う~ん、暑さは噂通り
これから、鉄ヲタになって初乗車の「太多線」で岐阜に向かいます!!
19時20分。
高崎行き列車に乗り、暗闇の中を走る事約30分。
着いたのは…
「中之条(なかのじょう)駅」
吾妻線の中で、渋川の次に乗車人員が多い駅である。
しかしこの時間は、人の気配が殆ど無い。
スタンプを手に入れたは良いが、次の高崎行き列車が来るまで1時間以上ある。
駅前を歩きまわっても、開いている店も無くひっそりとしている。
このような調子で、上越線の
「渋川(しぶかわ)駅」
「沼田(ぬまた)駅」
のスタンプを手に入れる。
夜の待合室で一人、次の列車を待つ。
誰もいないのに、照明は眩しいくらいに私を照らしてくる。
シャッターの閉まった売店。節電営業している自動販売機。
人通りの無いコンコースに、時々響く「ピィィィィン… ポォォォォン…」という音。
それが鳴り終わると、余計に静寂が襲ってくる。
さすがに、気持ちも折れそうになってくる。
「俺は今、こんなところで何をしているのだろう」と。
でも助けてくれる人がいるわけでもない。
こういう時は、一人旅は辛いものだ。
沼田で1時間ほど待たされ、下り列車に乗り込んだ時は23時を過ぎていた。
真っ暗闇の中を列車は走り抜け、沼田から3駅目。列車はゆっくり停車した。
23時21分。終点「水上(みなかみ)駅」に到着。
初めての旅
でもここで下車したが、その時は昼下がりで、観光客も大勢いた。
雰囲気が全く違うのは当たり前だが、それにしてもこの山中の静寂さは、異様な雰囲気だ。
朝5時台から深夜23時台まで列車に乗り続け、さすがに疲労もピークに来ていた。
駅の写真を撮る気持ちも起きない。
ここで降りた人は予想よりも多かった。
その人たちは、タクシーや出迎えの車を利用して、それぞれ散って行った。
この時間はもう、折り返しの上り列車は無い。
なので今夜はここに留まる。
ステーションビバーク(STB)。
生まれて初めての駅寝を、ここ水上で敢行する。
駅舎の中にある広い待合室は既に閉鎖されている。
水上駅の駅舎は、ガラス張りの出入り口とコンコースの間に中部屋のようなスペースがあり、そこに丸太を縦に裁断して作られたようなベンチが設置されている。
私は持参したシュラフを見に包んで、その木製のベンチに横になる。
これで、冒険の1日目が終了した。
本当に今日はいろいろあった。
明日は、どんな日になるのだろう。
明日も、多分雨は大丈夫だろう…
高崎から30分程掛けて到着。
「横川(よこかわ)駅」
本当は、のんびりと訪れたかった。
時間があれば、駅のすぐそばにある鉄道テーマパーク「碓氷峠鉄道文化むら」や、少し足を延ばして碓氷第三橋梁(通称「めがね橋」)等を訪れたいところである。
しかし、今回はあくまでスタンプが目的だ。
横川に到着した列車は、僅か5分で高崎に引き返してしまう。
駅舎を鑑賞する暇すらなく、スタンプを手に入れて、すぐに折り返しの列車に乗らなければならない。
急ぐ私の視界に入ってきたのは、ホームの売店。そこで売られていたのは…
横川名物『峠の釜めし』
私が以前車でよく出掛けてた頃、上信越道横川SAでも全く同じものが売られていて、よく食べていたものだ。
この釜めしの美味しさはお墨付きだ。
駅弁の人気ランキングでは、常に上位にランクインする程の人気商品である。
この釜めしの製造元「おぎのや」は、横川駅のすぐそばに位置する。
僅かな時間で、私は思わず釜めしを購入した。
1つ900円(当時)と、決して安くはないが、昼を抜いた分金が浮いてたので、損した気分にはならなかった。
釜めしを抱えたまま、高崎駅にトンボ返り。
今日何回目の高崎駅だろうか?
