薬師寺 吉祥天像奉納

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(ちょっと長文です…)
薬師寺さん所蔵の国宝 吉祥天画像の切り絵を奉納させて頂ける
ことになっておりました。
昨年、お話を頂いてから何度もトライしていましたが、納得の行
くものがなかなか出来ず、ついに年を越してしまいました。
でも、先日なんとか無事奉納させて頂くことができました。
今、本当にホッとしているところです。
立体の仏像をハイライトだけのモノトーンでデザインするのは慣
れています。でも今回のモチーフは麻布に描かれた「絵」であり、
ハイライト部分はありません。
画像から立体の吉祥天を想像し、そこから光の射す方向を決めて、
ハイライトになるはずと思える部分を描いて行きます。
途中、飛鳥園の小川先生に、描画法のご指導をいただき、またお
声をかけて頂いた薬師寺の執事長様から、ご意見・ご指摘をいた
だきながら、やっとデザインの完成に漕ぎ着けることができました。
次に色の問題です。基本、私は特注の漆黒の和紙を使います。
でも、今回の吉祥天の優しいお姿やふくよかなお顔は、黒と白で
はきつすぎます。
薬師寺さんから頂いた資料や図書館などで調べた資料から、
「吉祥天は、色は赤白、身長は1尺3寸5分に表す」との文言を
見つけました。
ただ、「赤」にもいろいろあります。さらに赤は退色の激しい色
です。
薬師寺さんから「奉納品は百年、2百年先まで残ります」の一言
が重くのしかかります。
結局、京都の和紙問屋を何軒も梯子して、退色に強い楮100%
の和紙を教えてもらって調達して、切り込みました。
最後は裏打ちです。化学糊を一切使用しない、古来からの方法で
裏打ちしてもらえる屏風屋さんに依頼しました。
お声をかけて頂いてから、裏打ちが仕上がってくるまでに、半年が
経過していました。
この間、デザインは40点以上、和紙の色は20種以上試しました。
今、手元に残っている作品は「試作」品です。でも、これを作って
いた時点では、最終品のつもりであったものです。
とても捨てる気にはなれず、今日綺麗にファイルに納めました。
クリアファイル1冊が一杯になりました。
ご指導頂いた小川先生、薬師寺の執事長様、しつこい質問ぜめに付
き合って頂いた和紙問屋さん、そして古来のやり方で裏打ちをして
いただいた屏風屋さんまで、多くの方を巻き込んでの完成です。
永く、多くの方にご覧頂けたら、幸せです。
仏像切り絵を始めて11年、これだけ長期にわたって取り組んだ作
品は初めてです。学ぶことも多くありました。
そして佳い思い出になります。
写真は、薬師寺さん所蔵の国宝 吉祥天画像です。
 
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(薬師寺さん発行の「吉祥天女のすべて」より)
奉納した作品の画像は、薬師寺さんで公開されるまでネットへのアッ
プは控えます。