今日はデキ1とデキ3の重連!!
テンション上がります!!
上州新屋駅
を出発すると、一面広がる田園の真ん中に、ただ真っ直ぐ線路が伸びる、というお決まりの車窓が飛び込んでくる。
国道254号線の大きな陸橋の下をくぐると、すぐに次の駅に到着する。
「上州福島(じょうしゅうふくしま)駅」
思い出す…
群馬スタンプラリーの旅 の時、甘い考えのおかげで昼食を取れずこの駅でうなだれていたら、乗るべき列車に乗り損ねるといった二重の大失態を犯してしまった日を…
今回こそは、そんな失態の無いようにしなければ…
(この駅の詳細、そしてその失態の詳細については、その時の記事を参照されたい)
前回はそんな事があった為、駅舎の中や駅周辺を観察する余裕などなかった。
なので次の列車が来るまで、じっくり観察させて頂く。
駅舎を出てすぐ右側に井戸があった。しかし現在は使われていないらしい。
駅前はいくつかの商店が並んでいるが、飯が食えるような店は無い。
これは改めて強調しておく。
さて、じっくり観察と言っても、この駅は木造駅舎以外に特筆すべき事柄もなさそうだ。
ここも上信線の主要駅の筈なのに、人もまばらでのどかな雰囲気だけが常に流れている。
待合室のベンチに腰掛け、ふと天井を見上げてみると…
誰かのサインが額縁に入れられ展示されている…
よく見てみると…
何と、究極の鉄ヲタで私のライバル、横見浩彦のサインではないか!?
そう、この上州福島駅は、全国の全駅乗下車を行っていた横見が、最後の最後に降り立った駅なのである。
その模様は、漫画「鉄子の旅」単行本第4巻に記載されている。
ひょっとして前回の旅のトラブルは、横見、貴様の呪いか!?
それにしても、俺も人の事は言えないが…
横見よ…
同じ鉄ヲタとして言わせてもらう…
誰もできないような偉業を達成したんだから…
そんな時くらい…
もうちょっと綺麗な字を書け!!!
しかし横見が最後にこの路線を選んだ理由も、風情のある駅がたくさんあるから、ということだったらしい。
究極の鉄ヲタもそこまで惚れ込む程、この上信電鉄には大きな魅力があるということだ。
さて、横見のことはあまり気にしないようにして、次の駅に向かうことにする。
西吉井駅 を出発した列車は、住宅街の中を分け入るように進み、住宅街が途絶えた途端に、おなじみの田園風景が広がる。
車窓からの田園風景と言えば、先のひたちなか海浜鉄道湊線の旅 で見た、金上~那珂湊間の田園を思い出す。
湊線で見た田園は、どこまでも果てしなく田んぼが続いているが、それほど長くその風景が続かなかったのが印象的だった。
一方こちらの上信線は、どこまで走っても田園風景が飛び込んでくる。
つまり湊線沿線の田んぼは線路と垂直に広がり、上信線沿線の田んぼは線路に沿って広がっているという事がわかる。
その田園風景の途中で、線路が突然二手に分かれる場所があった。
ここは上信線に3つある信号所の一つで「新屋(にいや)信号所」と呼ばれている。
しかしこの信号所は、普段使われることは少ないらしい。
私が乗った列車も、信号所を利用するそぶりも見せずにスルーしてしまった。
前面にかぶりついていたので信号所があることが分かったが、普通にシートに着席していたら、そこが信号所であることすら気づかないであろう。
その信号所を通過するとすぐ、駅に停車した。
この駅で10駅目。ようやく半分だ。
「上州新屋(じょうしゅうにいや)駅」
ここで、前回の上信線の旅に引き続き、予想だにしていなかったハプニングに巻き込まれてしまった。
ホームに降りた途端、私と一緒に下車した女性が、発車しようとしてる列車を制止し、列車に向けておもむろにコンパクトデジカメを構え、運転手にポーズを取らせて写真を撮ろうとしていた。
この変なおば…
いや、この女性は何をやっているのだ?
