そもそも前にいわゆる諸伝統の主体たる神・君主・父母・祖先及び自己の 精神開発もしくは救済における師の系列は、われわれに向かって何物をも要求せぬのであります。
ただ当該伝統の先行者はわれわれがみな最高道徳に基づくとこ ろの最高品性を完成し、安心・平和且つ幸福なる生活をなすことを希望されておるのみであります。
ここにおいて、われわれ人間はその諸伝統の意思を体得し て、各自に立派なる品性を形造り、しこうしてその自己の品性を他人の精神に移植してこれを開発し、その開発されたる人をしてまずその人の諸伝統に報恩せし め、次にその人及びその次々に開発されたる人々とともに、この世界の完成を図るのであります。
これすなわち人心の開発もしくは救済の事業であります。
且つ これが伝統に対する報恩の唯一の方法であります。
かくてわれわれの最高品性は、最高道徳を聴き、諸聖人及び最高道徳の先行者の人心の開発もしくは救済に苦 労せる事跡に感激することによりてその端緒を発し、次に自らこの人心の真の開発もしくは救済に対して努力することによりてはじめてその神・聖人その他諸伝 統の苦労を実際に体験するを得、慈悲心も出来、且つ自己反省の心も出来て、真の最高品性が出来るに至るのであります。
広池千九郎WEBSITE格言の間より