(目深にフードを被った修道僧たちが祈りの言葉を詠唱し、両手に捧げ持つ板で自らの頭を叩きながら、村のなかを練り歩いている)
修道僧たち:ピエ イエス ドミネ
ドナ エイス レクイエム
[ドカッ]
ピエ イエス ドミネ
[ドカッ]
ドナ エイス レクイエム
[ドカッ]
ピエ イエス ドミネ
[ドカッ]
ドナ エイス レクイエム
[ドカッ]
(村人たちの騒ぎ声が近づいてくる)
村人たち:魔女だ! 魔女だ!
魔女がいたぞ!
魔女を捕まえた!
火あぶりだ! 火あぶりにしろ!
(村人たち、魔女らしい扮装をした女性を、領主ベドヴィアの元へ連れて来る)
村人1:魔女を見つけたぞ 火あぶりにしていいか?
村人たち:火あぶりだ! 火あぶりだ!
ベドヴィア:彼女が魔女だとどうしてわかったんだね?
村人2:見るからに魔女だ
村人たち:そうだ! そうだ!
ベドヴィア:彼女を前へ
魔女:違うわ 私魔女じゃない
ベドヴィア:うーん、だが魔女らしい服装だね
魔女:みんなが私にこんな格好させたのよ
村人たち:いや、やってない! やってない!
魔女:それにこの鼻は自前じゃないわ つけ鼻よ
ベドヴィア:うん?
村人1:あー、鼻はつけた
ベドヴィア:鼻?
村人1:あと、帽子
だがこの女は魔女なんだぞ!
村人2:そうだ!
村人たち:火あぶりだ! そうだ!
ベドヴィア:彼女にこんな服を着せたのかね?
村人1:違う!
村人2:違う
村人3:違う
村人2:違う
村人1:違う
村人2:違う
村人3:違う
村人1:やった
村人2:やった
村人1:やった うん、ちょっと
村人3:ちょっと
村人1:ちょっと
村人2:ちょっと
村人3:ちょっと
村人1:その女にはイボがあるぞ
(と顔のイボを指さす)
ベドヴィア:彼女が魔女だと思う根拠は何かね?
村人3:ああ その女は俺をイモリに変えたんだ
(村人たち全員、村人3を注視する)
ベドヴィア:イモリに?
村人3:...
(村人1、大鎌の刃を噛む)
村人3:...治ったさ
村人2:とにかく火あぶりだ!
村人1:火あぶりだ!
村人たち:火あぶりだ! 火あぶりだ!
ベドヴィア:静かに! 静かに! 静かに! 静かに!
彼女が魔女かどうか、見分ける方法がいくつかある
村人1:ある?
村人2:あ?
村人1:どんな?
村人たち:教えて! 教えて!
ベドヴィア:では訊くよ
魔女がいたらどうする?
村人2:火あぶり
村人1:火あぶり
村人たち:火あぶり! 火あぶりにする!
ベドヴィア:では魔女のほかに、燃やすと言えば?
村人1:もっと大勢の魔女!
(村人1を村人3が止める)
村人2:木だ!
ベドヴィア:そうすると、なぜ魔女を焼くのかな?
村人3:...つ...まり...魔女は木でできてる...から...?
ベドヴィア:いいぞ! ハッハッ!
村人たち:おーそうだよ うん
ベドヴィア:では、彼女が木でできてるか、どうしたらわかるだろうね?
村人1:その女で橋を作る
ベドヴィア:あー でも、橋は石でも作れるんじゃないかな?
村人1:あそっか
村人たち:あーそうだ そのとおり
ベドヴィア:木は、水に沈むかね?
村人1:いや いや
村人2:いや浮く 浮くんだ!
村人1:その女を池にほりこめ!
村人たち:池だ! 池に放りこめ!
ベドヴィア:水に浮くものは、ほかにもあるかな?
村人1:パン!
村人2:リンゴ!
村人3:あー、すごく小さい石!
村人1:サイダー!
村人2:えー、グレービー!
村人1:サクランボ!
村人2:泥!
村人3:うーん、教会! 教会!
村人2:鉛! 鉛!
アーサー王:ガチョウ!
村人たち:おお!
ベドヴィア:正解!
では論理的に組み立てると
村人1:もし...その女が...ガチョウと同じ...重さ...だったら、
木でできてる
ベドヴィア:では、ゆえに?
村人2:魔女だ!
村人1:魔女だ!
村人たち:魔女だ! 魔女だ!
村人4:ほらガチョウだ
これを使いな
ガチョウ:クワッ! クワッ! クワッ!
ベドヴィア:それはいいね
私のいちばん大きな秤を使おう
村人たち:火あぶりだ! 火あぶりだ!
ベドヴィア:よろしい 支えをはずして
(魔女とガチョウの重さが釣り合う)
村人たち:魔女だー! 魔女だー!
魔女:妥当な判決だわ
(魔女、あきらめ顔で引き立てられていく)
村人3:火あぶりだ!
村人たち:火あぶりだー! 火あぶりだー!
ベドヴィア:科学的な事柄に長けている、あなたはどういう方ですか?
アーサー王:我はアーサー、ブリトン人の王だ
ベドヴィア:我が君
(とひざまづく)
アーサー王:良き騎士殿よ、キャメロットへ共に参り、円卓の騎士として我にくみするか?
ベドヴィア:我が君よ 光栄に存じます
アーサー王:名は何と申す?
ベドヴィア:「ベドヴィア」にございます 我が君
アーサー王:では「円卓の騎士、ベドヴィア卿」の称号を授ける