思い出している暇も無く、また僅かな時間で乗り換える。
「万座・鹿沢口」行き115系列車に乗り込み、吾妻線の駅のスタンプを目指す。
ちなみに「万座・鹿沢口(まんざ・かざわぐち)駅」は、全国のJRで唯一、名前の中に「・(点)」が付く駅らしい。
高崎を発った列車は、渋川まで上越線の路線を走り、渋川から単線の吾妻線に入る。
渋川を発った頃にはすでに日も暮れていた。
さらにこの吾妻線、ほぼ山の中を走る路線である為、夜の車窓は暗く不気味に感じる。
祖母島駅から先は、国道353号線との並走区間に入る為、時々、車の白いヘッドランプと、赤いテールランプが流れるのが見える。
しかし、車大国の群馬県内の国道と言う割には、交通量もかなり少ない。
渋川から1時間で、長野原草津口駅に到着。
この駅は特急「草津」が停車する長野原町の中心駅で、草津温泉の最寄り駅となっている。
日中は温泉客で賑わうであろうこの駅も、この時間はひっそりとしている。
広大なバスターミナルにも、バスは殆どいない状態であった。
スタンプを手に入れ、次の電車までは1時間弱の待ち時間がある。
この辺で、峠の釜めしを食しておくことにしよう。
改札前のベンチに座り、益子焼の重量のある器を抱えて、早速頂く。
美味い!これは美味過ぎる!!
今まで何回も食べてるはずのこの釜めし、この時食べたのが、今までで一番美味しく感じた。
プラスチックの別容器に入れられているおしんこが、これまた絶妙なアクセントを加える。
同じベンチには、スウェット姿の若い女性が座ってずっと携帯をいじっていた。
きっと彼女は、釜めしを貪りついている私を横目で見て、変なオジサンと思ったことだろう…
ああなんとでも思ってくれ!俺はろくに昼飯も食えず、ここまで命懸けでやってきたんだ!
至福の時は、あっと言う間に釜めしを完食したことにより、終了した。
現実に戻り、ここから4時間以上の忍耐の時間が始まる…
上り高崎行きデキ列車に乗り込み、胸をなで下ろしたのもつかの間、良からぬ雰囲気の車内放送が流れ込んできた。
「本日のデキ臨時列車ですが、終着高崎駅の特設ホームが安全管理上ご利用頂けなくなりました。
つきましては大変ご不便をおかけいたしますが、お客様には一つ手前の南高崎駅でいったん下車して頂くことになります。
高崎駅までは10分後にくる定期列車をご利用頂きたくお願い申し上げます」
この放送の後、車掌が乗客全員に、お詫びの粗品を配っていた。
それは、デキのペーパークラフト付き記念乗車券であった。
後々、プレミアでも付くだろうか?
でもここはひとつ機転をきかせる事にする。
どうせ途中下車するなら、1つ気になっていた駅に降りてみることにした。
実は最初のデキ列車で下仁田に行く途中、さりげなくこの駅をチェックしていたのだ。
南高崎駅の一つ手前にて下車する。
「根小屋(ねごや)駅」
予想通りだ。
単式ホーム1面1線と、小さな木造駅舎を併せ持つ駅。
その小さな駅舎は、のどかな駅前の雰囲気と非常にマッチしている。
突然の訪問だったが、根小屋駅は私を手厚く労ってくれた。
…今日はいろいろ災難だったがね。まあゆっくりしていきな…
確かに今日1日だけで、ここまでいろいろあった。
しかし、トラブルが無ければこの駅に訪れることは無かっただろう。
旅においてトラブルはつきもの。そのトラブルを、いかに楽しみに繋げられるかどうかで、旅全体の楽しみも変わってくるだろう。
何よりも、絶対に大きな思い出として残る筈だ。
計画通りに、最初から最後まで何のトラブルもなく行程をこなす旅も楽しいであろう。
しかしそれでは、後からその旅を思い出した時に、非常に薄い印象の旅だったと捉えてしまうのではないだろうか?
人生においても同じだ。
成功した人の人生の話を聞かされるのと、失敗した人の人生の話を聞くのは、どちらが面白いか?
