フォウ「フォウ?」

リリィ「あれ? フォウくんどうし……」



た た っ



フォウフォーウ!

シロー「あっ、ちょっ、フォウ! どこ行くんだよ!?

リリィ「た、大変! 追いかけなきゃ!

スティールベイン「え、ええ!



・・・・・・・・・・・・・







フォウ「フォ~ウ!」





シロー「広っ、広いっすね、ここ思ったより……!」

スティールベイン「遺跡か、何らかの建造物があったそうで、そのため敷地が……」





リリィ「ん、迷子になっちゃってもかわいそうだし……うん!



ぐ っ



リリィ「ちょっと、がんばっちゃおっかな……!」


た ん っ !

たん たん たんっ!



ざ っ !



フォウファー!

リリィつ~かま~えた! えへへ、悪い子だね」

フォウ「フォーウ」





スティールベイン「足が……速いの、ですね……」

シロー「相変わらず俊足だな……てか、ベインさんだいじょぶっすか?」

スティールベイン「ええ、鎧が……重い、だけですので……」



【 いちご坂歴史博物館内 自然庭園 】




フォウ「フォウフォ~ウ!」

リリィ「博物館の裏にこんなに自然があったんだ!」

スティールベイン「ええ。地形や動植物……自然環境も歴史の一部であると、お爺様は仰っていました」

シロー「……ホント、すごい人だったんすね」





リリィ「えへへ、フォウくんもはしゃいでる! 一緒に遊ぼ!

フォウフォウフォウ!

リリィあははは!





スティールベイン「はい……祖父は、本当に凄い人でした」

シロー「…………」

スティールベイン「それに引き換え、私は……いつも、守られてばかりで……間違った選択ばかりで……





スティールベイン「自分でも戦えるよう、剣を教わったこともありますが……結局、私には剣の才能などなく……」

シロー「…………」

スティールベイン「……時間を、無駄にしてしまいました……お恥ずかしい限りに……」





シロー「迷ってる、んすか?」

スティールベイン、……!

シロー「いや、なんてーか……シンパシー、って感じっすかね」





シロー「オレも剣の才能とか全然なかったんすよ」

スティールベイン「、え……?」

シロー「ははは、これでも『屋敷』の同期ん中じゃ最ドベで、戦闘適正だってどれも大したことがなかったんす」





シロー「……でもオレは、憧れた人がすごい剣士だったから……あの人みたいに……

 あの人みたいなすごい剣士になりたいって、思ったんす」





シロー「だからずっと、あの人を追いかけて……今もずっと、追いかけているんす。

 まぁ、馬鹿だから立ち止まったり迷ったり、誰かを傷つけたりもしたけど……」

スティールベイン「…………」





シロー「でもその憧れがあったから、オレは自分を受け入れられて……オレは、こうして進んでいられる……そう思ってるっす」

スティールベイン「…………」

シロー「ベインさんが、何に迷ってるかはわかんないっすけど……」





シロー「自分が信じて、憧れて……正しいと思える道だったら、そこに才能とかはなにも関係ない。無駄な努力だったとしても、目指すものがあるなら進んだ道筋に違いはない。

 ……オレは、そう思います」

スティールベイン「…………!」





シロー「ははは、カッコつけすぎっすかね?」

スティールベイン「……いえ、そんなことはないです。あなたが言う憧れ……私もぜひ一度、お目にかかりたいものです」

シロー「ははは、本当にかっこよくて、綺麗な人っす。オレこそベインさんのお祖父さんに会ってみたいもんすよ」

スティールベイン「ふふ、きっと驚きますよ」





スティールベイン「豪胆で破天荒で……かっこいい。

 数多の英雄や、偉人達を知るよりも先に……」





スティールベイン「私が最初に、憧れた人です」





リンさん「ふむ、これは……なかなか」

シロー「、あれ? 確か……」

リンさん「ん……ん?」





シロー「リンさん、っすよね?」

リンさん「キミは、モリビト……いや、ヒーローの。こんなところで奇遇だな」

リリィ「知り合いなの?」

シロー「ああまぁ、ちょっとあってさ」





リンさん「ああ、館長殿。これはまた」

スティールベイン「まだ、いらしたのですか?」





リンさん「ええ。ここの展示品はとても興味深くて……

 流石、貴方のお爺様が集めた品々ですね。時間を忘れてしまっていた」

スティールベイン「それは、なによりです……」





シロー「え、知り合いなんすか?」

スティールベイン「ええ、まぁ……」

リンさん「ちょっと、な」

シロー(なんか今日、こういうの多いなぁ)





