Kung Fu Yoga(2017 中国/インド)

監督/脚本:スタンリー・トン

製作:バービー・トン

アクション指導:ジャッキー・チェン、スタンリー・トン、ウー・ガン、ブルース・ロウ

ジャッキー・チェン、アーリフ・リー、レイ(EXO)、ソーヌー・スード、ディシャ・パタニ、アミラ・ダスツール

 

①お正月らしい!明るいジャッキー映画

 

2018年最初の更新です。今年もよろしくお願いします。

 

お正月なのでお正月らしい映画を…ということで、ジャッキー・チェンの最新作「カンフー・ヨガ」です。

スター・ウォーズ世代である僕は自動的に同時にジャッキー世代でもあるわけで、やっぱりジャッキー・チェンには別格の思い入れがあります。

でも正直、ここのところは観たり観なかったりで…アメリカの俳優と組んだ「バディもの」があんまり好きじゃないのもあって、しばらく遠ざかってたんですけど、今回はついつい、無性に惹かれてしまいました。

 

なにしろ、インドとの合作でタイトルが「カンフー・ヨガ」。中国+インドでカンフー・ヨガ。中学生でもわかる、この直球がエライ! 邦題かと思えば原題なんだからなおエライ。

実際に観てみると別にジャッキーがヨガ拳法とかするわけでもなく、カンフー対ヨガで戦うわけでもなく、ただただ「インドっぽいイメージ」でのヨガでしかないんだけど、その割り切りっぷりもなんだか好ましく思えてしまいます。

微妙にゴロの悪いタイトルであることまでコミで、なんかこう清々しいまでにストレートで適当。そこがジャッキー映画なんですよね。

 

合作なんだけど、インド映画っぽいのは結構最後の辺だけで、それ以外は基本いつものジャッキー映画です。

なんかさっきから何か言っては打ち消して…の繰り返しですが。

いつものジャッキー映画だから、安心感を持って観られる。やっぱり、お正月にぴったりじゃないですか。

 

②切り替えて行きましょう!

 

カンフー・ヨガなのにヨガしないとか、インド合作なのにインドっぽくないとか、タイトルを紹介するだけでも既に突っ込みどころがたくさん出てくる本作ですが、当然ながらというか、ストーリーも突っ込みどころは無数にあります。

 

ジャッキーの助手がモテるとか、ジャッキーがインドの博士に惚れたとか、設定っぽく出てきた描写は大抵それっきり置き去りにされます。

インド人ヒロインの「ヨガ得意」設定ですら、潜水する場面で一回役に立って以降はほぼなかったことになってます。

敵との戦いで優勢かと思ったら次のカットでは縛られてたり、敵に出し抜かれたと思ったら「みんな逮捕された」の一言で済まされてしまったり。

 

繋がりがヘンというか、話がコロコロ変わっていくのでストーリーの流れがいびつになっちゃうんですよね。それが二転三転の面白さになってたらいいんだけど、こなれてないのでただ繋がりが悪いだけに見えてしまう。

 

財宝をめぐる伝説の末裔両家の争い…というメインプロットも、コントの設定程度のゆるーい設定でしかないし、敵であるインドの富豪の軍団もいちおう銃とか持ってるけど、甘噛みしてるくらいにしか見えないし。

そうやって弱いところを突っ込んでいけばそれこそ切りがないんだけど、だからつまらない映画かと言えば、決してそんなことはない

本当に、素直に面白かったです。

 

思うに、この映画を楽しむ最大のポイントは「切り替えの速さ」ですね。

あれ?ヘンだな?とか、今のはどういうことだ!とか思っても、あまり深く考えずに、パッと切り替えて次へ行く。すると、なんらかのサービス満点な面白シーンが必ず展開しています。それを素直に面白がって、ついていく。

そんなふうに、次々と目の前で起こっていることだけに集中して観ていくと、最後のダンスが終わる頃にはあら不思議。かなりの傑作映画を観たんじゃないだろか、というような気持ちにさえなれてしまいます。

いや、本当に。嘘じゃないですって。

 

 

③世界めぐりが楽しい!

