サザエのはたらく不正 ~磯野家で分かる内部統制~ | 六本木の公認会計士いきぬき (息抜き編)

サザエのはたらく不正 ~磯野家で分かる内部統制~

我が家は母子家庭だったので、一家の大黒柱である波平見たいな存在にあこがれます。日曜のお茶の間を楽しませてくれましたね。 

ちょっと乗っかって、株式公開目的のクライアントにこんな感じで内部統制を説明したら分かってくれました。

主婦ならば、へそくりを作ったり、自由なランチを楽しむコツとして、

・家計簿をつける業務

・預金通帳を管理する業務

・資産を管理する業務


これらを一人で担当します。逆に、どれかを旦那に担当されると、内部統制が効いてそれらが難しくなります。大学のサークルや部活でも一緒です。そして会社でも。

以下、そのことを説明します。

この業界の昨年の流行語。内部統制報告制度、いわゆるJ-SOXには様々な肉食獣たちが群がりました。大手のコンサルティング会社、監査法人、ふって沸いたコンサルタントなどなど。

内部統制は、不正を起こさない仕組み。

内部統制は本来、制度とは無関係に大切なもので、中小企業や、個別商店でも大切ですし、非営利の法人でも、家計でも、大学サークルでも、お金と人がからめば必要なことだと思います。

では、磯野家の家計を例にして説明しましょう。

磯野家の家計の収入源を、波平の給与30万円とますおの給与20万円とします。家計簿は基本的にサザエがつけています。銀行口座の管理もサザエです。これに加えて、買い物もサザエが行っています。一家の大黒柱である波平もおこずかい制です。


この状態が、内部統制が全く効いていない状態です。

給料日に、銀行口座には50万円の振込みがありました。今月の生活費は、稼ぎ手の二人にそれぞれ3万円のお小遣いで6万円。食費や光熱費に15万円。かつおやわかめの学費・おこずかい、その他もろもろで5万円。住宅ローンの返済が14万円。

まとめます。

収入の合計 30万+20万=50万

支出の合計 6万+15万+5万+14万=40万

今月は10万円の黒字です。(=50万-40万)

この結果、磯野家の貯金が先月の100万円から10万円増えて、110万円になりました。

波平はサザエの家計報告に満足し、やりくりしたサザエを褒めたようです。フネも家計簿をみてみましたが、上記の費用がしっかり記載されています。

ここで、実はサザエは不正を働いていました。

いかなるリスクがあるか、お分かりですか?

① サザエは通信販売で3万円のアクセサリーを買って銀行振り込みしていました。この結果は家計簿には記録していません。


② サザエはへそくりをしています。毎月、食費や光熱費は3万円水増しされて、家計簿に記載されていたのです。

③ この結果、実は銀行残高は107万円になり、サザエのへそくりが3万円になります。サザエはこの事実を隠すために、月末にへそくり3万円をいったん銀行に預けて、残高を110万にした後、波平とフネに報告して、すぐに引き出したのです。

④ 食費のなかにサザエの好物である大福やようかんが含まれていますが、サザエはいつも家族に出さずに一人で食べています。

これらの不正は、なぜ起こったのかというと、入出金を担う財務と、記帳を行う経理と、資産の購買・管理(管財)をすべてサザエが担当したためです。

資金を調達・管理する人、帳簿に記帳をする人、資産の購買・管理を担当する人を分けることが実践的な内部統制の基本です。

今回、波平は、銀行口座入出金をフネへ、家計簿記帳をサザエへ、買い物をかつおに担当させることにしました。それによってサザエの負担がへったので、フネが行っていた洗濯とかつおが担当していた庭掃除をサザエに担当させたのです。内部統制の言う、「牽制」というコントロール(統制)が効きました。

いまでも、かつおは④に類似の不正を働きますが、サザエが厳しくレシートを管理しているので、そうそう不正は出来ません。また、サザエがへそくりを作ろうにも、フネの了解無しに銀行口座から出金できないので、一人で作ることができません。