リンさん「すぐにお答えいただけなくとも問題ありません。使う使わないも貴方にお任せしますし、こちらも相応の責任は負わせてもらう覚悟です」

スティールベイン「…………」

リンさん「不要であっても……失礼、追い込むような言い回しを……」





リンさん「私はもうしばらく館内を眺めさせてもらいます。ここの展示品はとても興味深くて」

スティールベイン「……わかりました。ごゆっくりご覧ください」





フォウ「フォ、フォウ……!」

リリィ「フォウさんどうしたの? 落ち着いて」

シロー(やっぱなんか本能的にわかるのかな……フォウがビビってる……)

リンさん「……ん?」





 久々にガンプラいじったらおじさん疲れちゃった

想像したものを組み立てつつ形を整え再構築して完成度30%程度

 欲しい部品を持っているガンプラが再販かかんないのと頭部をどうするかいまだ考え中なのが課題

年内に仕上がるといいなぁ




リリィ「はぁぁ……」





リリィ「うん、すごいね……」

スティールベイン「退屈ではありませんか?」

リリィ「うぅん、そんなことないよ……ぼく、こういうの好きみたい」

スティールベイン「ふふ、ありがとうございます。それは何よりです」





リリィあっ! ねぇねぇ、あれはなに?」

スティールベイン「はい、あれは……」

シロー「……あっ」





スティールベイン『パンドラパネル』、ですね。英雄『ネロ・クラウディウス』が所持していた品と言われています」

シロー「、……」

スティールベイン『聖遺物』ではありませんが、価値のある品ですよ」

シロー「あ、いや……なんかすんません」

リリィ「?」





スティールベイン「使用用途などは文献に残されていませんでしたが、僅かな手記や書物によれば、『ネロ・クラウディウス』はこれをとても大事にしていたそうです。

 そのため、何らかの儀式や秘祭に用いられたと推察されています」

シロー「秘祭、儀式……すか」





スティールベイン「なので『禁忌の石碑』と名付けられたそうです」

リリィ「はぁぁ……!」





リリィ「すごいね……うん、すごいよ……!」

フォウ「フォウ!」

シロー「ん、フォウ?」





スティールベイン「ようこそ。いちご坂歴史博物館にお越しいただきありがとうございます、シローさん」

シロー「はい、また遊びに来ました」

スティールベイン「ふふ、いつでも歓迎いたしますよ」





リリィ「あれ、シロー知り合いなの?」

シロー「ああ、前にちょっとあってさ」

リリィ「えへへ、館長さんと知り合いなんてすごいね!」





スティールベイン「それではご案内させていただきますね」

シロー「てかいいんすか? 忙しかったりは……」

スティールベイン「ご心配はいりません」





スティールベイン「何より、そう約束しましたので」

シロー「、ははは、そうっした!

リリィ「えへへ、ぼくとおんなじだね」

スティールベイン「と、なりますと……?」





リリィぼくもシローと約束してたんだ。いっしょに博物館いこって!

シロー「おいちょっ、リリィ!

スティールベイン「ふふ、ありがとうございます。交友関係が広いのですね」

シロー「あらたまってそう言われると、なんか照れるっすね……」





フォウ「フォウ」

スティールベイン「、」

シロー「あ゛っ! え、えぇと、なんてーか……」





リリィ「あ、もしかしなくても……動物の入場禁止?」

シロー「あの、フォウホント大人しいんで、できれば……いや、なんなら警備室とかで預かっといてもらっても……」

フォウファッ!?





スティールベイン「いえ、あの時はフォウさんにも守っていただきましたので……もちろん、ご一緒に歓迎しますよ」

シロー「……すんません、ありがとうございますっす」

リリィ「えへへ、館長さんやさしい!





リリィ「よかったねフォウくん!」

フォウフォウ!





