迅速確実典雅安全 | 格言とその意味

格言とその意味

廣池千九郎先生の格言とその意味をUPしていきます。


 およそ人間が完全なる行動を取りて事業に当たることは実に難きことであ りますが、最高道徳の教育法にては、結局、この至難のことを完成しようというのであります。
しかしながら、その方法を具体的に開示することは不可能であり ます。
故に、ここには抽象的にその大要を指示しておくのみであります。
 そもそも人間の天性はみな各自に異なっておりますが、要するにいかなる性質の人にてもその行動は活発にして、事に当たって迅速なるを要するのでありま す。
しかしながら、いかに活発かつ迅速でもその挙動が乱暴かつ無作法であって、その事業が不確実かつ不安全ではなりませぬ。
ここにおいて、完全なる人間の 行動としては、活発かつ迅速に加うるに温良(やわらか)かつ典雅(みやびやか・しとやか)なるを要す。
しこうしてこれに加うるに、その事を処置するには確 実にして安全なるを要するのであります。
ここにおいて、個人の平和及び幸福も成立し、社会の平和及び幸福も成立するのであります。
しかしながら、最高道徳 における教育の順序は無知的・質朴的もしくは田舎風を知的・文化的もしくは都会的に仕立て上ぐるのですから、その間において種々の弊害を伴生するものであ ります。
たとえば、迅速を尊べと教うれば乱暴に流るることあり、質朴者に知識を入るる場合には狡猾に陥りやすいような弊が起こり、典雅になれといえば因循 (いんじゅん)もしくは緩慢に流れやすく、次に因循もしくは緩慢を戒むれば忍耐を否認するものと誤解することがあります。
故にその教育法はいよいよ進みて いよいよ難いのであります。
ことに元来、迅速・確実は事業成功の方法にして、典雅・安全は貴族的にして、最高道徳はこの二者を兼ねねばならぬのでありま す。

               広池千九郎WEBSITE格言の間より