絶対に、失敗人生話のほうが面白いに決まってる。
人間には、他人の不幸話を好んで聞く性質があるようだ。
私は今まで散々トラブルに巻き込まれてきたが、私が年老いたときに、自分のトラブルを笑い話として皆に伝えたい。それが私の夢である。
その為には、あと何十年も生きねばならない。
いつまでも根小屋に居たかったが、僅か10分で次の高崎行きが来てしまった。
次に根小屋に訪れた時には、ゆっくりさせて頂こう。
そう遠くない将来、また必ず来る。
結局、予定より1時間近く遅れて高崎駅に戻ってきた。
次は、信越本線に乗って横川駅のスタンプを取りに行く。
上信電鉄では、これから今回のトラブルについての説明があったらしいが、そんなのに出席している暇は無い。
乗り換えの時間は僅か5分程しかないのだ。
駆け足で上信電鉄の改札を抜け、「シンフォニック・アヴェニュー」を抜け、JRの改札を抜ける。
JRのホームに駆け下り、何とか横川行きの列車に間に合った。
11時53分、下仁田駅から下り列車が発車した。
この普通列車高崎行きは、デキ列車とは違い、結構なスピードに乗って進み、車窓の眺めも勢いよく流れてゆく。
下仁田から、高崎方面に8駅進んだところで下車する。
「上州富岡(じょうしゅうとみおか)駅」
島式ホームと単線ホーム、2面3線を有する駅である。
こういった複合型ホームの形態は、JRにはよく見られるが、ローカル私鉄では珍しい。
跨線橋は無く、駅舎と島式ホームとは構内踏切で繋がっている。
この駅は上信電鉄の主要駅となり、駅員が常駐している。
利用客の数は、高崎駅に次いで多いとの事。
富岡製糸場の最寄駅(駅から徒歩約10分)である。
駅舎は鉄筋の作りながら、歴史を感じるその造りはなかなか風情がある。
開業当時からの駅舎となると、風情の受け方も倍増する。
駅舎内の待合室も広い。下仁田駅より広い印象を受ける。
駅舎を出てみると、隣にはトイレが併設されている。
そのトイレをよく見てみると、上信電鉄のシンボル、デキの姿がかたどられている。
天井にはパンタグラフまで取り付けられている(パンタグラフは本物らしい)というこだわりよう。
しかし中身は、何の変哲もない普通のトイレであった。
駅スタンプも手に入れ、再び高崎行き上り列車に乗り、次の駅へ向かう。
上州富岡駅から、高崎方面に5駅進んだところで下車。
「吉井(よしい)駅」
島式ホーム1面2線を有するが、かつてはそれプラス単式ホームを有し、上州富岡と同じ複合型ホームの形式をとっていたらしい。
駅舎は木造のようで大きくは無いが、駅員が常駐している。
ここで駅スタンプを頂こうとすると、先客の若い男性が、一生懸命に駅スタンプを、いくつもスタンプ帳に取っていた。
まあ次の電車まで時間がある。
待合室のベンチに腰かけて、スタンプ台が空くまで待たせてもらうことにしよう。
10分…
彼がスタンプを使いすぎたおかげで、スタンプの調子が悪くなったらしい。
駅員が苦笑いしながら新しいスタンプを出してきた。
さらに10分…
おいおい、若いの、そろそろいいかげんにスタンプを譲ってくれないか?
