彫刻家 片桐 宏典さん 第3回 ~芸術家の共働制作で「宇宙」を表現しました~ | 幸せな人が集まる会社 株式会社みんなの学び場 公式ブログ

彫刻家 片桐 宏典さん 第3回 ~芸術家の共働制作で「宇宙」を表現しました~

彫刻家 片桐 宏典さん 第3回 ~芸術家の共働制作で「宇宙」を表現しました~

みなさま こんにちは。

彫刻工房くさか 日下育子です。


今日は素敵な作家をご紹介いたします。

彫刻家の片桐 宏典さんです。




片桐 宏典さん
ケイト・トムソンさん
お二人とも彫刻家であり、ご夫妻でもいらっしゃいます。



前回の日下育子からのリレーでご登場頂きます。
     
第1回  第2回  第3回  第4回  第5回  




片桐 宏典さん  

    第1回 ~三陸のリアス海岸が原風景にあります~ 

           第1回続き 略歴のご紹介

    第2回目  ~彫刻でコミュニティーと関わってきました~ 



第3回の今日は、片桐 宏典さんの母校でもある仙台第一高等学校(以下、仙台一高)に
設置された石彫モニュメントについてお届けします。


「宇宙」を表現されているということと、

それを優れた芸術家の共働制作で創られたという実践をお聴かせ頂きました。

環境彫刻に共働制作で取り組む、非常に高レベルの実践をご紹介いただきます。


どうぞお楽しみ頂ければ幸いです。


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「コスモス」

1.[ビックバン広場」 モノリス




「コスモス」

1.[ビックバン広場」





「コスモス」

1.[ビックバン広場」





「コスモス」

2.「現在の時空広場」




「コスモス」

2.「現在の時空広場」




「コスモス」

2.「現在の時空広場」


デザイン及び制作
片桐宏典、ケイト・トムソン、用澤修、吉田昇、ルボミア・ヤネチカ、、
アンディー・アルプ、岩村俊秀、清本真右、坪井常男

岩手産白御影石
本体寸法  6200cmH 2. 50mx35m
宮城県仙台市若林区元茶畑  宮城県仙台第一高等学校内
デザインから制作まで全て芸術家の協同制作によるプロジェクト
1993






 「コアピース 1」

 鋳鉄

 .「現在の時空広場」





 「コアピース 2」
 鋳鉄

 .「現在の時空広場」



 


「ブラックストーン」

.「現在の時空広場」




● 参考写真



「モノリス原石」

岩手県玉山村姫神山麓菊池石材採石場にて




 「作業風景:ビッグバン広場」 





「現在の時空広場』図面






 「ビッグバン広場」図面


(上記7点モノクロ写真、及び図面は

 『宮城県仙台第一高等学校 石彫モニュメント』

 記録集より引用させて頂きました)





   


日下
片桐さんの制作は、個人の作品の質の高さは勿論ですが
ケイトさんと共に常に大きなプロジェクトを、コラボレーションで行なっていらっしゃいます。
そのあたりのことをお聴かせいただけますでしょうか。



片桐 宏典さん
コラボレーション(共働制作)って大変ですが、やっぱり面白い。


でも、シンポジウムで何人かの彫刻家たちと一緒に遊び場を作ろうとすると、
面白いアイデアはいっぱい出るんだけど、まず時間が足りない、
シンポジウムって大体長くても2カ月ですよね。
結局、これしか出来なかった・・・、という苦い思いがいつもあって。


なので、一度は思いっきり納得のいくコラボレーションをしてみたいと思っていました。
そうしたらちょうど仙台一高で創立百周年モニュメント制作の話があったのです。


私一人でも出来たんですが、これは理想的なコラボレーションをするのにいい機会かなと思って、
他の作家たちに声をかけました。


仙台一高プロジェクトの場合は、とにかく時間をかけて、
完成までの間に3回、三期に分けて作家に来てもらいました。


一期目がプランニング、2週間ほどプランとドローイングをまとめてプレゼンしました。
二期目に岩手のうちのスタジオで共同生活しながら制作開始。
3ヶ月ほどかけて制作し、全部一度組み立ててみました。
そして、三期目で仙台一高に持っていき、そこでまたディテールを調整して完成させたんです。
私の持っていたノウハウをすべてつぎ込んで、まあ、コラボレーションとしてはベストかなと。
でも、予算には限界があるので、大幅に赤字になってしまいました。



日下

片桐さんが他の作家たちにも声をかけられたというのは、素晴しいですね!

それに、作品が本当にすごいですよね!

あんなに巨大で素晴しい彫刻がある学校って無いですよね!?
こういう作品がある学校で学ぶ学生ってすごいなぁ~と。



片桐 宏典さん
でも、生徒に言われましたよ、
「あれ、いつ完成するんですか?」って。(笑)
先生に言わせると、「一高の生徒には猿山が丁度良いだろう」って(笑)
猿山、ですからね。(笑)



日下
そうですか?



片桐 宏典さん
かたちが猿山じゃない?あれって。
でも、あのプロジェクトは大変だったね。すごい痩せましたよね。



日下
仙台一高の石彫モニュメントはPACT PROJRCT(パクト プロジェクト)という

独自のスタイルの共働制作プロジェクトだったのですね。

タイトルが「COSMOS 宇宙」なんですか?



