彫刻家 渡辺 知平さん (再放送)第3回 ~過去と僕が出会う場所を想いながら~ | 幸せな人が集まる会社 株式会社みんなの学び場 公式ブログ

彫刻家 渡辺 知平さん (再放送)第3回 ~過去と僕が出会う場所を想いながら~



みなさま こんにちは。

彫刻工房くさか 日下育子です。


今日は素敵な作家をご紹介いたします。

彫刻家の渡辺 知平さんです。



渡辺 知平さん



前回登場の杉 英行さんからのリレーでご登場頂きます。

  彫刻家 杉 英行さん 第1回  手記   第2回   第3回   第4回   第5回  


渡辺 知平さん

第1回   ~ 自分のものを作れるようになった頃  ~ 

第2回   ~子供の頃、眠るのが怖かったことと、温室体験 ~ 

第3回の今日は、渡辺 知平さんの制作の動機が
ご自身が「観たい!」という想いにあるということをお話下さいました。

また、主にガラスを使ったいくつかの作品から
その背景にある、渡辺 知平さんの原風景への想いをお聴かせ頂きました。


2014年2月20日のインタビューを再放送でお送りいたします。


どうぞお楽しみ頂ければ幸いです。


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F1


f2

NOBORU HITO  2010 
木、 ガラス 、鉄



f3


F4

NOBORU HITO Version B  
木 鉄
1900×700×350




q1

KUDARA  2011
木 鉄  ガラス
2000×300×250



r1

INORU TETU  2011
鉄 木
2500×400×350




p1  


P2


P3
HISOKA NA FUNE  2012
鉄 ガラス アクリル 木 金箔
950×1100×350




s1  



s2  

SHIZUKA NO FUNE
木 ガラス 金箔
ガラス 3500×3800×380
木部  1700×400×300



k1

k3

MIZU NO NAKANO MORI
鉄 アクリル 木 水
1600× 500× 400



j1


j2

TATU HITO
鉄 アクリル 水
1500×200×60






日下
渡辺 知平さんの作品は内側にある物像や造形物を
ガラスで覆っているところがとても独創的ですね。
何かガラスを使うことに意味合いを持たせる意図はおありでしょうか。


私にはガラスが被膜やシェルターのように、ワンクッション置いてあるようで、
直に彫刻を観るのとガラスを通して観るとので違うように感じられると想うのですが。



渡辺 知平さん
そうですね。シェルターというのはないんですけど、
その、何ですかね、こっちにあるもんじゃないって感じがしますけどね。



日下
私のこれまでの彫刻作品の鑑賞体験から、
その違いを一生懸命考えて言葉にしてみたのですが。


作品の内容にもよりますがガラスのない彫刻作品では、
彫刻の空間に観る側も同列に存在する感じがありますよね。


それがポジティブとか明るい内容の作品ですと
エネルギーをもらう感じの時もありますし、
ネガティブとか闇を表現した内容とかですと
彫刻と一緒にいることが生々しく、怖い感じ方をする時もあります。


そんな風に彫刻と観る自分の関わりが空間の中でリアルな感じがあるのですが、
渡辺 知平さんの作品の場合は、ガラスを通して観ることによって、
作品とのかかわりに良い意味でワンクッションある感じがして、
穏やかに静かに見られるな~という感じがします。
何かこう、客観的に冷静に作品にスーッと入って行けるような、
ちょっと不思議な感じがしたんですね。



渡辺 知平さん
そうですね。



日下
ええ、なのでそういう関わり方と狙っていらっしゃるのかなと
勝手に想像したりしていたのですが。



渡辺 知平さん
そうですね。狙うとか意識はしていないんでしょうけど。
ただ僕がそういうものに惹かれてしょうがないんですよ。



日下
ああ、そうなんですか。(合点!)



渡辺 知平さん
だから、要するに作る動機としては
「自分が観たい!」と言うのが一番、動機なんですね。


「こういうモノが観たい!」ということが、自分が作る時に
自分が観たいから作りたいというのが一番根底に大きいですね。


日下
ああ、そうなんですか~。(感心)


それは、素晴らしい動機ですよね。


ご自身が観たいということに忠実に作っていらっしゃるのって
ある意味凄いなと想うのですけど。



渡辺 知平さん
そうですね、僕が一番、鑑賞者というか。多分そうだと想いますね。



日下
そうですか。




d2

子供達の夜 2009
木 鉄 ガラス 
2700×900×900






種子の在る風景
木 ガラス アクリル 水 種子
2700×1500×300
2012年







i4

NAKANOHARU  2011
鉄 ガラス
1500×1000×1000






渡辺 知平さん
「子供達の夜 2009」の作品、これは杉 英行さんの所に行って欅をもらってきて
何年振りかで久しぶりに丸太を削って彫ったんですよ。


これは折口信夫さんという民俗学や和歌に造詣の深い作家がいて、
その人の本に 『死者の書』というのがあるんですよ。


これは小説仕立てになっているもので、
昔、奈良の当麻寺(とうまじ)という所に中将姫伝説というのがあって、
中将姫とは藤原南家の御姫様なのですが
大津皇子(おおつのみこ)という、母である持統天皇に殺されてしまった皇子(みこ)が、
二上山の麓に埋葬されていて、その死霊が藤原の郎女に想いをよせ、
浄化されて行くと云う話なのですが、
それからイメージした作品なんです。


