笑顔とありがとうを~大切な人たちへ~ -66ページ目

第3話 腹水2

「お母さんの友達でね、やっぱりお腹に水が溜まって病院へ行ったら


手遅れの子宮癌だった人がいてね、その人亡くなったのよ・・・


お母さんも同じ病気なのかなぁ・・・・」




そう話す母。


腹水が溜まる意味さえも知らなかった私は


母がそんな病気のわけがない!


そう思って母を励ました。





「そんなわけないじゃん!!大丈夫だよ!!」



「でも・・・・もし大変な病気だったらどうしよう・・・・


お父さんだって入院してるってゆうのに・・・・・」




そんな弱気な母を見たのは初めてだった。


父の病気のことで人が変わったように弱気になってしまったのか・・・


でも母は病気なんかじゃない。


ただ看病疲れで体調が悪いだけだ。


私はそう思っていた。



「大丈夫だよ!!お母さんのお腹だって入院して水を抜いてもらえば


すぐによくなるし、お父さんもリハビリしたら話せるようになるから


なにも心配しないで大丈夫!!」



「そうかなぁ・・・・」



「そうだよ!!お母さんがそんな弱気でどうするの!!」



「そうだね・・・頑張らなくちゃね。」




本当に私は大丈夫だと思っていた。


お母さんの腹水だって抜いてもらえばすぐによくなると思っていた。





いや!そう思いたかった。



そう思い込まないと


この状況は耐えられそうにもなかった。




第4話へ


第2話 腹水1

父の病院を後にして実家に戻り


妹家族は自宅へ帰っていった。


私たちが実家に来るまでの間


母の体調は良くなるどころか悪くなる一方で


見るに見かねた妹が


母を説得して、父と同じ病院で診察を受け


明日から母も検査のため入院することになっていた。


母は体調も良くないのに、私のおっとの大好物の


カレーを作っていてくれた。


そんなことしてくれなくてもいいのに・・・・



「お母さんはご飯食べないの?」


「食欲ないからねぇ・・・あんた達は食べなさい。」


「相変わらず食べられないの?」


「最近は食べてもすぐに吐いちゃうのよ・・たからおかゆくらいしかたべれないの・・」



そう言う母。


明らかに今までとは違う母・・・・



夕食を終えて子供達を寝かせつけに夫と子供達は2階へ上がり


リビングには母と私だけになった。


ソファアに横になりながら


母は私に話し始めた。


「これからどうなるのかしら・・・・最近お腹も妊婦みたいに膨れてきたのよ・・


水が溜まってるみたいな音もするんだよ。なんなんだろうね・・・・」


「水?!お腹に水が溜まってるの?」


何の知識も無かった私は


単純にお腹に水が溜まることに驚いた。


「お母さんの友達でね、やっぱりお腹に水が溜まって病院へ行ったら


手遅れの子宮癌だった人がいてね、その人亡くなったのよ・・・


お母さんも同じ病気なのかなぁ・・・・」


第3話 腹水2へ

第2章   第1話 筆談

産後1ヶ月、夫の実家で過ごし


次男の1ヶ月検診を終えて


私たち家族4人でやっと父の病院にお見舞いへ行くことになった。


術後の回復は順調なようで安心はしていたが


声を失ってしまった父と顔をあわせるのが


なんだかとても辛かった。





どう声を掛けたらいいのか・・・


何を言えばいいのか・・・・







家族4人で新幹線に乗って東京へ。


東京へ着いたら、その足で病院へ向かった。


病院に母と妹家族も来ていて


久しぶりに家族みんなが顔を揃えた。



父は思ったよりも元気そうだった。






「お父さん・・・来たよ!・・・」




返事するお父さんは筆談で


小さなホワイトボードに文字を書いて会話する。


そんなことがすごくショックだった。




「よく来たね。この子も無事生まれてよかったね」



「うん。無事生まれたよ」




そんな他愛のない会話。


でもいつもと違うのは父が筆談ということ。









なぜ筆談なの?


なぜ声が出ないの?


なぜお父さんが?


なぜ声を失わなければいけなかったの?


なぜ・・・・?なぜ・・・・・?








またこの疑問で頭がいっぱいになった。









その日はみんなで妹夫婦の車に乗って実家へ帰った。





第2話へ


第7話 兆候

出産を終え入院生活も終わり


私と長男次男は夫の実家で産後を過ごした。


義父と義母には色々とお世話になって


のんびりと過ごすことができたが


やはり自分の実家と違い、少し心細かった。




長男の面倒は殆どおじいちゃんおばあちゃんが見てくれて


私は次男の世話だけをすればよかったのだが


実家の両親のことが心配で


すぐにでも駆けつけたい気持ちでいっぱいだった。


連絡も1週間に2,3度はしていたけれど・・・




父は術後なんとか順調に回復しているようで


安心はしていたが・・・。




その日もいつものように実家に電話して


父の様子を母から聞いていた。



「お父さんはどう?変わりない?」



「変わりはないよ。」



「そう・・・よかった。あとは変わりなし?お母さんも疲れてない?」



「疲れてるってゆうかね、最近あまりご飯が食べられないのよ・・」



「やっぱりつかれてるんじゃん!」



「疲れなのかな・・・食べてもお腹がすぐに痛くなってね・・・」



「お腹痛くなるの?」



「うん・・・なんだろうね・・・・?」



「病院行った方がいいんじゃないの?」



「そんな時間ないわよ」



「でもさ・・・・」




その時は大したこと無いだろうと思っていた。


というか余り気にも留めていなかった。


妹と話をした時も


同じようなことを聞いて


妹が母に病院に行くように言っても


父の看病を理由になかなか行こうとしないとぼやいていた。


きっと看病疲れだろうねと、二人で話した。


その話はそれで終わった。




第1章完結



第2章へ





第6話 腫瘍

次男が生まれてから後は処置をするだけ。


すぐに終わるだろうと思っていたが、やけに時間が掛かっている。


麻酔が切れてきたのか、だんだん痛みの感覚がはっきりしてきて苦しくなってきた。




「苦しくないですか?」


「少し苦しいです・・・・痛みもでてきました・・・・」


「もう少しですから頑張ってくださいね」



看護師さんにそう言われたけれど、一向に終わらない・・・



早く・・・痛い・・・


早く・・・痛い・・・



こんなに私が苦しんでいるのに、先生達はのんきに世間話なんかしている。



話なんかいいから・・・早く終わらせて・・・



早く・・・早く・・・




「はい終わりましたよ。しんどかったね。


少し時間掛かったのは、右の卵巣に腫瘍が出来ていたので取り除いていました。


検査に回しますが多分良性の腫瘍だと思うから大丈夫ですよ。」



先生にそう言われてやっと手術が終わった。


「腫瘍が出来ていた」と言われたけれど、その時は手術が終わった安堵感で


言われたことさえもあまり憶えていなかった。




とにかく早く楽になりたい・・・・


そう思うほど2回目の帝王切開は苦しくて辛いものだった。




第7話へ