夢洲にかかる橋、夢舞大橋は橋脚が水に浮いている橋で、
実際は船なんだと、製作も三井造船であったの続きです。

図面もありましたよ。

諸元はこうです。

橋の長さ876.6メートル、路面からの高さ30メートル近くありますね。
総重量はというと、2万5271トンです。

東京タワーが4000トンといわれていますので、その6本分に相当します。

 

橋って重いんですねえ。

 

橋は自分の重さだけでなく、そこを通る車両の重量も支えなくてはいけません。
それだけでなく、横から受ける風とか、地震とか、そういう力にも耐えなければいけない。


人間でもそうですが、荷物を持ったりしていなくても自分の体重を支えなくてはいけない。
つまり、存在するだけで支えている重量を「固定荷重」といいます。
普段重さを感じなかったのに、太ってきたりすると、よっこいしょと、なにかの拍子に自重を感じるでしょう?
それは固定荷重が増えているからです。
次に荷物を載せるとき、建物では家具とか設備とか建築そのものではないが、置いておくものそれを「積載荷重」といいます。

 

では、橋はどうなんでしょうか?
橋は、自重以外では通り抜ける人や車両を支えます、が、その荷重は動いていますよね。


動く荷物はけっこうやっかいなんです。
活動する荷重?という意味なのか「活荷重(かつかじゅう)」といいます。


橋全体で考えると、上図のように全体の荷重で大きいけど左右でバランスしている場合と、
片側にズレている場合とでは、曲げる力とか振動とかが変わってくるからです。


重たいものが左右にある天秤棒でかつぐことができるのと似ています。


これ片手だとけっこう苦しいことになるのはわかりますよね。

なので、建築の検討よりも非常に難しい。
動的な動きを意識しないといけない。


 

で、どこにどういう力がかかるか、いろいろ条件を変えたりしないといけない。
 

 

車列の平均的な流れとか、

どこが弱いか強いか、振動で思わぬところに負担がかかってしまうこともある。

「活荷重」で検討、っていうのは建築の方ではあまりない、土木設計の醍醐味ともいえるでしょう。

 

その「活荷重」なんですが、通常の橋だと橋桁と橋脚に分けて考えることができると思うんです。

橋脚は固定されている、そこに橋桁が載っている、という状態だから。

しかし!夢舞大橋はそうではない。


ポンツーンっていうのが浮きです。
ビート板みたいなものです。

これが、解析実験の様子ですが、
浮いていますね。


 

つまり、夢舞大橋は橋脚が固定されていない。
浮いている、波で揺れる。
第2の活荷重ともいうべき、予測不能な力が橋にかかっているんです。

これ、どのように解決したのか!

当時はゴミを捨ててるだけの島でしたから、今日のように主役になっていなかったんですが、

まったく、これはプロジェクトXですよ。

 

風の中の昴

砂の中銀河
みんなどこへ行った
見送られることもなく

です。

 

つづく


 

万博のAタイプパビリオンの建設依頼を、
いくつかのゼネコンにしてみたんですが、
無理!って言われた件の続きです。


「橋が…、橋が、渡れないんだ…」
そう聞かされたとき、

なんで?

と思いました、だって立派な橋があるじゃん、と、知ってましたから。



夢舞大橋。

土木マニア、橋マニアの間では、垂涎の的、有名な橋です。

 

それは!ですね。

この橋は動くから!です。

ゴゴゴゴゴゴーっと、
タグボートが動かすからブルルルー、ポンポンポンかもしれませんが





この橋はですね、世界初の「旋回式浮体橋(せんかいしきふたいきょう)」といって、
今から20年以上まえに建設されたんですが、まあ凄い橋なんです。

 

なにが凄いかというと、実は、この橋は、橋に見えて橋じゃない。
橋脚は水に浮いているのです。
 



なので、なのか、三井造船がつくっています。


https://www.smcse.co.jp/construction/index02.html


このポンツーンってやつが、メガフロート、いわば舟です。
だから、橋じゃなくて、舟。

舟橋です。



いちばんわかりやすいのは、因幡の白兎ですね。



サメ(わに)が背中を浮上させて並ぶところを渡っていった兎のお話です。
このサメ1尾1尾が、ポンツーンです。

なので、夢舞大橋は動けます。

こんな風に、


 

動力をつければ、海上を自走します。

 

なぜそういうことになったか?といいますと、理由は三つほどあります。
まず、この立地です。
船の通り道になっているということです。
それで「可動橋」船が通るときに橋が邪魔にならないように動く、ことが必要になったんです。



そうした架道橋にもいくつかの種類がありまして…。



跳開橋(ちょうかいきょう)の代表が築地市場の脇にあった、勝鬨橋(かちどきばし)ですね。

 

