安易な言葉は、

時として思わぬ事態を引き起すものです。

東日本大震災のボランティアに

参加したIさんは、

被災地で木材や

瓦礫の撤去を行ないました。

被災地の人たちのために

何かをしたいという一心で、

Iさんは汗をかきながら、

一所懸命に瓦礫を運んでいました。

作業中、

川辺に散乱する木片を指さしたIさんは、

仲間に向かって

「あのゴミも」と声をかけたのです。

それを聞いていた現場のリーダーは、

休憩時にIさんに

「たとえ木のゴミでも、

思い出があるものとして扱ってほしい」

と伝えました。

その言葉にIさんは、

非常に情けなくなりました。

咄嗟の言葉ではあったものの、

無意識のうちに、

被災者を傷つけてしまったことを

恥じたのでした。

職場でも同様です。

些細な一言が、

相手には心許ない

言葉となる場合があります。

職場内で相手を呼びつける

「おい」や、

投げやりな言葉の

「やっておけよ」など、

相手だけでなく、

聞いている周囲の人をも

不快な気持ちにさせるのです。

K氏が上司と共に、

地方のお得意様の所へ

挨拶に行った時のことです。

突然、

上司から

「K君、苦手だった朝起きは克服したかね」

と尋ねられました。

K氏は即座に

「このところ、

目覚まし時計も使わずに起きています。

ほぼ朝起きのコツはわかりました」

と返事をしました。

すると上司は

「ふーん」

と言って言葉をのみ込んだのです。

翌朝、

お客様との大事な打ち合わせに、

K氏は寝坊して、

大幅に遅刻をしました。

身体を小さくして、

ひたすら弁解するK氏に、

上司は

「きのう朝起きのコツは

つかんだと君が言った時、

正直危ないなと思ったよ」

と言ったのです。

そして、

「わかったとか、

コツは摑んだというのは慢心であり、

思い上がりだよ」

と厳しく諭した後、

「今後は必ず

『お陰様』

という言葉を頭につけるように」

と告げたのです。

「皆様のお陰で」

という言葉を必ず口にするようにした現在、

K氏はミスが減るようになったことを実感しています。
入社十五年になるTさんは、

様々な部署を経験してきた中堅社員です。

最近は、

後輩たちの言動が悩みの種でした。

言葉遣いや、

目上の人への対応など、

後輩の無謀な振舞いがやたらと

気になるのです。

自分の若い頃と違うため、

喧しく叱りつけることもしばしばでした。

Tさんは、

その悩みを信頼するかつての

部署の先輩に相談しました。

先輩は一通り話を聞いた後、

Tさんの駆け出しの頃を懐かしそうに話し、

「後輩に腹が立つのは、

かつての自分を忘れているからだよ」

とアドバイスしたのです。

二人で昔話に花を咲かせるうちに、

自身の若い頃の失敗や、

温かく見守ってくれた先輩たちを思い出したTさん。

その後、後輩へのイライラも消え、

ゆったりした気分で彼等に

指示することができるようになったのでした。

後輩の育成は先輩への恩返しです。

先輩から受けた恩を忘れると、

一方的に世代間の違いを問題にして、

後輩を責めてしまいます。

仕事に厳しさは必要ですが、

後輩たちの成長を待つ心の

余裕も持ち合わせていきたいものです。

 どの職場でも、

報告・連絡・相談の必要性は、

十分に認識されているようです。

ところが、

その伝え方となると、

要領を得ていない人が少なくありません。

要点を押さえた伝達手段として、

よく使われるのが「六何の原則」です。

「WHEN」

「WHERE」

「WHO」

「WHAT」

「WHY」

「HOW」の5W1Hと言われるものです。

これをイギリスの小説家で詩人のキップリングは、

「六人の忠実な召使」

と名づけて、

自らの詩作に活用したと言われます。

まず、

自分が伝えたいことは、

報告・連絡・相談のいずれかを、

明確に相手に示します。

そして「何時」

「何処で」

「何人が」

「何を」

「何故に」

「如何にして」という。

5W1Hに即して話せば、

相手にスムーズに伝わります。

反対に、

これらが明確でない話は、

相手に伝わりにくく、

誤解を招いてしまう場合もあります。

業務上のやりとりを円滑に進めるために、

「六何の原則」を念頭に置いて、

会話をしていきましょう。
ファミリーレストランなどの

飲食店に入ると、

一人の店員が「いらっしゃいませ。

○名様ご来店です」と、

元気な声で案内をしてくれます。

それに続いて、

他の店員が次々に「いらっしゃいませ」と、

元気よく迎えます。

業種によって迎える

挨拶に違いはありますが、

一斉に歓迎の意を示して出迎えてくれると、

気持ちがよく、

その企業への好感度がアップします。

中国の兵法書『孫子』に

「善く戦う者は、

之を勢に求めて、

人に責めず」のくだりがあります。

「名将と呼ばれる人は、

勝利を戦いの流れに求めて、

人材に求めようとはしない」

という意味です。

個人の技能を高めることは

もちろん必要ですが、

まず集団の力を引き出すことが先決なのです。

ビジネスは、

お客様の満足感が上がることで

自社の繁栄へと導かれます。

元気な出迎え言葉はお客様に

好感を与えるばかりではなく、

自らの仕事に

「勢い」をつける要因になると心しましょう。