彫刻家 有馬寛子さん 第6回 ~アートとは視点や物事のとらえ方を考え直すきっかけを与えるものです | 幸せな人が集まる会社 株式会社みんなの学び場 公式ブログ

彫刻家 有馬寛子さん 第6回 ~アートとは視点や物事のとらえ方を考え直すきっかけを与えるものです

 
みな様、こんにちは。
彫刻工房くさか 日下育子です。
        
今日は、素敵な作家をご紹介いたします。彫刻家 有馬寛子さんです。



有馬寛子さん


前回、菅原 睦さんのご紹介でご登場頂きます。

菅原 睦さん

第1回   第2回、  第3回  、第4回  、第5回
    


有馬寛子さん
第1回 自然の中で育ち、自然の風景がテーマです。
第2回 自然や生命の循環から表現が始まりました
第3回 東北の自然の美しさをどう伝えるかが課題です。
第4回 石は重くて硬いですが素直な素材です。
第5回 自分が安心できる形を少し崩すように心がけています



 第6回目の今日は、社会との接点について意識することと、「あなたにとってアートとは?」に
お聞かせ頂きます。 

どうぞお楽しみ頂けましたら幸いです。

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2008_2

2008_2 「打ちよせる風景」      
100×75×65cm   ベニヤ合板 
2008年





2009_1

2009_1 「繋がる風景Ⅰ-海と山-」  
166×150×130cm  ベニヤ合板 
2009年





2009_2

2009_2 「繋がる風景Ⅱ-山と川-」  
130×90×85cm   伊達冠石  
2009年





2011_2
2011_2 「あらわれた風景-隆起-」  
45×45×60cm    朴     
2011年





2012_1
2012_1 「羽化」           
17×8×3cm    大理石   
2012年






2012_2
2012_2 「今日も宇宙とつながっている」
11×11×8cm    大理石   
2012年





2012_4
2012_4 「境界線のその先に」     
55×55×25cm   大理石   
2012年






2013-1
2013_1 「時をむかえ、時をおくる」  
50×280×350cm  大理石   
2014年







2013_2
2013_2 「この先の丘で」       
50×20×15cm   大理石   
2013年





2015
2015  「明日を待つ」        
40×87×87cm   大理石   
2015年



日下
有馬さんは作品を発表するときに社会を意識することはありますか。


有馬寛子さん
そうですね。社会との接点というと、制作以外に今年やったこととしては、茨城の取手という
ところで展示をしました。普通の民家を改造したところで、普段生活する場所に彫刻作品を置く
ということをしました。

あとは3月の展示があるんですけれども、表参道の普通の美容室の中に作品を置くという
展示の計画をしていて。
あと、ホワイトキューブとか美術館とかじゃない場所での作品発表が最近は多いです。
そこで考えていける作品の形もあるかなと思っています。


日下
はい。


有馬寛子さん
自分の中では生活と密着しているつもりでも、そうではない印象も持たれているのかなと
思うので、何か日常生活の中で、行為とか習慣みたいなものがわかるような、表現できる
ような展示の仕方だったり、制作に向かう考え方だったり、作品自体、作品のコンセプト
みたいなところも最近は考えています。


日下
ありがとうございます。
有馬さんは、博士論文のお話 にも関わるかもしれないですが、お仕事で秋田公立美術大学の
美術教育センターにいらっしゃいますね。
その点で何か感じること、思うことはありますでしょうか。


有馬寛子さん

基本的には美術教育センターの仕事は学生が教員免許をとるための課程なので、実際に
学校現場に行って美術の授業を見学させてもらって、美術の先生になったらどういう指導の
仕方をしていくかを学生と一緒に考えながらやっています。

学校教育の中で美術の関わりを考える場所として、機会を与えるためにどう伝え、どう表現の
種目だったり発見することの意味みたいなのを考えていける場所でありますね。


日下
私自身は教員にはなりませんでしたが美術を教える、伝えるというのも難しそうですよね。 


有馬寛子さん
どうしても、美術はすべて教えられない部分も確実にあるので、生徒が主体的に美術、表現
活動に取り組んでいけるためにどういう風なサポート、指導をしていったらいいかなというのが
課題だと思うんですけれども。


