと2ヶ月持たないの?
その言葉ばかりが頭の中を支配した。
淡々と話す妹に
やっと言葉が出た。
「本当にそう言われたの?」
「うん・・・」
「そんなに悪いの?」
「うん・・・」
「先生が言うにはね・・・癌が進行しすぎていて
原発巣もわからないんだって・・・・」
余りのショックに涙さえも出なかった。
と言うか、現実を受け入れられなかったと言った方が正しいかもしれない。
「先生がね本人には告知するかどうか
家族で話し合って欲しいって・・・
お姉ちゃん・・・どうする?お父さんにもまだ話してないんだ・・・
お父さんに話してから決める?」
本人に告知することと、そして父にまで話さなければならないこと・・・
父は大手術を終えたばかりで
まだ入院しているというのに・・・・・
あまりの過酷なこの運命に
私は神様なんていないと思った。
傲慢な言い方だけれど
なぜ私たち家族ばかりが
こんな目にあわなければならないのかと
悔しくて腹立たしくて仕方なかった。
真面目で堅物な父。
仕事人間だった父。
弱音ひとつ吐かず私たち子供のために
何十年も働いてきた母。
その両親が揃って癌になり
母は余命まで宣告された・・・
なぜ?どうして?
その答えが聞きたかった。誰かに教えて欲しかった。
その日は妹と
父に話してから決めようということになり話を終えた・・・
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第6話 宣告
検査結果を聞いてくる日がきた。
私の気持ちの中では、楽観する気持ちが強かったし
そうあって欲しいとゆう、願いがあった。
遅くなると聞いていたので
子供たちを早々に寝かしつけて
妹の帰りを待っていた。
「今から帰るね」
そう連絡があったのが夜の9時頃。
家に戻ったのは10時近くで
夕飯を食べていなかったので
妹は2人分のコンビに弁当を買って帰ってきた。
「お帰り。どうだった?結果は・・・」
「「うん・・・ご飯食べながら話すよ」
そう言って妹は食卓へ向かった。
妹のいつもと変わらない様子に
少し安心しながら私も食卓へ行って
二人でお弁当を食べ始めた。
「とりあえず・・・・結果から話すけど、
お母さんの腹水を抜いて調べたら、そこから癌細胞が見つかったって・・・」
「それで先生が言うには、腹水から癌細胞が見つかるってことは
もう末期症状で手術もできない状態なんだって。」
「年は越せないかも知れないって言われたよ。」
淡々と話す妹・・・
私は・・・私は・・・
何も言えず、食べていたお弁当の箸を置いたまま
聞くことしかできなかった。
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第5話 疲れ
母が入院してからも
病院へは私か妹が毎日通っていたが
病院までは車で20~30分掛かる場所にあり
運転の出来る妹がほぼ毎日行っていたので
一番大変だったのは妹だった。
妹だけが病院に行くときには
子供達の面倒を私が見ていたが
前にもかいたように
お互いに慣れない生活なので
イライラして喧嘩ばかりしていた。
「お姉ちゃんは何もしてない!私ばかり大変な思いしている!」
そんな言葉を投げつけられて
私はかなり腹が立ったが
実際、一番大変な思いをしてたのは
本当に妹だったのかも知れない。
でもその時、私も辛かった。
家族とは離ればなれの生活。
生まれたばかりの次男とも離れて生活していた。
頼れる夫もそばにはいなかった。
一番辛かったのは
いつまで続くか解らないこの生活だった。
母が入院してからは
検査検査の日々・・・
「今日は○○の検査だったよ」
入院してから2,3日は
いつも妹がそう言って報告してくれた。
入院してから1週間ほど経った頃
「検査結果が出たらしいから、今日先生と話してくるね。
先生との約束の時間が夜の7時くらいだから、子供達寝かせておいてくれる?」
「うん、わかった。気をつけて行ってきてね」
そう言って妹を送り出した。
検査結果が今日わかる。
きっと大したことはないだろう・・・・
その時も、私は
不安をかき消すかのように
そう思い込んでいた。
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第4話 入院
ついに母までも入院、それはわかっていたことだったが
両親とも入院という事実は、やはり辛いものだった。
入院の付き添いは妹が行ってくれた。
妹にも当時3歳と1歳10ヶ月の子供がいたので
私は実家で長男と甥2人の面倒を見ながら
妹の帰りを待っていた。
あの当時、私も妹も
小さな子供を抱えて本当に大変だった。
病院に行くにも小さな子供をいつも連れて行く訳にもいかず
大抵は車の運転が出来る妹が病院に行って
私は子供達の面倒を見ていたりしたが
気持ちの行き違いなどで
妹とはよく喧嘩していた。
子供達に夕飯を食べさせていると妹が帰ってきた。
「ただいまぁ」
「お帰り。お母さんどうだった?」
「うん、なんとかね。明日から早速検査が始まるってさ」
「そっか・・・何もなければいいね」
「う~ん。なんか私は大変な病気のような気がするんだよね・・・」
「大丈夫だって・・・」
しばらくしてから妹は子供達とともに自宅へ帰っていった。
実家には長男と私の二人。
昨日までいた夫と次男は夫の実家へ行ってしまった。
夫は自分の実家に次男を預けてから自宅へ帰る予定だった。
父も母もいない実家。
家族もバラバラになってしまった今の状況。
いつまで続くのか解らないこの状況。
心細くて寂しくて
その夜は情けないけれど、眠りについた長男の側から
離れて眠ることができなかった。
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