■木造洋館が自慢の大学キャンパス②

 

(その①からの続き)

 

歴史あるキャンパス。レンガ造りの古めかしい建物。

 

と、言いたいところだが、実は日本の大学にレンガ造りの建物は、ほとんどない。

 

日本の大学の大部分は、コンクリ建築の技術が普及したあとに作られた。

 

従ってレンガ造りに見えても、実は鉄筋コンクリート造レンガ風タイル張り、ということがほとんどだ。

 

別にそれが悪いというわけじゃないんだけど。

 

でも、木造洋館校舎なら結構残っている。本物の木造洋館が。

 

そんな歴史あるキャンパスを、ご紹介させていただきたく存じます。

 

今回は(おおむね)中山道つながりで、ご紹介。

 

①東邦音楽大学・川越キャンパス(私立・埼玉県川越市今泉)

 

 

川越は中山道ではないだろう?と、のっけから叱られそうだが、中山道の沿線ということでご了解されたい。

 

ここの自慢は1939年供用開始の三室戸記念館。

 

元々は都内西巣鴨に建てられた校舎だったが、キャンパス再開発に伴い、1968年に現在地に解体移転されてきた。

 

2階建ての瀟洒の洋館。現在は小演奏ホールや史料館として使われている。

 

せせこましい都心に残るより、広々とした現キャンパスにある方が、「洋館」っぽくって良いと思う。

 

そんなに大きなキャンパスではないが、他にもかっこいい現代建築や芝生の庭があったりして、なかなか良い感じの所だ。

 

川越観光と合わせて、是非。

 

②共愛学園前橋国際大学(私立・茨城県前橋市小屋原町)

 

次は前橋。ここも中山道ではないのだが、中山道のそば、ということで。

 

 

と、言いたいところだが、前橋ですらない。

 

JR両毛線で前橋大島駅のさらに先、駒形駅だ。

 

そこにある共愛学園中学・高校・大学。その中に学園のシンボルとして保存されている宣教師館がある。

 

1892年落成の木造2階建て。派手さはないが、保存状態はもちろん良好だ。

 

元々は前橋の中心部にあったが、2000年に移築されてきた。

 

キャンパスの中と言うより、独立した公園の中にある、といった体。

 

すごいA級洋館というわけではないが、ほのぼのとした木造館、という感じかな。

 

なお現在、同大学では、おしゃれスタイルな5号館を建設中。

 

設計は、東大先端研3号館や名古屋大赤崎記念研究館を手がけたシーラカンス・アンド・アソシエイツ。

 

その辺も合わせて、ぜひ見に行かれてはいかが?

 

③群馬大学・桐生キャンパス(国立・桐生市)

 

ええもう、中山道どころではありませんね。両毛線に乗って駒形のさらに先。桐生駅だ。

 

 

さてこのキャンパスは、群大理工学部の単独使用。駅からタクシーで十数分、と言ったところか。

 

一番の見どころは、正門すぐの同窓記念会館だ。1916年竣工の2階建て木造大型洋館。

 

木造なのにゴチック教会建築風味。そこそこ最近にも改修されたみたいで、状態は良好だ。

 

手前にある門衛所も、当時のままの木造洋風建築だ。

 

桐生〜太田のあたりは昔からの養蚕地帯で、その結果、紡織機械の製造業も発達。北関東屈指の工業地帯となった。

 

つまり、現在もなお、かつての栄華をとどめる町並み、というわけ。

 

ぶらぶら町歩きが楽しめる。

 

④信州大学・上田キャンパス(国立・長野県上田市)

 

ようやく中山道に復帰する。

 

歴史ファンにはおなじみ、真田一門の根拠地として知られた上田に行ってる。

 

 

そこにあるのは、レトロな建物と居心地の良い庭が感じの良い、国立大学としてはやや小ぶりなキャンパスだ。

 

見所は学部講堂。1929年竣工の木造2階建て講堂だが、分離派に影響を受けたデザインが見ものだそうだ。

 

そうかなあ?とは思ったが、そうかもしれない。

 

少なくとも、その裏手にある、これまた味のある1935年落成の木造建築「旧千曲会館」と見比べると、ちょっと幾何学っぽくて、確かにそんな感じだ。

 

他にもライト風の旧実験室やレンガ倉庫もあるし、少し距離はあるけど、公立長野大学も一見の価値あり。

 

もちろん、戦国ファンには、上田城公園は見逃せない。

 

⑤信州大学・松本キャンパス(国立・長野県松本市)

 

厳密に言うと、現在は大学から県に移管されているのだが、大正時代は1920年生まれの木造旧校舎が有名だ。

 

 

信州大文理学部の旧校舎で、もともとは信州大の前身の一つ、旧制松本高校だった。その敷地が公園として一般開放され、本館と講堂が保存されている。

 

本館は無料で一部見学可能。となりに資料館もある。

 

初期の旧制高校は正面に豪華な入り口、そこから左右対称に重厚な両翼が広がる古典主義的な作りだ。

 

が、松高など大正時代に作られたものは、当時の自由様式的な建築トレンドのせいか、それとも経費節減のためか、角っこに入り口をつけたシンプルな作りだ。

 

入ってみると、中はなかなか狭い。廊下も教室も。

 

昔の日本人は平均身長が今より1割近く低いといえども、これはちょっと。

 

他の学校はどうなんだろう?

 

同じ時代に建てられた旧帝大とか、あるいは同じ松本市内の開智学校(明治時代に作られた小学校)は、特段、手狭な感じはしないのに。

 

松本の町は、他にも見どころがたくさん。建物密度が高い。

 

昔からの建物、最近作られた、なんちゃって昔風の建物。おしゃれな現代建築。ひしめいている。

 

その①もどうぞ!