 

財宝をめぐって展開するストーリーはおおざっぱで、あってないようなものですが、ロケーションは豪華

チベットの雪山から、砂漠のドバイ。後半になってようやくインドと、世界をまたにかけて冒険します。ジャッキー得意の、007とかインディ・ジョーンズパターンのお話ですね。

 

インディ・ジョーンズのパロディってだけでも今の時代にどうなんだ?って感じですが、それも非常にベタな描写をきちんとやる。

インドに行ったらロープマジシャンがいて、蛇使いがいて、ヨガの行者とか火を噴く人とか一通りいて、それを絡めてひとくさりアクションを見せる。そういう律儀なシーンを、きっちり見せてくれます。

 

それだけならただ古いショボいで終わりそうですが、なんか妙にお金もかかってて、ゴージャス感はあるんですよね。

今回、ドバイの王族から結構なお金が出たみたいで、大量のスーパーカーをドカドカ破壊してド派手なカーチェイスが繰り広げられます。

そういうことができるのもジャッキー・チェンの人気と人望あってのことで、こういう豪快なことってハリウッドの映画だとかえって出来ないんじゃないだろか。

 

基本ジャッキーは運転してるだけで、ジャッキーのアクションではなくあくまでもカーチェイスを見せるシーンになってるんだけど、でもジャッキーの車の後部座席にはライオンがいるんですよね! どういうわけか。

もうなんかそれで「うわー」とか言ってるジャッキーを見てるだけで楽しくなってしまうし、車が主役になってしまいがちなカーチェイスの中でジャッキーがちゃんと生きている。ジャッキーの映画としての面白みに、ちゃんとなっている。

 

映画の冒頭で古代の伝説を語るパートがあって、ここがものすごくチープなCGアニメになってるんだけど、でもそのチープさのおかげで、劇中のライオンだのハイエナだのオオカミだのがみんな本物感を増してるんですよ。

意図したわけではなかろうけれど、思わぬ副産物、結果オーライなことになってました。

 

インド合作と言いながらインドに着くのは後半になってから。インドのシーンの多くはセットで、「インディ・ジョーンズ魔宮の伝説」くらいのインド感しかないんだけど、最後の最後にはインドらしい、ボリウッドのスタッフが振り付けた全キャストによるダンスを見せてくれます。

ここは文句なく楽しいです! お正月気分満喫。

終わってみれば、ジャッキー映画というよりはクレイジー・キャッツ映画を観たような満足感がありました。…って、それでいいのかどうなのかわからないですが。

 

④ジャッキーに元気は…あまり…

 

ジャッキーのアクションやスタントは多くはないです。ジャッキーも60代なので仕方はない…のかな。

その分、前述のカーチェイスやライオンなどのアイデアと工夫で面白く見せています。それはそれで、今のジャッキーの映画としては正しいあり方なのかもしれません。

 

ただ、少々気になったのは…ジャッキーの表情にひどく覇気がないように感じられたこと。

なんだか終始つまらなそうな、気のない表情を浮かべていて心配になります。

体型もずいぶん太っていて、肉体を披露するシーンもなく、すっかり年相応のおじいちゃんに見えます。

「おじいちゃんはデブゴン」じゃないけど、元気なおじいちゃんを孫たちが囲んでるような構図。

 

役作り…なのかな。今回は教授役だからあえて老けた感じにしてるのか。でもその割には普通にカンフー強いしなあ…。

あるいは、単にこの映画にいまいち乗り気じゃないのかも。

むしろそうだったらいいんだけど、あまり元気のない様子を見せられると不安になります。

ダンスシーンはとてもキレてて楽しそうでいい感じなんだけど。

 

⑤映画は加点方式で!

 

映画と同じであちこち脱線する感想になってしまいましたが、総じて面白かったのは間違いないです。

硬派なジャッキー映画しか認めない!というのでなければ、楽しめることでしょう。

 

「カンフー・ヨガ」を観る上でのポイントは、決して減点方式で観ないこと。

おかしなことがあるたびにいちいち減点してるとキリがないです。

でも、加点方式で観て、楽しいところを数え上げていくと、こんなに楽しい映画体験はないです。

 

思うんですけど、これってどんな映画でも基本的には同じじゃないかな。

どんな名作映画だって、粗探ししようと思えばできてしまう訳なので。

映画の基本トーンに乗れないと、ついついネガティブな見方になって、欠点ばかりが目についてしまうんだけど、せっかく貴重な時間を使ってその映画を選んで観てるんだから、楽しめないのはもったいないですよね。

自分の気持ちの持ち方次第で楽しめるんだったら、そっちの方がずっとトクだと思います。

 

加点方式で観て、いいところ探して、それでもいいところがまったく見つけられなかったら、その時は思う存分酷評していいんじゃないでしょうか。

 

…というような姿勢で、今年も映画のいいところを紹介していきたいと思います。

あらためて、どうぞよろしくお願い致します。

 

 

 

 

 

「カンフー・ヨガ」公式サイト