■木造洋館が自慢の大学キャンパス①
歴史あるキャンパス。レンガ造りの古めかしい建物。
と、言いたいところだが、実は日本の大学、レンガ造りの建物はほとんどない。
ほとんどの大学は、コンクリ技術が普及したあとに作られた。
従ってレンガ造りに見えても、実は鉄筋コンクリート造レンガ風タイル張り、ということが多い。
それが悪い、というつもりじゃないんだけど。
でも、木造洋館校舎なら結構多い。本物の木造洋館が。
そんな歴史あるキャンパスを、ご紹介させていただきたく存じます。
まずは東北編。
何となくの印象だが、東北地方は木造洋館が充実している感がある。
①岩手大学
かつての盛岡農林高等学校の本館が、農業教育資料館として公開されている。大正元年(1912年)竣工。
1994年に国の重要文化財に指定され、建設当初に近い形に改修された。
建物だけでなく、周りの庭や池も充実している。小雨の中や雨上がりに訪問すれば、びっくりするほど美しい。
気分は宮沢賢治だ。
②山形大学・米沢キャンパス
かの上杉藩が治めた、誇り高き米沢の地が自慢する、立派な洋館だ。
米沢駅から歩けなくもないけど、ちょっと遠い。行きか帰りのどちらかは、タクシーが良い。
もともとは旧・米沢高等工業専門学校の本館だった。
1910年落成、両翼百メートル近い、堂々たるルネッサンス洋式。
大学に残る木造洋館は、多くが「講堂」で、作りとしては奥に長い。
ところがこちらは「本館」で、左右両翼に校舎が伸びていく、堂々たる作りだ。
1973年に重文指定。
ちなみにその東側には、絵に描いたようなおしゃれなモダン建造物であらせられる百周年記念会館だ建つ。
ここでお茶でもしながら、本館を眺めよう。
そんでもって、米沢の町はさすが上杉の城下町。色々と観光のしがいもある。
③東北大学・片平キャンパス
仙台市内。駅からそこそこの徒歩圏内にある。
東北帝国大学創業の地であるキャンパス。
空襲にも関東大震災にもやられていないので、保存状態は良好。
木造平屋建ての本部棟や、奥には魯迅が学んだ階段教室(1904年)もあるが、一番古いのは木造大屋根の旧第二高等中学校物理学教室。
1890年。
かつては、本当に古色蒼然たる木造小屋だったそうだが、しばらく前の改修で、ピカピカになったとか。
十分、年季が入って見えるけど。
他にも色々、見どころ盛りだくさんのキャンパスだ。
レトロ鉄筋が好きな人にもぴったり。昭和初期・大正モダン感があふれるている。
あとは仙台メディアテークにでも行っとけ。って感じでしょうか。そんで牛タン食っとけ、って感じで。
④尚絅学院大
仙台駅からちょっと離れた、コンパクトなミッション系の私大。
学園を象徴する建物が、「エラ・オー・パトリック・ホーム」だ。
1896年(明治29年)竣工の瀟洒な木造2階建て。
伝道ミッションを資金面で支えたエラ・オー・パトリックさんをたたえて、そう名付けられたとのこと。
元々は仙台の街中に、学園の校長室や礼拝堂などとして建てられた。
その後キャンパスが郊外に移転し、建物は取り残されたが、老朽化が進んだため2008年に解体。
補修の上、郊外キャンパスに移築された。
資料写真を見ると、最後の頃はモルタル塗り・トタン屋根に変更されていて、いささか、これはちょっとどうなのよ的な見た目だったのだが、今ではピカピカの素敵な洋館、建築当初にだいたい近い姿に復活した。
ちなみに、木造洋館のモルタル塗り・トタン屋根化は、防火・耐火のための補修として行われることが、少なくなかったらしい。
⑤宇都宮大学・峰キャンパス
おいおい、東北じゃないですよ、栃木県は。
と、お思いかもしれないが、東北地方への入り口というくくりで、良しとしましょう。
1924年竣工の峰が丘講堂がその木造物件で、高等農林高校時代の建物。
学園紛争で講堂として使えなくなり、にもかかわらず?今度はサークル棟として使われていたという。
2009年に改修して、元の姿に戻ったとのことだ。
この前通りかかったら、さらに改修していた。どうなるのだろうか。
この大学は入口すぐのフランス式庭園と、講堂裏手のイギリス式庭園が自慢。どこから写真を撮っても絵になるキャンパスです。
近場にある宇都宮大・陽東キャンパスもおすすめ。
そこそこ距離はあるけど、同じく宇都宮市内の作新学院大学は隈研吾の設計。こちらはバスかタクシーに揺られてどうぞ。
★その2★に続く