内部統制制度(J-SOX)の失敗と株式公開(IPO)の激減
当然ですが、専門家たるものクライアントに対しては守秘義務があります。
そのため、一日の大半を仕事ですごしていると、
その日の出来事としては、ブログの類で書くことがあまりなかったりします。
クライアントで見れる稟議書や事業投資計画、取締役会等の議事録資料など、
特に会計監査で経験できる知識は面白いのですが、ブログでは無理です。
ですが、一般論として相談をうけて保留している、もしくは相談を受けそうなトピックについて、
説明方法の実験としてブログというものが使えそうです。
私の場合、これからの時期、株式公開(IPO)を目指す会社さん関係の仕事が多くなります。
今回はIPOをめぐる現在の市況について。
いま、株式公開は最悪の環境。
4月までの新規上場はわずかに7社!前年比-70%です。
5月、6月は1社もないのではと言われている始末です。
その原因については、株価の低迷と並んで、J-SOXの影響が大きいと感じます。
この制度は、2009年3月期の決算をもって、適用初年度となりましたが、
現場でアドバイザリー業務や監査を実施して、制度の有用性に疑問を抱かざるを得ません。
社会の貢献しない仕組みにお金は集まりません。
早晩、この制度をお祭りに変えてバブルによった業界関係者は痛い目にあうでしょう。
来期は監査法人としても、クライアントから監査報酬の下げ圧力がかかります。
一方で、ここ数年の大量採用で監査法人の固定費(人件費)は相当上がりました。
また、ここ2年間、公認会計士試験は大幅に易化しており大量合格しています。
大手企業を含めて、公開会社の決算内容はおしなべて最悪です。
このあたりの環境変化と内部統制の真実について、しばらくブログで紹介していきたいと思ってます。
サザエのはたらく不正~磯野家で分かる内部統制
http://ameblo.jp/motoko11/entry-10261941300.html
大量生産で下がるのはどの原価?
原価計算とは。
生産量が2倍になったとして、以下の原価はどのくらいになりそうでしょうか。
① 携帯電話 原価5万円/個 (内訳 材料費2万、設備償却費1万、開発費2万)
② 機械式腕時計 原価5万円/個 (内訳 材料費3万、職人の人件費2万)
③ ソフトウェア 原価5万円/個 (内訳 開発費5万)
大量仕入れで原価を下げることができるのは、固定費が含まれた原価です。
生産量が2倍になった場合、固定費は半分になります。
① 携帯電話 原価 3.5万円/個 (内訳 材料費2万、設備償却費0.5万、開発費1万)
② 機械式腕時計 原価 5万円/個 (内訳 材料費3万、職人の人件費2万)
③ ソフトウェア 原価 2.5万/個 (内訳 開発費2.5万)
あなたが、製品を製造していたり、サービスを提供していたりする場合、その原価を把握していますでしょうか。
そして、原価に占める固定比率を把握しているでしょうか。
その商材の需要が旺盛でしたり、強力な営業チームがシェアを拡大してくれるならば、固定比率を上げる創出方法を考えてください。販売数が増えるほど原価が下がって儲かります。
一方、現在の不景気時のように、その商材の需要が今後は落ちていくような局面では、変動費の割合を増やして固定比率を下げましょう。販売量が減っても原価は上がらず、苦しさが和らぎます。
いかが?
変動費、固定費と損益分岐点
簡単に言えば、会社で発生するコストのうち、売上に変動するコストが変動費です。
一方で、毎月/毎年の定期的なコストが固定費です。
カリン様のビジネスを例にとってみましょう。
通販を営むカリン社は、仙豆を一粒600万円で仕入れて、1,000万円で販売しています。カリン社の運営費の主なものは、社員ヤジロベーの年収2,000万円と、高層タワーの頂上階の賃料である1億円(年)です。
この場合、変動費は@600万円/個です。
そして、固定費は人件費2,000万円と賃料1億の合計である1億2000万円です。
カリン様は、カリン塔の最上階のオフィスを維持し、Z戦士に加わることも難しいヤジロベーの生活を確保するために、どのくらいの販売量を確保するのでしょうか。
・仙豆を20粒売ったとき
1000万×20粒=20,000万円(売上は2億円)
600万×20粒+1億2000万=24,000万円(コストは2億4千万円)
差引で△4千万円の赤字です。
・仙豆を30粒売ったとき
1000万×30粒=30,000万円(売上は3億円)
600万×30粒+1億2000万=30,000万円 (コストは3億円)
差引で+-0のトントンです。
以上を別の見方で整理してみましょう。
仙豆を一粒売ると、@400万円/個のもうけがでるのです。
この一粒あたりのもうけは、売価(1000万)-変動費(600万)です。
なにもしなくてもかかるコストは1億2千万です。つまり、固定費です。
固定費の元をとるには、1億2千万÷@400万=30粒の販売が必要です。
この30粒のときの売上が有名な損益分岐点です。
(カリン社では1000万×30粒=3億円)
また、よく使う言い方として「固定費(1億2千万円)を回収した。」などといわれます。「回収」という言葉の使い方を自然と使えるとプロっぽいです。
さらに応用しましょう。
1億2千万の固定費の元を取って、さらにカリン様は自分の取り分と株主である神様への配当を確保するために、利益が4000万円欲しいとします。
この場合は、+4000万円の1億6千万円が欲しいので、1億6千万÷400万=40粒の販売が必要です。1000万×40=4億円を、カリン社の目標利益達成点売上高といいます。
・仙豆を40粒売ったとき
1000万×40粒=40,000万円(売上は4億円)
600万×40粒+1億2000万=36,000万円 (コストは3億6千万円)
差引4000万円の利益です。
カリン様は、経営者として、今年の販売目標をヤジロベーに40粒と伝えました。
そして、内心のところ、30粒を割ったらヤジロベーの給料削減(固定費削減)と考えています。
変動費、固定費、損益分岐点という言葉の意味は、カリン様の仙豆ビジネスの例でしっかり抑えましょう。