従来、自分の名誉もしくは利益に対して、神に祈願するとかもしくは自分の上の人に或《あ》ることを依頼するとかいうことは、一般に当然のこととしてあっ て、少しも怪《あや》しまれなかったのであります。
しかしながら、これ全く利己主義的精神の発露であって卑しむべきことであります。
されば、最高道徳にお いては、まず伝統を尊重して、これに報恩し、且つ最高道徳的に自己の家業もしくは職務に努力し、しこうして伝統に対してはもちろん、準伝統及びその他に対 しても、まずその相手方の名誉もしくは利益の増進につきて、自分の力の及ぶだけ犠牲的努力を払うのであります。
これがすなわち義務の先行であり、徳の貯蓄 であるのです。
かくてこれを累積すれば、神も、人間も、その至誠を受け取ってくださりまして、末ついにいかなる事でも成就せぬということはありませぬ。
し こうして自分の後日の幸福は予想以上に大きくなるのであります。
広池千九郎WEBSITE格言の間より