こんな行為、都内の路線でやったら怒られるどころじゃ済まないぞ…
しかし、冷静に見ていると少し面白い光景だ。
私は、待合室に少し隠れるようにして、携帯でその様子を隠し撮りしてみた…
運転手にも女性にも、完全にバレてしまっていた…
無事に列車は解放され、私がカメラ撮影の準備をしてたら、女性がこちらに近づいてきた。
「あなた、学生さん?」
「え?私??とんでもない!結構いい歳です。大学は10年以上も前に卒業してます(中身は学生のまま成長していないかもしれませんが…)」
「今日は観光かなにかでこっちにいらしたの?」
「はい!今、上信線のすべての駅に下車しているところです!」
「あらま~偉いわね~!!写真とってあげましょうか?」
「い、いや、ごめんなさい、それは結構です…(私ほど、被写体に向かない人間はいないので)」
「あらそう?私、こういう者なんだけど…」
と言われて、名刺を渡された…
何とこの女性、この辺の町の町議会議院であるらしい!
変なおば…などと言ってしまって、大変失礼仕った。
名刺の裏には彼女のプロフィールが書いてあって、よく見るとその中に…
「上信電鉄に銀河鉄道999列車を走らせよう実行委員会委員」
驚くことにこの女性、上信電鉄のご意見番だったようだ。
西山名駅 で見かけた999号は、彼女の意見によって走っていたものであった。
ようやくここで、駅の紹介である。
単式ホーム1面1線と小さな駅舎、そしてホーム上に小さな待合室を有する無人駅。
こちらも、先の西吉井駅と同じく、窓口の跡が残されていることから、元は有人駅であった事が伺える。
小さな木造の駅舎は深い茶色の塗装が印象的である。
先ほどの先生の印象があまりにも大きくて、駅自体の印象が薄れがちである…
良くも悪くも、折り返し地点にさしかかった。残すはあと10駅。
馬庭駅
を発車した列車は直後に、路線と並行して流れる鏑川(かぶらがわ)を鉄橋にて渡る。
川を渡り終わると、雑木林を抜け、田園を抜け、次の駅に停車する。
群馬スタンプラリーの旅 でも下車しているこの駅は、上信線の主要駅の一つだ。
旧吉井町の中心駅でもある。
イントネーションは、普通であれば「よしい」の「し」と「い」を強調するところだが、車内放送では「し」のみを強調して、「い」は力を抜いて発音していた。
ホームに降りると、駅員が改札で乗客を出迎えてくれる。
近年ではあまり見かけない風景になってきている。
前回の旅では、ここで必死に駅スタンプをとっている若者の姿があったのを思い出す。
彼は今でも、駅スタンプを集めるための旅をしているのだろうか?
既にこの駅の探索は前回行っているので、今回はほどほどにして、しばしの休憩の後次の駅に向かう。
吉井駅を出発した列車は、またもや果てしなく広がる田園の真ん中を、真っ直ぐひた走る。
天候も、ようやく青空が広がってきた。
架線を支える支柱以外、視界を邪魔するものは無く、青と緑のコントラストが、上州の大地を奏でるようだ。
田園の風景が途絶え、代わりに住宅街が車窓に映し出されてきた頃に、次の駅に到着する。
「西吉井(にしよしい)駅」
単式ホーム1面1線と、小さな駅舎を有する駅。
吉井駅の分家にあたるこの駅は、吉井駅より70年も後(昭和46年)に開業されている。
ホームにはコンクリート製の板が敷き詰められている。
終日無人駅だが、駅舎を見ると、つい近年までは有人駅であったのであろう。
改札や窓口の跡が綺麗に残されている。
駅の周りは閑静な住宅街という印象だ。
駅前にバス停があった。
時刻表を見てみると、1日2便しか無いらしい。
随分派手なラッピングの車両に乗って、次の駅に向かう。
西山名
を出ると、列車は再び一面に広がる田園の真っ只中を、ただ真っ直ぐ進んでゆく。
警報機も遮断機も無い第4種踏切が途中に点在し、そこを通過する随分手前で警笛が鳴らされる。
そして列車は次の駅に停車する。
「馬庭駅」
地元の人でなければ読み方が難しいかもしれない。
「まにわ」と呼ばせている。
島式ホーム1面2線と、木造駅舎を有する駅。
上下列車の交換がこの駅でも可能である。
ホームと駅舎は構内踏切で結ばれている。