昇開橋(しょうかいきょう、橋が昇ることで船を通す)で有名なものは佐賀県と福岡県大川市の近くにある筑後川昇開橋。

 

旋回橋(せんかいきょう)というのは、橋げたの上で回転できるようにしたものです。羽田旋回橋が有名です。

 

引込橋で有名なのが、青森のラブリッジですね。



といった、可動橋の中で、夢舞大橋は、さらに不思議な仕組みなんですよね。
 

 

つづく



 

この2週間、ブログ更新をしないで事態の推移を見守っていた大阪万博なのですが、
まったく進展していないようです。

 

 

上記の記事で、石毛会長に大阪府知事が噛みついています。

増額の報告を受けた大阪府の吉村洋文知事は「説明は不十分だ。
協会に改めて質問し、回答を踏まえて判断したい」と厳しい表情で語った。


記事の趣旨は、
「ぎりぎりまで増額の判断をしなかった協会の見通しの甘さに、各方面から批判が噴出している。」
ということのようですが、よくわかりません。

万博協会に対し、各方面が怒っているという内容なんです。

今になって増額というのはけしからん!もっと前に増額って言え!と、
これ、石毛さんかわいそう過ぎません?

 

 


NHKの記事でも同様に
「増額になった詳細を公表し、従来の予算に絞り込む努力をしたのかどうかについても説明が必要ではないか」と、
京都大学の中西教授のご意見でしめくくっています。

いやいや、これ、石毛会長の見通しが甘いんじゃなくて、
夢洲という軟弱地盤という特殊な土地利用に対する見通しが甘いんじゃないですかね?

だから、責められるべきは、万博協会でも石毛会長でもなく、責められるべきは夢洲という土地です。
つまり、夢洲に決めたヤツです。
すべての原因は。

というわけで、夢洲の問題をさらに追及しようとしてたんですが、
一週間ほど経過すると、事態がどんどん進展していってます。

しかも、斜め上の方にいってしまっている。

それは!

万博パビリオン、別に着工しなくてもええけど…。
来年のGWくらいに始めたら間に合うんちゃうの?

 


まさかの、工期の後ろ倒しです。


はあ?

いやいや、半年前に着工すべきだった!!!って清水建設の会長が言うてましたやん?

普通は前倒しでやるべきものですが、いやいや慌てる必要はない、
もうちょっと様子を見ましょう。
格さんや助さんや、です。
ちょっとどころかかなり古いたとえなので通じないかもしれませんが。



いやあ。こんな話は聞いたことがない。
清水建設会長がですよ、「もう間に合わない!!昨年の時点でも行ったのだが…」
と言ってたんですよ。



それを、万博協会が、「全然間に合う、それどころか半年後に着工すればいい。」
と言ってる。
 



これは、どう見るべきなの?と普通はなります。

が、事はイベントの話ではなく、建築の問題なのだから、建築の専門家の意見の方が正しいんじゃないですかね?

清水建設=建設業界の代表。医者でいえば東大病院の学長。

万博協会=建て主。医療でいえば患者。

医者が、「昨年のうちに治療開始すべきだった、すぐに手術しないと手遅れになる!」と言ってるのに、
患者が、「いえいえ、来年まで放っておいたら治癒します。」と言ってる状態。

これ、手術拒否して独自の治療法に走るカルトの話みたいですよね。
大丈夫なんかいな。

と心配です。

といいますのも、一部の私のファンの方々は知ってる話なんですが、

不肖、私めのところにまで、Aタイプの某国パビリオンの設計実務の相談が来ていたからなんです。
いわく、
建設が進まない、というかどこも建設を受けてくれない、どこに頼めばいいかわからない、
そもそも、建設金額がわからない、誰に相談すればいいのか、いつ建設開始できるのか、
建設申請や許認可のしかたがわからない、本国で準備を始めていいのかわからない、

もう全般的に、助けてほしい、といった相談です。

その流れをオープンにしながら実況しながら仕事しようかと思っていたんですよねえ。

 

ところが、いくつかの大手ゼネコンや中堅ゼネコン、在阪のゼネコン、中小の建設会社、みんな、「無理!」。

という回答を返されてしまいました。

なぜ?

と聞きましたら、いろいろあるんですが、


一番大きなのは「橋だ、橋が渡れないんだ…」と言うんです。


はあ?橋?

どこの?

どこの橋?

橋あるんじゃないの?

立派な橋が、


これですよね、夢洲と舞洲を結ぶ「夢舞大橋」。
まさに、夢芝居な感じの橋です。

これのどこに問題が?と調べはじめたんです。

夢舞大橋 | 株式会社エイト日本技術開発

すると大変なことがわかってきたんです。

ということで、つづきます。