日下
そうですか。
少し棺のように見えるのは、そういうイメージからと言うこともあるのでしょうか。



渡辺 知平さん
そうです。 みんなからも棺に見えると言われます。
そんなつもりはなかったのですが
まあ、底の方では意識はしていたかもしれないですね。



日下
私が渡辺 知平さんの作品で面白いと感じるところは、
ご自身の意図と違いましたら申し訳ないのですが
四角に囲ってあったりすると何か、標本のような少しショーケースのような
客観視して見られるような提示をてあるのかと感じるのですが。


他の「種子のある風景」とか、何かそんな風にも見えて面白いと感じます。



渡辺 知平さん
ケースですかね。ケースではないんですけど。
確かに「種子のある風景」では標本と云うのを意識してましたね。



日下
私は折口信夫さんの 『死者の書』を存知あげないので恐れ入りますが
その大津皇子が二上山の麓に眠っているというイメージなんですね。



渡辺 知平さん
そうですね。
なんとういうのかな。
この話も時空と言うものが交錯しているような。


客観的に今回自分の作品を観てみるとなんか、
自分の中の記憶みたいなものが中に入っているような、
なんて言うかしら・・・。



日下
何か、そういうものが作品に表われてきているということでしょうか。



渡辺 知平さん
そうですね。



日下

記憶が反映されているかもしれないと言うのをお聴きすると
なにか風景みたいにも見えてきますね。



渡辺 知平さん
そうですね。風景ね。
だからその作品 I(アイ) なんかも風景ですね。

僕が子供の時に遊んだ山、草原に近いんですけど。



日下
題名の「NAKANOHARU」と言うのは地名でしょうか。



渡辺 知平さん
そうです。古語で「原」を「はる」と読ませる中の原という地名なんですけど。


そこはね、小さい頃よく行きましたんで
僕の中で相当の記憶の根源になっているんですけども。


変な話ですよ、僕が死んだらそこに行くという感じがするんですよね。
だから、そこは過去と僕が出会う場所のような気がしますね。
その中の原という所で。



日下
そんなことを想いながら作られた作品でしょうか。



渡辺 知平さん
うーん、それはね、ちょっとはありますね。



日下
死んだらそこに行くというのは、魂がそこに行くということでしょうか。



渡辺 知平さん
まあ、そうだと想います。まあそう想っているだけかもしれないですけどね。
実際に魂があるどうかもわからないし。
でもそういう、確信に近い気持ちがしないわけでもないですけど。


大江健三郎のふるさと方では、自分の木というのがあって、
死んだら自分の木の根元にヒューッと飛んで行くんだという話があるそうです。
あの人は四国ですよね。松山かなんかの。


そんなことは知らないんですが、
後から聞いたら同じだなと想いました。



日下
私はそれは初めて知りました。



渡辺 知平さん
だから僕は変な話ですけど、
死んだら中の原に飛んでいくんじゃないかな、と想っていますけど。



日下
ああ、そうですか~。



渡辺 知平さん
僕の従兄弟とかまだ生きているんですけど、
子供の時に、兄弟とか従兄弟とかと遊びに行った
その時代に行けるのかなと思ったりしますね。



日下
面白いですね。
そんなことが背景にありながら、
テーマとしては、「子供たちの夜」という題名で作っていらしたことが多かったと。



渡辺 知平さん
そうですね、1990年から2010年位までの間は、
「子供たちの夜」ということで作っていました。


ただ題名がそうであったので、
今、違う題名になったからといってテーマが変わったわけではないんですけど。



日下
では制作の時に、そういう原風景とか、
渡辺さんの記憶から湧き上がってくるものが作品に反映されているという
ことなのですね。



渡辺 知平さん

そうですね。
それと僕が本を読んだり、いろんなことがあったときに
自分の中のそういうものと触れ合ったような感覚があると
そういうものが作りたくなったりします。



日下
そういう触れ合いがあったときに
ご自身でも観たくて作られるという感じなのですね。



渡辺 知平さん
そうですね、まず自分が観たいと想って作る。
その作品はどのように見えるだろうかとか、
そういう感じです。



日下
とっても素敵なお話をありがとうございました。


d



子供達の夜 2009 の制作風景


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今回、杉 英行さんからのご紹介で、初めて渡辺 知平さんのお話をお聴かせ頂きました。


渡辺 知平さんは2010年頃まで「子供たちの夜」という題名で作品制作をされてきました。


一つの素材に限定せず、木、鉄、ガラスなどいくつかの素材から
独特の雰囲気の作品を作られています。


それは、渡辺 知平さんが子供の頃の、
眠ると向こうの世界に行ってしまうのではないか、という不安な感覚や
何かしら此岸と彼岸の意識を根底にもっていらっしゃることから来るのではないかと感じました。


そしてそれらの作品は、観る側にとっても、その人それぞれの
今現在と過去という記憶を行き来させてくれる、不思議な入り口になるように感じます。


いつも新しい作品を作るときは、手技的には荒々しくても、窮屈な感じがなくて好き、
制作はいつも楽しいと仰られていて、その制作の姿勢がとても素敵だと想いました。


みなさまもぜひ、渡辺 知平さんの彫刻作品をご覧になって見てはいかがでしょうか。・


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◆渡辺 知平さんが登場するWEBページ
  
 ◇  
自由美術協会公式ウェブサイト

 ◇  渡辺 知平さんの紹介ページ
 

 ◇  ハマ展:横浜美術協会ホームページ





本日もご訪問下さいましてありがとうございました。

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