感染症対策・9 の続きです。
( 感染症対策・1 から読む。)
感染症対策、ここまでは屋内のお話でした。
さて、屋外ではなにができるのでしょう?
外なので、換気はそもそも必要ありません。
では加湿はどうでしょうか?
外で加湿なんてできないだろって思いますか?
実はそんなことないんですよ。
というのは、、
■ 「加湿加湿」 って、いったいどこを加湿すればいいの?
先に答えを言ってしまいますが、
それは、人体で常に潤いを保っていなければならない
鼻腔や口腔、瞼の裏などの粘膜と、皮膚です。
お部屋を加湿するのは、
空気が乾燥していると、飛沫中の水分が蒸発して比重が軽くなり、
ウイルスが浮遊しやすくなったり、遠くまで飛びやすくなったりするから
という理由もありますが、人体を加湿(というか保湿)するためでもあります。
つまり極端な話、
部屋の中がどんなに乾燥していたとしても、
粘膜と皮膚さえ潤っていれば OK ということです。
■ 人体のバリアって、常在菌と もうひとつは 「潤いバリア」 のこと
感染症対策・2 で、皮膚常在菌のバリア機能について触れましたが、
人体を守るバリア機能は、皮膚だけでなく粘膜にも存在します。
下のイラストを見るとよくわかりますが、
これは、鼻腔や口腔、咽頭・喉頭(のど)、気道や消化管、尿道などが、
体の中にあるように見えて、実は体の最外側にあるからです。
「(最)外側」 という言い方が正しくないとしても、
皮膚と同じように外界と接する部分であることは間違いありません。
(胃や食道の中が 「体の外」 である、という話は解剖学の常識?です。)

だから、瞼の裏や鼻腔・口腔から肛門までの表面に粘膜を設けて、
皮膚が皮脂膜で潤いを保つように、粘膜は粘液で潤いを保つことによって、
ウイルスなどが体内に侵入しないよう 守る仕組みになっているのです。
皮脂膜は皮膚の常在菌によって作られてるし、
粘膜の表面にも常在菌は存在します。
(口腔については 感染症対策・3 にも)
つまり、人体のバリアとは、
常在菌と、この 「潤いバリア」 のことなんです。
冬はただでさえ湿度が低く、皮膚や粘膜は乾燥します。
そこへ洗いすぎや強い洗浄剤・うがい薬の使用などが加われば、
皮膚は肌荒れを起こし、粘膜にも傷がつきます。
皮膚の表面には角質層があって、皮脂膜と共に侵入を防いでいますが、
粘膜は薄い上に角質層もないため、傷つきやすく、
傷ついた箇所から体内へのウイルス侵入を許すことになります。

※粘膜には角質層はありませんが、表面の pH を調整したり、
粘液に流れを作ることでウイルスなどを体内に取り込まない
仕組みが備わっています。
(下のイラストは鼻腔や気道の線毛運動の様子。)

ということで、話が少し横道にそれましたが、、
結局のところ
「潤いバリア」 の湿度を保つこと
これが、移動によって加湿環境を作れない外での加湿
(=人体の保湿)のポイントです。
具体的には、、
■ マスクで加湿
マスクを付ける目的ってなんでしょうか?
一番は、飛沫が飛び散らないようにすることですね。
それはだれでも知っていると思います。
次に、飛沫の付着を防ぐこと という答えもありそうです。
ですがこちらについては、マスクの付け方(密閉性)によるところが大きいため、
はっきり言ってあまり期待できません。
でも、
マスクで鼻腔や口腔の乾燥を防げる って知ってますか?
マスクを正しく付けることによって、
鼻腔や口腔の湿度を一定以上に保つことができるのです。
特に現代人は、柔らかい食べ物を好んで食べることから咀嚼回数が減り、
口周りの筋肉が衰えて常に口が半開きの人も多いですよね。
そんな人は特に口(口腔)が乾燥します。
マスク不足の現状ですが、
口や鼻の乾燥を防いで湿度を保つことを考えるなら、
なにも市販のマスクでなくてもいいわけです。
マスクを手作りする方法も、ネットで探せば
ホームページや動画がいくらでもありますから、
市販のマスクは医療従事者や感染者、高齢者に譲って、
手作りマスクで急場をしのぐのが最善の方法かもしれません。
ここまで長々と説明してきて、
最後は 「マスクをしましょう」 なんてありきたりのオチですみません、、

※常在菌とは、人体に存在する微生物(細菌)のうち、
多くの人に共通してみられて、通常は病原性を示さないもののこと。
「全ての人が持っている菌」 ではなく、「健康な身体にも存在する菌」。