日下
そうですか。ありがとうございます。
さて、今後の作品発表の予定をお伺いします。例年は国画会の展覧会とグループ展をされているそうですね。


有馬寛子さん
はい。その二つとほぼ毎年、岩手のチャリティ展に出品しています。


日下
それは震災のためのチャリティ展でしょうか。


有馬寛子さん
もともとは震災前からの展覧会で、震災関連ではなくユニセフに寄付をする展示でしたが、
震災後は震災のチャリティ展っていうふうに変わったんです。


日下
ありがとうございます。
では、リレー作家の紹介をお願いします。


有馬寛子さん
版画作家の神山歩さんを紹介したいと思います。


日下
ありがとうございます。
では最後に「あなたにとってアートとは?」ということをお伺いします。


有馬寛子さん
とても大きなテーマですね。

私にとってのアートとは、日常の中からふっとわき上がる視点や物事のとらえ方をもう一度
考え直すきっかけを与えるものだと考えています。もちろん言葉だけでも多様な視点を考える
きっかけにはなると思うんですが、ものとしてみせることで、その場としての空間を共有する
ことができるし、みて、さわって感じたことから自分の日常の見え方が変わっていく。

それは制作者としても、自分以外の作家の作品を見たときの鑑賞者としての立場である時も
同じような意識でいます。

去年までは足場作りというか、土をならすようなイメージだったんですけれども、ちょっと土台を
作り たいなあと思いました。


日下
有馬さんは博士課程まで年数も長く、かなり深く勉強されていてすごいですね。


有馬寛子さん
まあ、でも、芸大の博士課程は、他の博士課程とは違うので。
もうちょっと頭がよかったら、修士で終わってもよかったんですけれども、修士だけではわから
なかったので。

自分の研究のスピードが、他の人より遅いというのもあり、もうちょっとじっくり考えたいな
というのもあったので博士まで行くことになりました。


日下
そうでしたか~。


有馬寛子さん
学部の4年間は教育学部だったので、芸大に入っても自分の中で学部1年生からの気持ちで
もう一回、表現者として学びをやり直すみたいな感じでやっていましたので、学歴としては博士まで行きましたが、自分の中では学部4年間プラス1年やったみたいな、それくらいのフレッシュ感が、自分の中ではあります。


日下
というと、芸大に行ってからは5年ということでしょうか。


有馬寛子さん
そうです。5年かかって、親の脛を齧りつくして。


日下
いえいえ、でも奨学金も複数受けられて素晴らしいですね。


有馬寛子さん
私は岩手では内陸でしたが実家は被災していて、その関係で奨学金をもらえたんです。
そういう縁があってたまたま運が良かったんです。
その震災の年の他の人たちは、医学系とか薬学系とかの人たちが採用されていたので、
すぐには身にならないような研究をやっている私を拾ってもらったっていうのは何かの縁かなと
思っています。


日下
素晴らしいです。
有馬さんは今後、作家と教育の両方向でいかれる感じでしょうか。


有馬寛子さん
そうですね。もともとは先生になりたくて教育学部に行きましたが、美術の先生になるためには
作家にまずならなきゃダメだな、って気づいて。
そして芸大に行って表現者ってなんだろう、作家ってなんだろうって考えたうえで、一昨年に一年間学校の先生をしてみて、やっぱりそういう社会の接点は必要だなと思いました。

単純に、作業をしたり新しい発見をしたりする生徒の姿が間近で見えるので、それは面白いなと思って。子どもが自分の納得のいく表現ができたときに、とても良い顔をするなと感じて。それを
見続けられる職業っていいなと。
そういう立場の中で制作を続けていくのも面白いかなと思っています。


日下

素晴らしいね。素敵です。


有馬寛子さん
まあ、でも今仕事をしているのは美大で、教育に対して作家の中には二足のわらじを履くのを
よく思わない人も中にはいたりするんですけれども、そこをうまく溶かしていくのも自分の仕事
なのかな、とは思っています。
難しいところだし、それが作品を見たり買ったりする動きに最終的にはなっていくと思うので。


