「進撃の巨人」がいかにスケールの大きな話を構築しようとしているかなんですが、

漫画アニメも掲載誌数、作品数、作家数も増え、その経済的効果や文化としての有効性なども一般に語られるようになり、ファンやマニアも社会的認知が進んだ今、

どちらかというと、作品のテーマやストーリーも、狭いセグメントの絞込み、

短期的な作品の消費構造、ピンポイントでの評価を求めるあまりに、
わりと、こじんまり、よりオタク度を増して、ジャンルとしての小分け状態、蛸壺化。

作品テーマの陣取り合戦、食なら食、医療漫画なら医療など
当たった作品の何番目かのドジョウ作戦といった作品が
増えてきてもいます。

つまり、失敗しないように、、アラを潰しておこう、、とか、
あのアイテムも盛り込もう、、とか、、そんな保険的ビジネス判断、小人物的発想。
タイアップやメディアミックスをあらかじめ織り込まれたところからのストーリー設定。


しかし、諌山はそんなの度外視。まず書いちまえ!行ってしまえ!

そんな破天荒な無頼の作家性が、単行本のあとがきとかからも感じ取れます。

普通、写植使うんじゃね。

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という物語以外の解説コーナーで、この文字使いです。
なに、この文字「筆ペン?」「書きなぐり?」

なんか、こういうのって久しぶりなんですよ。

初期小林よしのりとか、福本伸行とか、三浦建太郎みたいな、
「描いちまう勢い」がイイ!
なんかもう、あっちこっちいろんな想いが散らばっている感じです。

諌山の一番の武器はこの「振れ幅の広さ」なんですよ。

このスケッチの書きなぐりに比して用意周到な表紙デザインがあります。

現在から遠い未来、物語中では100年前くらいの遠い過去。

まず、神話的時代があったようでしてあるとき未知の巨人が現れ、
人類を捕食し始めたそうなんです。

北欧神話や英雄伝説の「アイスランドサガ」や「スノリのエッダ」を思わせるような、

神秘性と正統な伝承性、
私がSFマガジンを毎月買っていたころに好きだった、初期の荒巻義雄の名作「時の葦舟」を思い出させる
ユグドラシル(世界樹)神話的な世界観なんですよね。

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世界樹 ユグドラシル
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北欧神話というのは、キリスト教に侵略される前のゲルマン民族の神々の文化が、
アイスランド、ノルウェイ、デンマークにおいてその伝承が残されたことによります。
北部でも地中海でもそうですが、ヨーロッパの元の文明は、
現在のように硬直したユダヤ・キリスト教的な一神教による二元論ではなく、
多神教でもあり、自然や宇宙との連続性をもった精霊的存在や、
神と人も善悪定かでない複雑な多様性があったのです。

「進撃の巨人」の単行本を持っている人は、ぜひカバーを外して表紙を見てください。
世界史好きでSF好きならシビレますよ。

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このデザイン奮っていますよね、、なんかルーン文字みたいのがあるし、
ここでもこの巨人の絵の稚拙さや海と山の省略がかえってリアル。
羊皮紙に書かれた死海文書がごとくでしょう。

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第二話での隊長からの解説シーンですが、
ここでの巨人も北欧神話のヨトンヘイム
(霜の巨人的)な神々しさがあって、
まあ神にだったら人類食われてもしょうがないんじゃないか。
と思わしてくれるんですが、、




一方、実際に街に入ってくる巨人って、、


こんな女の子走りの裸の中年おやじだから始末におえないんですよね。

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こんなやつらに食われたくないもんなあ、、、

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身近なおっさんの裸体で恐怖感倍増ですよ。

で、「壁」とは何かについてなんですが、
読んでない人にはなるべくネタばれにならないように解説すると、

上記のような「巨人」がふらふらと人類の居住領域に入ってこないように
壁が作られているんです。

あるときこの「巨人現象」というのが人類に災疫として襲いかかり、
次々と喰われていき、残された人類の最後の防衛戦線としてこの壁がある。

街ごと壁の中に閉じ込められている状態ということなんですね。

その壁の中の街っていうのは、50メートルを越える大型巨人が襲いかかろうと
しているときに垣間見るとこんな様子です。

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この壁に囲まれたエリアに、巨人の侵入を許してしまって、
どんどん減っていっているのがエレンたちが置かれている現状なんです。

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物語は、この、ウォールマリアの攻防から始まります。

ウォールマリアって大体どれくらいの規模なのかなと、
検証してみているんです。

つづく

「進撃の巨人」における建築的考察 1

「進撃の巨人」における建築的考察 3
「進撃の巨人」における建築的考察 4
「進撃の巨人」における建築的考察 5
「進撃の巨人」における建築的考察 6