この数年間、映画やドラマの多くが漫画原作を元にしているケースが増えています。

文学のジャンルが、「作家志望者による作家志望者のためのメディア」に堕してしまって、その内容も作家のレベルも非常に脆弱になってしまったことにもよると思いますが。

一方、本来なら文学作家や映画監督、芝居の戯曲者になるべき人材を呑み込んで、
シノギを削ることで作品の品質が小説を遥かに凌駕するようになった漫画メディア。

十数年前に比べて雑誌の数を増やし続けてきた漫画雑誌ですが、出版不況のあおりか、この数年は一方で廃刊や休刊、合併などもよく耳にするようになりました。

大きいところでは、一昨年のヤングサンデー休刊ですね、
毎週買っていたのにヤンサンは。
「ヤンサン」は雑誌のカラーが不鮮明(若者向けなのか、おっさん向けなのか、)ゆえに、かえって異色作、意欲作がガシガシ掲載されていたように思います。
ヤンサンの人気漫画「土竜の唄」や「鉄腕バーディー」、「おやすみプンプン」、「イキガミ」、「とめはねっ!」などは、無事ビッグコミックスピリッツに移籍されており、
結局スピリッツがヤンサンになってしまったような感じです。
私が好きであった「アオイホノオ」、「超無気力戦隊ジャパファイブ」、「魔Qケン」などは、今、どうなってしまっているのか。


各誌、数ヶ月ごとに新連載の漫画が始まるたびに、
もの凄い期待感で読んでみますが、一方で連載打ち切りとかの作品も多い。
なかには「こりゃダメだ、、」とか、「これを打ち切りかよ!」とか
いろんな感想を持ちますが。



今年度より始まった新連載で、これは凄いぜ!!見たことないぜ!
という一押し作品があります。

というか、予想外の角度から後頭部に鈍器が直撃!
古い言い方ですが、目から火花!鼻血ブー!ていう感じ。


それは!
「進撃の巨人」

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諌山創(いさやま はじめ)先生です。

別冊少年マガジン連載中にして
現在、単行本が2巻まで出ております。
が、のっけからこの作品はぶっ飛んでいますよ。

タイトルの「進撃」とか、
「巨人」とか、くればこれはもう、

なんか、巨大ロボみたいな感じのヒーローが登場?とか

滅亡した古代文明の遺跡が発見され、そこに残されな巨石像が活動を開始?

とか、思うでしょう?

私も最初そうかなあ、、って思ったんですね。



ところが、この「進撃」する「巨人」っていうのが、
まさかの形態!



こんなんなんです!





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えっ、普通のおっさんやん?

ギャグなん?この作品?って思ってしまうでしょう。

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しかも、裸だし、腹出てるし、サウナですか!?





ところがですね、この「進撃の巨人」凄いマジなんです。
マジどころか絶望的にシリアスなんですよ。

ちなみにこれらの巨人は主人公ではありません。
タイトルは「進撃の巨人」なのに、巨人は敵です。
むしろ、敵というかなんというか自然の猛威、人類に襲い掛かった災疫。
無根拠な脅威、エヴァの使徒みたいなもんですかねえ。

例えていえば、「ベルセルク」のガッツを超えるほどの、
絶望的状況に陥っているんです。
巨人以外の人たち、主人公のエレンやミカサはじめ一般人は!

この設定、というか今回の場合はこの画力っていうんでしょうか、
これが益々恐ろしさを産んでいるんですね。

なんか、巨人への書き込み不足というか、構図のゆがみというか、
稚拙感を残すゆえの残虐性といったもの。

しかも、この巨人たちって、50年代のアメリカンホームドラマから
抜け出てきたような、脳天気な笑顔満載。

だから、こそ、怖い。こいつら。

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っていうか、でかいけど普通の夫婦じゃん!

この巨人、今手前にいる人たちを食べようとしているんです。
おっさんの目は死んでいるし、左側のおばはんニッコリしていますよね。

こいつら知能はないんです。

1巻では諌山先生いっぱいいっぱい、作画上でもあんまりトーンも貼っていない、
書き込みや影線もあったりなかったり、だからこそ生じるシュールさや強さ、
ファンタジー性、既視感、虚無感、無力感、寂寥感といったもの。

都市の背景やなんやかんや、かなり手間がかかってしまう世界観。

しかも、この作品。
まだ、見切り発車で書き続けている感がある!

それゆえの立体軌道に移ったときの躍動感が凄い!
そこだけすっげえいきいきとしています。

静と動への切り替えと、書き込みアリナシ、
上手い下手の切り替えがいっしょになっているので、
読んでいるこっちも開放される感、
ほっとする感があります。

この作品、実は神話的なすっごいスケールの大きな話なんです。
難しいぞ!大丈夫か!と応援してるんです、ファンはみんな。

それゆえ、ストーリー崩壊の可能性とそれの修復維持と一気に走り抜ける感、
書くたびに生じているだろう諌山の緊張感がバシバシ伝わってくるんですね。

伸びシロがあるんです!無限大の!


と、巨人については書きたいことが山ほどあるのですが、

漫画を読んだことある人にはお分かりと思いますが、

私が注目しているのは、もちろん「壁」です。

つづきます。


「進撃の巨人」における建築的考察 2
「進撃の巨人」における建築的考察 3
「進撃の巨人」における建築的考察 4
「進撃の巨人」における建築的考察 5
「進撃の巨人」における建築的考察 6