日下
素晴らしいですね。
今回は素晴らしいお話をたくさんお聞かせいただきましてありがとうございました。




2014
2014  「ときをひらくために」    
15×15×17cm   大理石   
2014年


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編集後記

昨年2015年8月20日~09月17日に全5回で掲載した彫刻家 菅原 睦さんのご紹介により、
今回初めて有馬寛子さんにお話をお伺いしました。
私は芸術大学の博士課程まで学ばれたアーティストには初めてお話をお伺いしましたが、
とてもしっかりと丁寧に思索して制作をされている様子が感じられて、また作品もとても美しく
て感動しました。

有馬さんは博士論文で「東北の地域性に即した生活綴方の教育運動である北方性教育運動と、
それを基盤として戦後発展した生活版画教育運動を通して、東北という場に根づく精神性を基盤
として生まれる表現とは何かを考察した」内容のものを描かれていますが、着眼点がご自身の
制作の実感から生まれているところがとても素晴らしいと感じました。

若手女性彫刻家として、これからの像作活動にとても期待しております。

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◆ 有馬寛子さんが掲載されているWEB

◇2009年 第83回国画会彫刻部奨励賞 
 有馬寛子さんのページ

◇有馬寛子さんの博士論文サマリー(要約)
 

◆ 有馬寛子さんが出品される展覧会
 ◇国展 
 ・2016年4月27日(水)より5月9日(月)まで。(休館日なし)
・会場=六本木 国立新美術館  
・主催 =国画会  

 ◇青山表参道の美容室の展示
  2016年3月6日~5月7日GIRLS BRAVO!! NORA Journey×拝借景/東京NORA Journey
  NORA Journey HP  
  拝借景HP

 ◇岩手のチャリティ展
  けやきチャリティ小品展
  12月予定 岩手県花巻市東和町

◆有馬寛子さんがご勤務されている秋田公立美術大学  とその美術教育センター


◆ 有馬寛子さんの略歴 
○略歴
1985年 岩手県生まれ
2009年 岩手大学教育学部芸術文化課程造形コース美術専修卒業
2011年 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程芸術学専攻美術教育領域修了
2014年 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻修了
2015年~ 秋田公立美術大学美術教育センター勤務

2006年 第33回彫刻シンポジウム参加(~第36回)/岩手県盛岡市 ギャラリー彩園子
2007年 第5回つくる展/岩手県 岩手県民会館
2008年 第82回国画会彫刻部入選(~第84回) /東京 国立新美術館
2009年 平成20年度岩手大学美術講座賞受賞
2009年 岩手大学芸術文化課程美術コース卒業制作展/岩手県 岩手県民会館
2009年 第83回国画会彫刻部奨励賞/東京 国立新美術館
2010年 藤野賞(藤野基金)
2011年 東京藝術大学卒業・修了作品展/東京 東京藝術大学美術館
2011年 国画会彫刻部受賞作家展/東京 ギャラリーせいほう
2011年 けやきチャリティ小品展(~2015年)/岩手県花巻市 けやきラウンジ
2012年 BAMAアートフェア/韓国釜山 ヘウンデセントラルホテル
2012年 希望のための美しきモノローグたち展/東京 銀座アートホール
2013年 東京藝術大学博士審査展/東京 東京藝術大学美術館
2014年 half point-6人の現在点-/岩手県盛岡市 旧石井県令邸
2014年 第88回国画会彫刻部新人賞(準会員推挙)/東京 国立新美術館
2015年 GIRLS BRAVO!! NORA Journey×拝借景/茨城県取手市 拝借景
2015年 デコ借景/茨城県取手市 拝借景

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★☆ アーカイブス ☆★

学び場美術館登場作家リスト

学び場美術館登場作家リストⅡ  

学び場美術館 登場作家リストⅢー2014
学び場美術館 登場作家リストⅣー2015・2016





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