彫刻家 片桐 宏典さん(再放送)第7回 ~制作の素材と想い、舟の作品について~ | 幸せな人が集まる会社 株式会社みんなの学び場 公式ブログ

彫刻家 片桐 宏典さん(再放送)第7回 ~制作の素材と想い、舟の作品について~

 

みなさま こんにちは。

彫刻工房くさか 日下育子です。

 

今日は素敵な作家をご紹介いたします。

彫刻家の片桐 宏典さんです。



片桐 宏典さん
ケイト・トムソンさん
お二人とも彫刻家であり、ご夫妻でもいらっしゃいます。


前回の日下育子からのリレーでご登場頂きます。
     
第1回  第2回  第3回  第4回  第5回  

 

片桐 宏典さん  

    第1回 ~三陸のリアス海岸が原風景にあります~ 

           第1回続き 略歴のご紹介

    第2回  ~彫刻でコミュニティーと関わってきました~ 

    第3回  ~芸術家の共働制作で「宇宙」を表現しました~

    第4回  ~アートをプロフェッショナルにやっています~

    第5回 ~制作テーマ①  ストリームラインのシリーズについて~
    第6回   ~制作テーマ②  サウンドインスタレーションについて~ 

 

第7回の今日は、石という素材と、舟のかたちをした作品の
石のエッジの扱いと空間での緊張感についてお話をおうかがいしました。

どうぞお楽しみ頂ければ幸いです。


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「Streamline」
インド黒御影石
168 x 20 x 60cmH
東京都高輪台プラウド
2014



 


「Streamline Coordinate”」

インド産黒御影石

114 x 15 x 50 cm H

2013




 


スト2011座標"

 

「Streamline-2011座標」
カラーラビアンコ大理石
48.5x7.5x6.5cmH
2011

 


 

 

 ス乱気流 2008

「Streamline-乱気流」
スウェーデン産黒御影石
220x20x50cmH
2008

 

 

 


「よみがえる港」
宮城県産玄武岩
幅90x厚15x高25cm
2004


 

 


 

「望郷」
宮城県産玄武岩
幅90x厚17x高18cm
2004

 


 

眠る心臓07ー05

"眠る心臓 2007-05"
宮城県産玄武岩
35x9x40cmH
2007



 


「覚醒する風景ー分水嶺」」
スウェーデン産黒御影石
45x5x60cmH
2008




 


「黒い女のソネット」

「黒い女のソネット」
スウェーデン産黒御影石
8x8x35cm
2007

 





扇

「扇」
大理石、宮城県産玄武岩
36x7x45cm
2007





 


花の旋律

「花の旋律」
赤花崗岩
幅55x厚12x高75cm
2001

 

 


日下
片桐 宏典さんの制作テーマについてお聴かせいただけますでしょうか。

 


片桐 宏典さん
僕の場合、石の素材感を明快なかたちと組み合わせることによって
1+1=3にしたいというのが作品のテーマです。

ふつう、石だとみんなかたちを丸めてしまいがちでしょう。

 


日下
確かにそうかもしれません。


片桐 宏典さん
前回も少しお話しましたが(※第1回 )、
大学時代、地学の先生に「石ってみんな丸いと思っているけど、
結晶をみると完璧な抽象的なかたちの対称形、
それこそ立方体とか平行四辺形とかそういう結晶の塊なのに、
なんでみんな丸くするんだろうね。」って言われて、
「へぇ~なるほどなぁ~、確かに。」と思ってね。

 


日下
私が片桐さんの石の作品で、特に印象に残っているのは、
伊達冠石を用いた舟のかたち、皿状の作品です。
 
エッジを丸めない、石を研ぎだしたままのピリピリとしたエッジが残っていて
何か空間に振動を与えるような、とっても研ぎ澄まされたシャープな感じが
強く印象に残っています。

エッジを本当に丸めないで残す片桐さんの感性ってスゴイ!と感じました。
私は触れた時の怪我のことを考えてしまって角を丸めるということがあるので・・・。

 