片桐 宏典さん
そうです。この作品は、混沌たる超絶対的なエネルギーを孕む、
「宇宙の空間と時間」をテーマにしています。それを科学的な説明ではない、
美術的な表現によって、建築的なスケールで空間全体と響き合う、我々の
感じている「宇宙」の姿を作りだすことにあります。


ビッグ・バンを象徴する「モノリス」を中心として、そこからのビック・クランチに至るであろう
宇宙の時間的、空間的進化を表現しています。


学校の空間を「宇宙」と捉え、新校舎の環境空間のなかに織り交ぜながら、
岩手県で採れた姫神山産の白御影石と遠野産の黒御影石を総重量約200トンと
ふんだんに使いました。


モニュメントを構築する様々な石の表情を通じて、自分たちの世界のはるかかなた、
絶対的宇宙の存在を肌にひりひりと感じて欲しいと思っています。


この作品は、鑑賞者が「作品」の内部に入り込んで体験する、
空間全体を一つの芸術作品とする環境的彫刻なのです。



日下
本当に素晴らしいですね。
私も仙台一高に実際に見に行ったことがありますが、表現されている内容も含めて
本当にこれほどの規模の彫刻作品を創られたことに感動しました。
実際にその作品の中に入って見ると、本当に「宇宙」だと感じます。


特に「モノリス」のピースは巨大ですね。
校舎の3階まで届きそうな高さですね。
何メートルぐらいあるのでしょうか。



片桐 宏典さん
7メートルあります。
「モノリス」は割った石をまた元のように積み上げ直す、「割り戻し」という技法で作られています。
下が小さなブロックで上に行くに従って大きくなり、ビックバンのエネルギーの拡散を象徴しています。

岩手県の姫神山の石切り場で見つけた原石は、長さ10m、重さ200トン以上ありました。

それを割って運び出し、真ん中のいいところだけ、一高に再現したのです。

それでも60トンぐらいはあるでしょう。


また、石を割る際に、昔の石割りに使われたトビヤという道具を再現してそれで割っています。

昔は木製でしたが、今回使ったのは巾10センチほどの鋼鉄製です。特注品です。

これは用澤さんのアイディアとテクニックです。


また、石組みや床面に使われた黒御影石は、遠野の知り合いの山から、

大型トラック5台と45トンクレーンを持っていって一週間かけて特別に運び出したものです。

これを工場に入れて板状に切削して元の玉石の形のまま、乱張りとして使っています。


「モノリス」は岩手町のアトリエで何度か仮組してみてから、本設置しました。



日下

本当にものすごい規模のお仕事ですね~!(感動!)


ところでこの制作は
PACT PROJRCT(パクト プロジェクト)という独自のスタイルの
共働制作プロジェクトだったそうですが、これはどのようなものだったのでしょうか。



片桐 宏典さん
公共芸術共働制作チームの英訳でPubulic Art  Collaboration Team
(パブリックアート コラボレーション チーム)の略称です。
個性的な彫刻家の集団が中心となり、構想・設計・制作までの全てのプロセスを
チームとして共働作業することにより、パブリックな場所でのダイナミックな環境性芸術を
実現するシステムです。



日下
私自身は、共働制作の経験は無いのですが
複数のアーティストで創作する時、お一人での制作とは違う
ブレークスルーが発生するかどうかなど、素晴らしい点を教えていただけますでしょうか。



片桐 宏典さん
ケイトとも、浜松の作品「Watch the Moon Come Down」、南郷図書館の「七つの旅」を、
二人でアイディアから制作までコラボレーションしています。
コラボレーションは、一人では思いつかないような発想やアイディアの展開が早くて、
意外な面白さ、可能性があるんです。


芸術家の共働制作は、これまでのアトリエでの孤独な制作が
数々の偉大な芸術を生み出してきた彫刻家のライフスタイルを、
なんら否定するものではありません。


芸術では個人の「自由な表現」が、共働制作を困難にしているといいます。
ですが、制約の多き公共空間だからこそ、その不自由さを新たな展開をもたらす
可能性の基盤に転化し得るのです。


注意深く構成された芸術家のチームが、いくつかの最初のハードルさえうまく乗り越えられれば、
後は、お互いの芸術的独自性をぶつけ合う中で、互いに啓発し合える最高のチームとして、
個人の感性や美意識をうまく引き出すダイナミズムがグループに自然に発生します。
さらに、制作を進めるためのより斬新な展開と発見が引き出されることになります。


そういった確信のもとに、これまで世界各地で既にさまざまなプロジェクトが
行われていて、僕が参加したものでも、オーストリア・リンダブルンの彫刻シンポジウム(※)
日本では1979年諏訪湖(※)で、また、1981年に萩市(※)で彫刻家24名により郊外彫刻公園を共働制作の
シンポジウムで行った例があります。


