中秋の名月、を前にわたくしはせっせと掃除に勤しんでいた。
何を隠そう、わたしはその日、”男"を呼ぶのである。”男"と言っても、そんな生易しいものでも、エロしいものでもない。
わたしの財布からチャリンと音が出てゆく”男"である。
何をしているんだか。
わたしはその、括弧づけの男と、ただ月見がしたいが為に、チャリンチャリンを用意し、ホットプレートをドンキで買い付け、ルンルンうんうんと風呂の水垢や床にこびり付いた炊飯器から垂れたであろうデンプンと埃のガナッシュを歯ブラシでしこしこ擦っているのである。
どうぞここ、嗤うところなんで笑
女とは不思議なもので、恐らく男の性欲とは異質な”性欲"を持っているらしい。
男は抜ければよいのだろうが、少なくともわたしはイチ女として、ベタベタと触られながら性欲を満たすゲームには途中棄権の不戦敗の生涯白旗であった。
女の性欲とは、もっと精神的なところに起因するらしい。
女は触られて満たすというよりは、もう少し複雑な経路で性を求めているのかもしれない。
そんな”不純"なのかマジメなのかよくわからない理屈を頭でこねながら、明日ゼツタイに遅刻できない深夜1時52分、寝床でスマホをいじり倒す32歳であった。
お月見、人生ではじめて人と月を見る約束をし、それがまた人生初の男とであり、尚且つそれは人生初のチャリンチャリンを要する男であり、人生初の家で焼肉ホットプレートなのである。
楽しみなんだか呆れなんだか、よくわからない面白い時間が流れている。
この時間に混じり出す隣かどこかのタバコの匂いに窓をシャットアウトしながら、わたしはそんなチャリンチャリンな男に結果沼っていっている自分に呆れながらも、部屋が綺麗になってゆくことに満足して寝床にくるまるのであった。
割り切ったオトナの関係というのが、チャリンチャリンな関係というのが、どれほど空虚なものであるのか、わたしは自ら経験してみたいのかもしれない。
キャバクラに通うおっさんの気持ちが、何れ分かる日が来るのかどうかは、これからのお楽しみというところか。
こんなわたしを、寝かしつけてくれ。中秋の名月。
ぼくにチャリンチャリンがなくても、一年に一回くらい一緒にお月見して焼肉とか焼き芋に付き合ってくれる、ちょっとカッコイめのお兄ちゃんが現れたら、ぼくは今より多少幸せさ。
よろしく頼むわ、ハーベストムーン。笑
