「魔法少女まどか☆マギカ」を見たわけですが
「魔法少女まどか☆マギカ」における建築的考察②
「魔法少女まどか☆マギカ」における建築的考察③
「魔法少女まどか☆マギカ」における建築的考察④
「魔法少女まどか☆マギカ」における建築的考察⑤
「魔法少女まどか☆マギカ」における建築的考察⑥最終
ということで、わが国の魔法少女の系譜をざっと概観してみたわけなんですが、
今回のまどか☆マギカは、内容的には正直その系譜ではないんですよ。
むしろ、新世紀エヴァンゲリオンの続きって感じ、涼宮ハルヒの進化形って感じ
もします。
それは、全編を視聴してみて初めてわかることなんですけど。
最初のうちこそ「けいおん!」っぽいと思わせてくれますが、、それは騙しです。
気をつけてください、特にこのアニメのかわいさ表現には毒があります。
まあそんなことより、第1話でびっくりするのが、まどかの家です。
いきなりデザイナー住宅なんですよ。
いままでのアニメで一番現代建築を意識しているんじゃないでしょうかね、これは。
パッと見、シュレーダー邸かと思いました。
シュレーダー邸というのは、今からもう100年近くも前に建てられた当時の前衛的建築物です。
デ・スティルという芸術運動に参加していたオランダ人建築家、
ヘリット・リートフェルトによって建てられた小住宅なのですが、
それまでの建築、特に住宅における伝統とか家のイメージとか、生活感とか、
言ってみれば人間の具体的な日常生活から想起される空間とか、カタチとか、機能とか、
そういったものをすべて根底から無視するというか、縛られない。
純粋に観念的な概念から導き出した建築の姿です。
こんな感じです。
どうです?これ1924年に建ったものなんです。日本でいうと大正13年ですよ。
既に消滅してしまったソビエト連邦が出来たばっかりのころ、
日本では甲子園球場ができあがった年です。
内部も凄くって、いわゆる部屋がありません、
ていうかワンルームを可動間仕切りで可変的に仕切るというギミックを多用しています。
何か、家とか建築というよりも
レゴとかプラスティックで出来たイタリアのデザイン文房具みたいでしょう?
配色的にはRX-78、バンダイのプラモキットみたいでもあります。
後ろに見える煉瓦造りのアパートと比較してみてもこの建物の前衛さがわかるでしょう。
とにかく、建築物が重力の拘束下にあることを感じさせない工夫が満ちあふれており、
柱や梁が交差して突き抜けたり、直線や面が空間に自在に宙に浮くように絶妙に配置されています。
この建物は、あまりに前衛過ぎて出来た当時はもちろん、戦後もあまりかえりみられなく
僕が学生のころは、写真集とか紹介記事もまだ少なく
日本でポストモダンが流行った1990年代くらいから、
やっと全世界的に評価が高まったという建築物です。
と同時に、2000年くらいから、日本の建築家には大人気物件となりました。
日本の建築学科の教授が必ず興奮気味に教えるので、学生は卒業旅行とかで、
フランスのロンシャン教会かこのシュレーダー邸をほぼ見に行っているでしょう。
日本の建築家によるデザイナー住宅は、ほぼみんなこれを真似ようとしているんですよ。
また、リートフェルトのシュレーダー邸でなければ、
1970年代からずっとこのリートフェルトが発明した手法をどんどん突き詰めていた
ピーター・アイゼンマンという人がいます。
ユダヤ系のアメリカ人建築家です。
この人は、建築とか家とかの前に、立体物を構成するH縦W横奥D行きといった
三次元の要素をズラしたり重ねたり、考え過ぎのあまり視覚的なイイ感じを超えて、
ノイズや不安感を呼び覚ますくらいに不調和を現出させるという、
ポジティブパンクとかノイズ、ハードコアな手法に到達した人です。
建築の説明に哲学用語を使うのが得意なようなんですが、
本当に知的な人なのかどうなのかがちょっと見当がつかない
なにか、ぶっ飛んだクレージーさを持っている人です。
本来、建築家というのは基本物事を構築するのがその役割なのですが、
それを真っ向から否定するような「脱構築」とか開き直りの宣言したりして、
1980年代まで孤高の建築家でした。
実際、一時期精神に異常をきたしたとか言われていましたが、、、
今見ると、案外カッコイイレベルでデザインをコントロールしていたことが分かります。
まどかの家は、ピーター・アイゼンマンのHOUSEⅠとかHOUSEⅡとかでしょうか
このあたりが非常に近いですかねえ。
また、まどかの家もそうなんですが、
背景に出て来る街や建物もかなりの建築オタクを思わす仕掛けです。
これらも追々見ていきましょう。
「魔法少女まどか☆マギカ」で見た人がまず、びっくりするのが、
魔法少女たちの敵の姿です。
綿の写真にヒゲの貼り絵ですが、、、
デザインでエヴァンゲリオンの使徒を超えました。
エヴァの使徒はどんどん抽象的な姿になっていきましたが、
まだ物語の内部空間での実体をもっていましたよね。
「まどか☆マギカ」の凄いところは、
魔法少女の敵である「魔女」に、その実体がないことなんです。
言ってみれば各魔女が各自ひとつの閉鎖した世界を生み出して、
そこに魔法少女を取り込んでしまうといったような演出なんです。
その閉鎖世界を表現するのに、このアニメはとんでもない手法を取っているんです。
それは、アニメ内部にもう一つ別種のアニメが埋め込まれているんですよ。
もう、初めてみたときは本当にビックリしました。
こんなの見てたら正気を失うんじゃないかと思いましたよ。
狂っている、、、
見続けたらヤバイ、、と。
それは、いわゆる世界アニメーション芸術祭とかで出品されるような、
映像による現代美術の大家飯村隆彦先生の上映会とかで見た実験アニメそのまんまなんです。
ビートルズのサージェントペパーズLucy in the Sky with DiamondsのPVとか、
フランク・ザッパのPVみたいなものが毒を含んだまま
前衛的な芸術祭出品用のコラージュアニメーションが立ち現れるんですよね。
も少し一般的なところでは、(本当に一般的なのかな?)
コント55号の「なんでそうなるの」のオープニングアニメ覚えていませんか、
二郎さんや欽ちゃんのモノクロコピー巨大な顔が地平線から上ったり、
首チョンパになったりするクレージーな二次元ショートアニメ
まったくもってゼロックス複写を多用する70年代サイケデリックアニメーション、
非常に懐かしくて新しい手法です。
いや、、これ魔法少女シリーズだよねえ、、
イメージフォーラム上映会じゃないんだけど、、、
と、ちょっと引きます。
引くどころか、けっこう五月蠅い。生理的に嫌悪感を誘う処理。
だから、まどかの先輩のマミさんが登場して
華麗に魔法少女に変身し、
これらの二次元魔女アニメを装飾銃で撃ちまくってくれて、
魔女が消え失せて、
イメージフォーラムでの上映会が終わったときの爽快感が
たまらなく嬉しいわけです。
続く
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「魔法少女まどか☆マギカ」における建築的考察⑤