その言葉通りに、若者に声を掛けようとすると、丁度彼の儀式が終了したらしく、やっとスタンプを手に入れることができた。
彼は筋金入りの「スタンプ鉄」のようだ。
お次は、下仁田行きの下り列車に乗って、3駅隣に移動する。
「上州福島(じょうしゅうふくしま)駅」
こちらも島式ホーム1面2線を有する駅。
駅舎は小さくとも、大変風情のある木造だ。こちらでも駅員が常駐している。
駅スタンプを手に入れ、これにて上信電鉄のスタンプは全て揃った。
後は高崎駅に戻り、次の路線のスタンプを取りに行く予定だ。
しかし実はこの3駅を回っている時、丁度昼飯時であった。
私は下仁田を出る時に、
これから訪問する駅、或いはその周りに、売店の一つくらいはあるだろう
そこでパンかお握りでも買って、簡単に昼食を済ませれば良い
そう考えていた。
それは甘い考えであった。
無い…
無い……
無い………
駅の売店はおろか、駅の周りにも、めぼしい売店なんてありゃしない…
都会では絶対に有り得ないことだ。
最寄駅の本庄も田舎のほうだが、売店もコンビニもあるぞ…
もっと遠くに足を延ばせば店はあるかもしれないが、次の電車には確実に乗り遅れてしまうだろう。
とうとう昼飯は諦める羽目になった。
田舎は嫌いではないが、この時に限っては、上信電鉄が田舎を走っていることに逆恨みした。
こんなことだとわかっていたら、下仁田駅前の売店で弁当でも買っておくべきだった…
途方に暮れて、駅の待合室のベンチでうなだれてた私に、さらに追い撃ちをかける出来事が起きてしまった。
高崎行きの列車が駅に到着し、そのまま発車していった…
それを私は、何故か待合室のベンチから見送っていた…
あろうことか私は、乗るべき列車を目の前にして、乗り損ねてしまったのだ!!!
こんな事ってあるか!?
事前に計画していたタイムテーブルに、誤りがあったのか!?
昼食が取れなかったことが、そんなにショックだったか!?
理由はどうあれ、これはあまりにも大きすぎる誤算である!!
少し冷静になって、まずは次の高崎行きの列車を、駅の時刻表から探してみる。
およそ50分後
ちょっと待て!!
そんなに待ってたら、今日のこれからのプランが全部滅茶苦茶だ!
さあどうする!?
有り金全てはたいてでも、タクシーを利用するしかないのか…?
しかしここから高崎駅まで、今の所持金でタクシーの運賃が払えるのか…?
空腹の絶頂にあって、よく頭が回らないようだ…
途方に暮れていた私の目の前で、ある客が窓口氏に質問していた。
「デキ列車の高崎行きはいつ頃来ますか?」
「あと10分くらいで来ます」
まさか…
時刻表に乗らない列車。
臨時デキ列車が帰ってくる!!!
私はそれを聞いて、すぐさまホームに駆け登る。
ホームで待っていると…
窓口氏の言った通り、下仁田方面から上りのデキ列車が戻ってきたのだ!!
こ、これは神の救いなのか…?
まさかデキ列車に、こんな形でまたお世話になろうとは…
真っ黒いデキの車体の後ろからは、間違いなく後光が射していた(ように思えた)。
写真を撮るのも忘れ、デキ列車に飛び乗った。
後閑駅から、上越線にて高崎駅まで戻ってきた。
ここでJRの改札を抜け、「シンフォニック・アヴェニュー」と呼ばれる中央コンコースを西口に向かう。
出口の両脇には、高崎市の名産でもある「ダルマ」の石像が待ち構えている。
その手前、進行方向左手のファーストフード店の脇に下り階段があり、その階段を下る。
100メートル程先には有人改札があり、さらに先には「0番線」の標識が見える。
0番線とは、何だか特別扱いを受けているような印象で面白い。
高崎駅0番線は、今回の旅で初乗車となる路線「上信電鉄」のホームとなる。
上信電鉄上信線は、ここ高崎駅と下仁田駅を結ぶ、全長33.7Kmのローカル私鉄路線。
100年以上の歴史を持つこの上信電鉄の正式社名は、「上信電鉄株式会社」。
社名の由来は、高崎から関東山地を超え、長野の佐久地方(現小海線の羽黒下駅)まで路線を延長する計画が発足し、そのタイミングで上州の「上」、信州の「信」を合わせた名前となった。
しかし、その計画は現在まで実現されず、社名の「信」が宙に浮いたまま今日に至っている。