先ほど訪れた「山名駅 」とよく似た印象を受ける駅だ。
そしてこの駅も、日曜日は無人駅になるようだ。
ここは群馬県立吉井高校の最寄駅となっており、私が訪れた当時、女子学生の姿をちらほらと見ることができた。
なんでも、その高校は学生から、駅名にちなんで「まに高」と呼ばれているらしい。
駅周辺には民家と畑が点在する。
木造駅舎の良い雰囲気も手伝って、例外なくのどかなひと時が流れる。
これで上信線の全駅の3分の1を下車したことになるが、内心は既に満足できる内容である。
しかしこれからが上信線の真骨頂だ。
山名駅 を出発すると、列車は緩やかに右にカーブする。
カーブが終わると、一面に広がる田園風景が車窓に映し出される。
そして線路は、その広大な田園の中を分け入り、ただ真っ直ぐ伸びている。
しかしこの上信線は面白い。
何が面白いのかというと、こんなにただ真っ直ぐ伸びる線路を進んでいるだけで、なぜか車両が上下左右よく揺れる。
上信電鉄の全ての車両が2両編成なのだが、1両目と2両目との連結部近くが一番よく揺れているようだ。
住宅が点在するのが見え始めたタイミングで、列車は隣の駅に停車した。
「西山名(にしやまな)駅」
単式ホーム1面1線、そして少し風変わりな駅名標を持つこの駅。
終日無人駅である。
駅自体は戦前から存在するらしいが、2003年に駅のすぐ隣に「高崎産業技術専門校」が開校したのに伴い、駅施設を一新したという事である。
駅前には大量の自転車が止められており、多くの学生に使用されている駅というのが一目瞭然だ。
名前から、山名駅の分家にあたる駅という印象を受けるであろうが、1986年までは「入野」という駅名であったらしく、山名駅との師弟関係は非常に薄そうだ。
この駅は前述した専門学校の生徒が、改装の際に駅施設のデザインを担ったという事で、独創的な雰囲気になっている。
ホームの手前には憩いの場ともいえる休憩所が設置されている。
それに加えてホームの手前には、「ハイテク空気入れ 明治維新」と書かれた自転車のタイヤ空気入れ(と思われる)が設置されている。
どれぐらいの性能を持った空気入れなのか、一度試してみたい。
ホームで佇んでいると、イベント列車である999号が駅を通過しようとしていた。
私がカメラを構えると、列車は私の為なのであろうか、警笛を鳴らし、若干スピードを落として駅を通過していく。
運転手のサービスに少し感謝しながらシャッターを切った。
999号が通過したホームからは、上州ののどかな景色が見渡せた。
上機嫌で、次の駅に向かうことにした。
高崎商科大学前駅
を発つと、車窓は再び鬱蒼とした雑木林の中を進む。
列車はしばらく緑のトンネルの中を進み、曇りがちの天候の影響もあり車内は薄暗くなる。
景色が開けたと思ったら、あっけなく次の駅に到着した。
「山名(やまな)駅」
この駅の呼び方には特徴がありそうだ。
普通なら「やまな」の「や」にアクセントを置きそうだが、車内放送では「ま」にアクセントを置いていた。
島式ホーム1面2線と木造駅舎を有する、列車交換可能な駅。
ホームと駅舎は構内踏切で結ばれている。
この駅は根小屋と同じく、平日と隔週土曜には委託の駅員がいるという事だ。
日曜日は終日無人となる。
自動券売機は設置されていないようだ。
駅のすぐそばには観光名所として取り上げられている山名八幡宮が存在する。
それにしてもこの駅も、年季が入っていてなかなか味わいのある木造駅舎だ。
待合室の壁に貼ってある、ある貼り紙をふと見てみた。
どうやら、根小屋から山名駅の近くの小学校まで電車通学している小学生がいるらしい。
この日は日曜日なので子供の姿は見かけず非常に静かであったが、平日の朝はこの駅も子供たちの声で賑やかになるのであろう。
子供たちが学校に向かう姿を、駅員が見守る。
非常にほほえましい風景が目に浮かんでくる。
そして、貼り紙に何かの歌の歌詞のようなものが書かれている。
メロディーが非常に気になるところである。
子供たちは、毎日この歌を歌って通学していたりするのだろうか?
駅周辺には住宅が点在し、その他には畑が点在している。
そして…
この付近に牛舎でもあるのだろうか?
