目の前のことに一所懸命になりすぎると、

全体が見えなくなりがちです。

Yさんは仕事の処理は早いのですが、

雑でやり直すことがよくあります。

ある時会議用資料のコピーを上司に頼まれた際、

違う資料をコピーしてしまいました。

会議終了後、

上司から

「外に出て頭を冷やして来い」

と言われたYさん。

公園のベンチに腰掛け、

顔を上げると、

緑の木々が目に入りました。

四月には桜の花で満開だった公園が、

濃淡豊かな緑色で溢れていたのです。

Yさんはこれまでの仕事ぶりを振り返りました。

目の前の仕事をこなすことだけを考え、

全体を見ずに、

その仕事の意味さえ理解していませんでした。

これからは一つひとつていねいにやろうと

自身の取り組み方を反省したのです。

心に余裕がない時に、

植物や青空など自然に目を向けることで、

自らを冷静に見つめ直すことができます。

また、仕事の合間に深呼吸をしたり、

一日の最後に振り返る時間を持つことでも、

同様の効果を得ることができるでしょう。

多忙な時こそ冷静さを取り戻し、

より的確に仕事を行ないたいものです。
K氏の自宅に心当たりのない商品が届き、

一通の手紙が同封されていました。

「先日、

M様のご依頼で送らせていただきました商品ですが、

いただいた金額とお送りした

商品を確認しましたところ、

商品の数が不足していたことが

判明いたしました。

心よりお詫び申し上げますとともに、

不足分の商品を送らせていただきます。

誠に申し訳ありませんでした」

とていねいに手書きで記されていました。

K氏は、

友人M氏の名前で送られてきた

品物を思い出すとともに、

商品を発送してきた会社の誠実さに心を打たれました。

ミスは誰にでも起こりえますが、

その際の事後処理、

対応の仕方次第で信用が高まるか、

不信感が募るかと状況は大きく変わってしまいます。

米国の自動車会社フォード・モーターの

創業者ヘンリー・フォードは、

「奉仕を主とする事業は栄え、

利得を主とする事業は衰う」

という格言を遺しています。

「お客様第一主義」

といわれますが、

ミスをしてしまった時こそ真価が問われます。

「すぐに対応」、

「誠実な対応」で

自社の信頼を深めていきましょう。

詩人・宮澤章二の詩に、

「『こころ』はだれにも見えないけれど

『こころづかい』は見えるのだ。

『思い』は見えないけれど

『思いやり』はだれにでも見える」

とあります。人の心や思いは、

相手にはわかりにくいものです。

例えば、

「真心のサービスを提供する」

と謳っても、

行動が伴わなければ

「絵に描いた餅」と同じです。

真心やサービスは、

形に表わさなければ伝わりません。

ある美容室では、

真心や思いをお客様に見える形で示そうと、

スタッフが店の広告入りの

ティッシュ配りをしています。

駅前で、にこやかな言動で配るものの、

簡単には手にしてくれなく、

まさにスタッフの好感度が勝負となります。

店としては、

そのティッシュを持参したお客様に、

割引サービスを行ないます。

ティッシュの広告の隅にはスタッフの名前があり、

配ったスタッフに五百円が還元されます。

お客様もスタッフも、

そしてお店にもお得感があるのです。

これは、

近江商人の

「三方よし」という経営理念にある

「売り手よし、

買い手よし、

世間よし」に通じます。

誰にでも形に見えるサービスを心がけたいものです。
Nさんが勤める会社では、

五年前から月に一度、

清掃ボランティアをしています。

社員が定時より一時間早く出勤して、

会社の周囲を掃除します。

清掃活動をするようになったきっかけは、

あるセミナーの受講でした。

講師より、

「清掃をすると、

工場で生産する商品の品質が向上し、

不良品が少なくなる」と

教えてもらったからでした。

毎回、

清掃ボランティアに参加しているNさんは、

社内の同僚と協力をして、

現場の清掃も手がけるようになりました。

不良品を撲滅するのは、

簡単なことではありませんでした。

ところが、現場がきれいになるにつれて、

作業ミスや不良品が少なくなってきたのです。

「清掃をすると、

心の濁りや汚れが落ちていくような気がしました。

自分の心も磨かれて、

前向きに仕事に取り組めるようになりました」と

Nさんは言います。

清掃は周囲をきれいにするだけでなく、

人の心の塵をも払ってくれます。

清掃を怠らず、

きれいにする習慣を身につけて、

ミスの少ない仕事をしたいものです。
携帯電話やパソコンなどの発達により、

様々な情報が機器を

通していち早く伝わるようになりました。

その半面、

人と相対する機会も少なくなったといえます。

アサヒグループホールディングス

相談役の福地茂雄氏は、

「最近、お客様の声はネットを

通じた声になることも多い。

それでは、

声の微妙な表現を再現できず、

言葉の陰に隠れた大事なことを

見逃すことにもなりかねない」と語ります。

福地氏が数年前に、

N社のコールセンターを見学した際、

「お客様の顔が見えますか」

という標語が掲げられていました。

お客様の顔を思い浮かべて話を

聴きましょうという意図で考えられたもので、

大変重みがあったと氏は言います。

企業は、

お客様の視線に立ったサービスを目指して、

様々な声を集めています。

中でもお客冷めた声には、

サービス向上のヒントが溢れているものです。

冷めた声を冷めたままで受け取るのも、

生の声に変えるのも受け手次第です。

たとえ電話やパソコン越しでも、

その先にお客様の顔をイメージすることは大切です。

その声はさらなる仕事の改善に繋がるのです。