片桐 宏典さん
あれは本当に、下手に触ると指、切れますよ。

 


日下
これは地学の先生が仰ったという結晶のお話の影響がおありなのでしょうか。

 


片桐 宏典さん
やっぱり見た感じかな、綺麗に面取りしているとインパクトが弱いんですよね。
本当に切れるぐらいの奴じゃないと視覚的なインパクトが弱いと思うので、
それでエッジをとにかくシャープにという。

 


ケイト・トムソンさん

でもパブリックの作品はさすがにエッジを少し取ってますね。


 

片桐 宏典さん
今年、去年の暮れから急に舟の作品がパブリックに出るようになったんですよ。
あれはギリギリで切れないようにしてあります。
展覧会に出すものは本当に指先で触れると本当にピッと切れるんです。

 

 

ケイト・トムソンさん
プライベートに出すのは良いけど
パブリックに出すのは本当に切れると危ないです。

 

先週、ヘレンさんという友人が片桐の小さい舟の彫刻を買いました。
彼女が飛行機で帰るのに、壊さないように手荷物のバックに入れて持って行くと言うので
私は「本当に刃物と同じだからやめて」と言いました。

多分本空港のセキュリティーで通らないと思います。
結局、預け入れのスーツケースに入れて持っていきましたけど。


 

片桐 宏典さん
海外にも面取りしない作家がいますが、見た感じ全然違うんですよ。
これは何が違うんだろうと思って、よく見ると、やっぱり面取りしてないんですよ。

 


日下
ああ~。そうですか。

 


片桐 宏典さん
その仕上げが鋭すぎる為に、欠けてしまったり、
買った人が落として壊してしまったりして直したこともあります。

 

それでも、エッジを丸めないというのは、作品に何を求めるかですよ。
石屋さんの作るものは約束事として、
カドは必ず面取りすることになっているけど、僕らには関係ない。

 

思うに、抽象彫刻、抽象的なかたちの作品というのは、
カタチ自体を突き詰めていって何かを語るということだから、
具象的な作品よりもずっと表現が直接的になりますよね。

 

僕は丸い作品も作っているけど、丸い作品は丸く、四角い作品は四角く
というのが鉄則だから、四角いものは、エッジはどうしても鋭くなっていきますね~。

 

何をやってもいいんですよ。自分の好きなように。
触って切れるんだったら、「触らないでください」って書いておけば良いんだから。(笑)

 


日下
確かに、そうですね。
片桐さんの作品のエッジの鋭さには、

本当に空間に切り込んでいくような緊張感がありますね。


私は自分の作品ではそこまでしたことがなかったので
片桐さんの作品の鋭さには本当に感動を覚えました。


今日も素敵なお話をありがとうございました。


 


「君の時代は来る」
宮城県産玄武岩
高さ240cm
1989
西仙台ゴルフ場所蔵
南仙台カントリークラブ所蔵
せんだい国際彫刻シンポジウム制作作品

 

 

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編集後記

 私が片桐 宏典さん、ケイト トムソンさんに初めてお会いしたのは、
私が大学の副手1年目の冬に、お二人の住む岩手県岩手町にある㈲浮島彫刻スタジオを
訪問した時でした。 大自然の中の広いスタジオに姫神産の巨大な原石が置いてあり
「大学の石彫場とはスケールが違う!」と感動したのを覚えています。

 

 片桐 宏典さんは私が学生の頃から、
「宮城教育大学の在学中から、そのままヨーロッパに渡って彫刻家になっている方」として
有名な存在の方でした。

今現在は、1年の半分ずつをイギリスと日本を行き来しながらの活動をされているそうです。

 

 今回は片桐宏典さんの舟のかたちをした作品について、素材とかたちのせめぎ合いの表現で
作品に何を求めて制作するかというお話をおうかがいしました。

 