 ※オーストリア・リンダブルンの彫刻シンポジウム

 ※諏訪湖国際彫刻シンポジウム ・萩国際彫刻シンポジウム(1981年)
  ⇒ Ukishima.Net    ⇒(僕の参加した時代(1978年~2000年まで)参照)                 

 ※ 諏訪市パノラマツアー 石彫公園    

 ※ 萩市観光協会ホームページ




日下
公立の高校にこれだけの巨大な環境彫刻が設置されるというのも本当に素晴らしいことで、
同時に希有なことだと思います。



片桐 宏典さん
今回のモニュメント制作事業において、立体構造物と床面とが一つの芸術作品と
認められて発注されたことは称賛に値しますし、非常な英断として行政的に
高く評価されるべきことだったと思います。


なぜなら、こういった公共建築に置いて、空間全体を一つの芸術作品とする表現の
あり方が、今回に至って新たな市民権を得たということなのですから。



日下
そうですか~。(感動!)
本当にこういう作品が仙台にあるということは、市民として誇りに感じます。
素晴らしいお話をありがとうございました。





「Watch the Moon Come Down」、
(月が舞い降りるのを見よ)

デザイン及び制作
(片桐宏典+ケイト・トムソン:共働製作)
岩手県産白御影石
400x35x270cmH, 150x90x35cmH
メモ
ゆりの木通りに計5点の作品が設置。
そのうちのひとつで二人の共働制作作品。
月の緩やかな運行をモチーフに
幾何学的なムーブメントで優雅さを表現。
所在地
静岡県浜松市旧国道一号線ウォッチマン前






七つの旅1



七つの旅2

 南郷プロジェクト
「七つの旅」
青森県八戸市南郷区図書館
(片桐宏典+ケイト・トムソン:共働製作)
 2004

メモ

この作品は、人間の知的好奇心と柔らかな精神が、
世界に広がる文化的多様性と叡智に触れる驚きと
喜びから生まれる「知的果実」を求めて、
理想と現実世界を駆け抜ける精神の旅を象徴しています。



※ 今回はコラボレーションということでお話をお伺いしてきました。

  文章中、及び作品写真の中で「共働制作」と表記のあるものがあります。

  この「共働制作」について、他の「共同」、「協同」との違いを片桐 宏典さんにお伺いしました。


片桐 宏典さん 

*「共働制作」としたのは、単にモノをデザインする段階の「共同制作」だけではなく、

 完成までを一緒に考えながら、一緒に作業、労働して進めていくことを強調したかったのです。

 デザインが出来れば、あとはそれを作るだけ、ではなく、

 作っていく過程においても、常にデザインが修正されていく可能性があるので、

 素材と向き合う作業過程もとても大切なのです。

 また、ディテールの中にこそ互いの個性と感性が反映されなければなりません。







"覚醒する風景-惑星風"
スウェーデン産黒御影石
41 x 15 x 68 cm high
2012



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編集後記

私が片桐 宏典さん、ケイト・トムソンさんに初めてお会いしたのは、
私が大学の副手1年目の冬に、お二人の住む岩手県岩手町にある㈲浮島彫刻スタジオを
訪問した時でした。 大自然の広いスタジオに姫神産の巨大な原石が置いてあり
「大学の石彫場とはスケールが違う!」と感動したのを覚えています。


片桐 宏典さんは私が学生の頃から、

「宮城教育大学の在学中から、そのままヨーロッパに渡って彫刻家になっている方」として

有名な存在の方でした。
今現在は、1年の半分ずつをイギリスと日本で行き来しながらの活動をされているそうです。


今回は複数の芸術家の共働制作プロジェクトで環境彫刻に取り組まれた事例をお話頂きました。
その参加作家のお一人である、ルボミア・ヤネチカさんとは、

私も岩手町の彫刻シンポジウムでご一緒させて頂いたのですが、本当に質の高い芸術家の方でした。


これだけの環境彫刻を創り上げるのには、片桐 宏典さん、ケイト・トムソンさんの強力な
調整力があってのことだろうと想像します。


次回は、アートという仕事をプロフェッショナルにやることについてのお話をお届けいたします。

どうぞお楽しみに。


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◆片桐 宏典さん、ケイト・トムソンさんのホームページ
 浮島彫刻スタジオ 



スターリング大学(イギリス)での展示
 片桐 宏典さんの紹介ページ 

 スターリング大学 Corridor of Dreams 「夢の回廊」 インタビュー動画)

 (全23分中、お二人と作品が映るのは11:30~15:30頃です。)




◆開催中の展覧会です。
 「As Ithers See Us」
【期間】2014年3月11日(金)~9月末日まで
【時間】11:00~21:00
【料金】有料
【場所】Pobert Burns Birthplace Museum, Murdoch's Lone, Alloway, Ayr KA7 4PQ, UK
tel 0844 493 2601 email
burns@nts.org.uk

http://www.burnsmuseum.org.uk/




日本・石の野外彫刻―ストーンアート写真集
  藤田観龍 著(写真)  本の泉社
 

 片桐 宏典さんの作品写真と手記「石彫というジャンル」(318ページ)
 ケイト トムソンさんの作品写真が掲載されています。



彫刻家 片桐 宏典さん 第1回続き 略歴のご紹介






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