雨の降る 額紫陽花の紫の
芯まで濡れて 明日を待つ哉
梅雨入りの雨空に鳴く雀たち
ちゅんちゅんちゅんと
寒くはないのか
矮小な我が身に注ぐ
夏の雨は
終わりも知らず傷を掘る哉
雨の道 行方もしらず 濡れる夜の
ただ 通り過ぎる時を待つ哉
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思い出したくない事
思い出すべきではない事なのに
思い出してしまう
自分の心と人間性の問題と分かりつつ
解決する術を知らない
解決しようと進む先に
悉くまた同じブロックに見舞われる
飼い猫が野生のジャガーには成れないように、野生のジャガーが飼い猫には成れないように、
人間もまた、忌まわしい魂を漂白することはできないのだろうか。
自分の本質的な汚さに、絶望する時がある。
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雨の庭の 鳴り止まぬ朝の
気まぐれに憂鬱降りて
どしゃぶりの梅雨
泣きながら
まとめる父のレシートの山
少しずつ うずくまりつつ
出てゆくばかりの銭と
行き詰まるばかりの己が人生
なれどいつか何かを掴む為
地道に投げださずにやる也
定まらぬ己の道に
雨降りて 雀鳴くなり
元気出せよと
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地震の津波のように
悲しみは反復する時の方が
衝撃が強いこともあるようだ
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雨糸の途絶えぬ
梅雨の軒先に横たはる身に
降る昼日哉
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子宮に受けたトラウマは
いつしか剥がれ落ちたらしい
いつの間にか染み出る
自然な性欲の周期に身を任せつつ
感謝する
誰がいつ解除してくれたのか
今や忘れたけれど
思ったより早かった
無いと思い込んでいた快復に
感謝している
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我が内に 植えられし毒の
いつの間に 洗はれて又 悦びを知る哉
寝子のやうに生きたき
昼も朝も寝て
寂しい夜は飯をねだりて