沿線の途中にある富岡町には、日本史の教科書にも頻繁に取り上げられ、国の重要文化財にも指定されている「富岡製糸場」がある。
明治初期に操業を開始した富岡製糸場だが、そこの製品を運搬するために路線を引かれた事を考えると、上信線の歴史が古いのも頷ける。
上信線で集めるスタンプの数は、駅スタンプが4つと、イベント列車内で貰えるスタンプ1つ。
0番線ホームまで来て、お目当ての列車を待つ事にする。
ホームからJRの停留線を見ると、はるか向こうにC61 20がELに牽引される姿が見えた。
ホームには既に、派手に青くラッピングされた車両が発車を待っていた。
その車両をよく見ると、「銀河鉄道999」のキャラクターが描かれている。
この999号は、イベント列車としても使用されているが、今回の目当てはこの列車ではない。
(このラッピング車両は、2012年9月9日をもって運行を終了している)
999号が出発してから程なくして、次の列車がホームに入線してきた。
列車の下仁田寄りには、青い群馬DCのヘッドマークをつけ、真っ黒な凸型をした電気機関車「デキ」の姿があった。
この列車が、お目当てのイベント列車だ。
デキの姿かたちは、先日銚子電鉄で見た「デキ3」
とよく似ているが、こちらのデキのほうが、一回りも二回りも大きく、色も黒いことからこちらのほうが頼もしく見える。
上信電鉄のデキは、ドイツのシーメンスシュケルト社により、大正13年8月20日に製造されたという、歴史のある電気機関車である。
デキは平成6年までは貨物列車として運行されていたが、その年からイベント列車として運営変更。
平成19年に一時運行休止。検査・修繕が繰り返され、平成23年に復活したばかりである。
ホームは撮り鉄で溢れている。
そして車両の中は、既に乗り鉄たちがシートの8割がたを埋めていた。
私も、デキの撮影をほどほどにして車内に入り、ロングシートに腰かけて、発車を待つ。
車内では、車掌が乗客全員に、デキ列車記念乗車証を配布していた。
忘れないうちに、車両内に設置されたスタンプ台でスタンプをゲットする。
9時55分。
定刻通り、デキ列車は下仁田に向けて発車した。
列車は非常にゆったりとしたスピードで、上州の田園の中を走り続ける。
山名駅を過ぎたあたりから、利根川の支流の鏑川にくっついたり、離れたりを繰り返す。
そして馬庭駅を過ぎてからは、国道254号と並んで仲良く西を目指す。
途中の沿線には、予想通りたくさんの撮り鉄がいた。
中には、稲穂の生い茂った田んぼからいきなり姿を現してくる人もいた。
いったい、どこの国のゲリラだ?と、相当天然の入っている私でも思わず突っ込みたくなるような光景だ。
しかし、やはり私はああいう風に写真を撮っているよりかは、乗っていたほうが数倍楽しい。
乗車中の私の目から撮り鉄たちを見ると、理由もない優越感に浸ってしまえる。
それにしても、上信線の駅は木造駅舎が多く、思わず見とれてしまう。
いつかは、上信線の全駅降り潰しの旅を行ってみたい、という願望が芽生えた。
高崎から列車に揺られて1時間半が経とうとしていた。
下仁田の一つ手前の千平駅を過ぎると、列車は一気に山を駆け登り始める。
車窓も今までの長閑な風景から一変、林の中を突き進む。その林の向こう側は断崖になっているようである。
この走りにこの風景、なかなか爽快である。
上信線沿線で唯一のトンネルを抜けると、ようやく景色が開け、列車はスピードダウン。
終点の下仁田駅に到着した。
列車から下車すると、デキの運転席の扉が開いていたので、少し覗かせてもらった。
車内は余計な計器などは無く、非常に簡素なイメージだ。
駅は頭端式ホームで、乗降用の線路が2本、留置用の側線が数本あるが、その全てに車止めが並んで設置され、寸断されている。
まぎれもなくここは終着駅である。
私は、この線路の行き止まりを眺めるのが、何故か好きだ。
改札を抜け駅舎の外まで出てみると、連なる山脈をバックに、鄙びた木造の駅舎はやけに映えていた。
この駅は、関東の駅百選に選定されている。
上りの列車に乗り、残りのスタンプを手に入れに行こう。