動物園に居るような感覚になる臭いが時々漂ってくる…
高崎駅を含めてこれで5つの駅に下車した。
ようやく4分の1を消化したところである。
根小屋 ののどかな雰囲気を後にした列車は、左に広がる平地より、一段高くなっている所を走る。
左を見ると丁度目線と同じ高さのところに、平屋の建物の屋根がくる感じだ。
そして右側には雑木林が広がる。
と思ってしばらく走っていると、今度は左側にも雑木林が現れてくる。
列車は、鬱蒼とした風景の中を走ることになる。
景色が開けたと思ったら、あっという間に次の駅に停車した。
「高崎商科大学前(たかさきしょうかだいがくまえ)駅」
単式ホーム1面1線、そして長い名前を有するこの駅は、21世紀に入ってから新設されたとの事。
非常に歴史の長い上信電鉄の中では、最も新しい駅となる。
無人駅で駅舎は無く、ホームにはベンチと雨避けの上屋がある。
そして新しい駅らしく、列車の接近などを知らせるLED掲示板が設置されている。
近くにある高崎商科短期大学が4年生の大学になり、学生数が増加したタイミングでこの駅が設置されたそうだ。
駅開業以来、乗車人数は年々増え続けているという。
ただし駅を訪れたのは日曜日の早朝という事もあって、駅周辺に学生の姿はおろか、人の気配も全く感じられない。
非常にひっそりとした雰囲気である。
ホームは高台のような位置にあるため、ここからの眺めは良い。
民家の庭にある柿の木が、たくさんの柿をぶら下げている。
今は、柿の美味しい季節でもある。
肝心の大学の姿だが、ホーム、あるいは駅前からはどうやら臨むことができない。
駅より少し距離のあるところ(徒歩4,5分)に大学が存在するらしい。
大学よりも気になったのは、駅前に非常に特徴のある家屋が佇んでいた事。
ただの民家なのだろうか?それとも何か商売でもやっている所なのだろうか?
立ち寄りがたい雰囲気が満載で、もちろん私はすぐこの家屋から離れた。
そうこうしているうちに、次の電車がやって来た。
今度の電車は、群馬サファリパークのラッピング車で、シマウマをモチーフにしたようなデザインだ。
南高崎駅 を出発した列車は程なくして、国道17号を陸橋にて跨ぎ、高崎駅東口から南北に伸びる幹線道路にある「城南大橋」と呼ばれる橋の下をくぐる。
そのあたりから既に、雑木林に囲まれた車窓が目の前に広がってくる。
そしてすぐに上越・長野新幹線の高架に差し掛かるが、そこで線路が2本に分かれ始める。
その2本の線路は、うまい具合に高架の一本の橋桁を抱え込むように伸びている。
ここは「佐野信号所」と呼ばれる、上下線の列車の行き違いを行わせる施設だ。
上信線のダイヤグラムは、大半の列車がこの信号所で交換を行うように作られているようだ。
列車は、橋桁からニョキっと姿を現す対向列車の存在を確認するように、最徐行で進む。
新幹線の高架下をくぐり、佐野信号所を過ぎた列車は、右に大きくカーブし始める。
せっかくくぐった新幹線の高架を、再びくぐり直すことになる。
その後は、烏川に架かる鉄橋を渡る。
構造は桁橋で、トラス橋のような枠が無いため、烏川の流れをよく見渡すことができる。
橋を渡り切るとすぐに大きく左にカーブし始める。
そこからは早くも田園が広がる車窓が臨める。
カーブを抜け、再び雑木林の車窓を抜けると、次の駅に停車した。
「根小屋(ねごや)駅」
第4旅で、トラブルに巻き込まれた為急遽下車した駅 であったが、駅の雰囲気、そして駅周辺の雰囲気に私は一目惚れしていた。
再びこの駅を訪れることができて心が弾む。
小さくて鄙びた木造駅舎は、何ともいい味を出している。
前回訪れたときは昼下がり。
今回は早朝だが、駅の雰囲気は何ら変わらない。
平日と隔週土曜には委託の駅員がいるようだが、訪れた日は日曜日。終日無人となる。
駅前に出てみると、駅の雰囲気と同じ、閑静でのどかな雰囲気を味わうことができる。
高崎からわずか2駅足をのばすだけで、非常にのどかな心持ちを抱くことができる場所だ。
クリーム色の駅舎が印象的な根小屋駅だったが、翌2012年に、外壁が青、屋根が赤に塗装し直されたようだ。
個人的にはこの少々古びた感じの駅舎のまま残してほしかったのだが…
しかしここで余韻に浸っている暇はない。
あと17の駅を巡らなくてはいけないのだ。