 片桐 宏典さんの作品はどれも、石のかたちが空間に強いインパクトと影響を与える制作をされていて
それが、観る人の心にも何かを想起させる力となっているのだなぁと改めて感じさせられました。

 

 次回は、片桐 宏典さんの階段状のモチーフの作品と、
シンポジウムで訪れたイスラム圏で芸術文化について感じたことなどを


どうぞお楽しみに。

浮島彫刻スタジオ 片桐 宏典さんとケイト・トムソンさん

岩手県岩手郡岩手町浮島

 

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◆片桐 宏典さん、ケイト・トムソンさんのホームページ
 浮島彫刻スタジオ 

 

スターリング大学(イギリス)での展示
 片桐 宏典さんの紹介ページ 

 スターリング大学 Corridor of Dreams 「夢の回廊」 インタビュー動画)

 (全23分中、お二人と作品が映るのは11:30~15:30頃です。)

 

 スターリング大学 アートコレクション 片桐 宏典さんの紹介ページ 

 スターリング大学のFacebook ⇒Art Collection at the University of Stirling

 

                        ⇒片桐 宏典さん、ケイト・トムソンさんの作品写真


 

 

◆近日開催の展覧会です。

 

IMAGINATIVE LANDSCAPE 3人展
「片桐宏典+ケイト・トムソン+上門周二」

− 「風景」をテーマにした彫刻とドローイングによる三人展 ー

会期:2016年11月24日(木)〜29日(火)
会場:プロモ・アルテ・プロジェクト・ギャラリー
時間:11:00〜19:00 (最終日のみ17時終了)/会期中無休
      プロモ・アルテへのアクセスはこちら:http://www.promo-arte.com/galeria2/map_images/galeria_ArtsMap.htm
   
   プロモ・アルテギャラリー
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5丁目51-3ガレリア2F
Tel. 03-3400-1995  Fax.03-3400-9526
info@promo-arte.com
www.promo-arte.com

 

片桐宏典
「環境と造形芸術」をテーマにヨーロッパと日本を中心に普遍的な造形を目指す作家活動はもとより、国際彫刻シンポジウム運動による公共空間での実験的なアーティスト同士の恊働制作プロジェロトや地域性と連携した様々な特色あるアートイベントの企画運営を次々と手がけている。浮島彫刻スタジオを日本1991と英国2014にケイト・トムソンと共に設立。シンプルな抽象的構成の黒御影石や玄武岩による作品。

 

ケイト・トムソン
ケルト文様や神話をモティーフとした大理石の抽象的彫刻を中心に手がける。代表的な作品として駐日英国大使館、大手町ファイナンシャルシティ、グラスゴー・ゴーブルズ・オートランド地区再開発事業モニュメントなどがある。グラスゴー・スカルプチャー・スタジオ共同設立1986、UK98アートフェスティバル1998企画運営などスコットランドと日本を中心に世界各地でアートプロジェロトを広く手がけている。

 

上門周二
鹿児島県種子島生まれ。春は森でヤマモモと野いちご捕り、夏は珊瑚礁の海で魚たちと戯れ、川エビ捕りに勤しみ、冬はサトウキビ畑で収穫を手伝い、強烈な自然体験と原風景を胸に東京へ出る。1985年株式会社アネトス地域計画を設立しランドスケープ・アーキテクトとして独立。自然と人間との共生をテーマにランドスケープ・コンサルティング及び設計に関わり、日本及び東アジアを中心に世界各地のプロジェロトを手がけている。今回「Creative Landscape」をテーマとしたドローイング作品を初めて発表する。

 

 

 

日本・石の野外彫刻―ストーンアート写真集
  藤田観龍 著(写真)  本の泉社

 

 片桐 宏典さんの作品写真と手記「石彫というジャンル」(318ページ)
 ケイト トムソンさんの作品写真が掲載されています。


 

彫刻家 片桐 宏典さん 第1回続き 略歴のご紹介

 

 

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★☆ アーカイブス ☆★


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