ぎこちない表情は一瞬で見てとれた。
ぎこちないというよりは、明らかにノッていない、後ろ向きな表情。
女は男のその顔を見て、下がりそうなテンションを"面白がる”という漆喰で丁寧に塗り固めた。
所詮こういう仕事の男なんだと、寄せてはダメな期待を改めて知りつつ、そんな分かりやすい男を、「まだまだアマちゃんだな」と心の中で嗤うことで、その場の優位を保とうとした。
中秋の名月は思いの外綺麗で、流氷のような雲の合間に見えては隠れ、白い後光を纏いながら私たちを見守っていた。
"ぎこちない”のを隠せているようで隠していない男女は、腹いっぱいにつめこんだ焼肉を多少の満足感に反映させつつ、客としての物足りなさと、施術師としての物足りなさをお互い口に出さずに、解散していった。
秋。私たちにそれぞれの男と女ができれば、否片方にそれらしいものができた時点で、こんな違和感のある関係も続けられなくなる。
女は男の初さや物足りなさを、ワイングラスの淵についた口紅を拭くようになぞりながら、自分の理想の男とはどういうものなのか、ひとり帰り路につきながら考えていた。