フォウフォウ! フォウフォウ!」

シロー「んっ、あ、フォウ! すまん、忘れてた……」

フォウファッ!?





リリィ「この子は? シローのペット?」

フォウ「フォウフォウ」

シロー「フォウっていって、ペットってーかなんてーか……」





フォウフォウッ、フォウ!

リリィ「えへへ、よしよしかわいいね。撫でてもいい?」

フォウフォウ~!

シロー「あ、気をつけろ。初対面の相手にはよく噛むから……」



フォウフォーウ!

フォウフォウッ!

リリィわっ! えへへよしよし、かわいいね」

シロー「お、一発で懐いた……リリィすげぇな」





リリィ「えへへ、そうかな?」

フォウ「フォウ!」





リリィ「ねぇシロー、今日ってこれから空いてる?」

シロー「ん? あぁまぁ、空いてるっちゃ空いてるけど」





リリィ「へ~そうなんだ~。へぇ~~、そうなんだ~」

シロー「ど、どした?」





リリィ「……えへへ、んっとね」





リリィ「ぼくとの約束、守ってほしいな~、なんて♪」

シロー「約束って……あっ、そういやそうだったな」






リリィも~ひどいよぉ、忘れてたの?」

シロー「いやすまん! 忘れてたわけじゃ……」

リリィ「あはは、冗談じょうだん。でも、」





リリィ「これからつき合ってくれたら、ぼく嬉しいな~、なんて♪」

シロー「ん~、そうだな」





シロー「じゃあ今から行くか」

リリィ「え……いいの? ホントに?」

シロー「ああ、せっかくだしさ」





リリィ「えへへ、やった!





 (考え事……集中、してる?

 でもそのせいで……)



ず っ ・ ・ ・



 (隙だらけだよ……!







 「わっ!

シロー「ぅおわっ!?





リリィあははは! シローひっかかったひっかかった~!」

シロー「あ~びっくりした……てかリリィ、どした?」

リリィ「うぅん、シロー見かけたからなんとなく!」





シロー「なんとなくで脅かすなよ……デカい声出しちった」

リリィ「えへへ、ごめんごめん」





リリィ「なんだか考え事してたみたいだけど、なにかあったの?」

シロー「ああ、なんてーか……ん、ちょっとな」

リリィ「えへへ、やっぱり剣のこと?」

シロー「あ~まぁ、そんな感じかな」





リリィ「ぼくも剣術習ってるんだ。ぼくでよければお相手したげよっか?」

シロー「そういえば……だいぶ前な気するけど、リリィすごい動きしてたよな」

リリィ「えへへ、こう見えてぼくけっこう自信あるんだよ? それじゃさっそく……」





リリィ「あ、あ~……でもこんな街中で剣振り回しちゃ危ないよね」

シロー「まぁそりゃそうだろ。捕まんぞ」

リリィ「あはは、なんだか忘れちゃってた!」

シロー「忘れたって、おいおい」





シロー「……ぶふっ、はははは!

リリィ「えへへ、あははは!





フォウ「フォ~ウ」

シロー「おーいフォウ、あんま離れんなよ~」





シロー(……そういや、ザック先輩に聞いといたけど……)





ザック「ん? 異能力者じゃなくてギフト案件か……ま、ないわけじゃねぇけど、そうそうあるってわけじゃないな。片手で数えられるほどもなかったはずだぜ。

 ま、こっちにゃハーネス軍の駐屯基地もあっから、暴れにくいだけかもしれねぇけどな」





 (確かに社会情勢が不安定になってから、犯罪発生率は増加してるって聞いてる……その中でも、異能力者犯罪の件数も増加している……いや、)





 (首都を除けば、ニコルドシティが特別多いといえる、らしい……ギフトの存在があるとしても、その流通そのものがニコルドシティに集中していると予測してたけど……

 だから、第零オレ達はその流通拠点、根幹があると仮定しここに来た……)






 ……そもそもがあるから、失念していた……なら、なんでニコルドシティここなんだ?

大規模工場があるからでもない、モリビト機関の本拠地とも『屋敷』からも遠い立地だから、って理由でもない……

だけど、それが目的……根幹の、はず……!?





シロー「……ここに、何があるんだ……?」




す ぅ ・ ・ ・



 「…………」