彫刻家 片桐 宏典さん(再放送) 第6回 ~制作テーマ②サウンドインスタレーションについて~  | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

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生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

みなさま こんにちは。

彫刻工房くさか 日下育子です。

 

今日は素敵な作家をご紹介いたします。

彫刻家の片桐 宏典さんです。

 



片桐 宏典さん
ケイト・トムソンさん
お二人とも彫刻家であり、ご夫妻でもいらっしゃいます。

以下、2017年7月の再放送でお届けします。


前回の日下育子からのリレーでご登場頂きます。
     
第1回  第2回  第3回  第4回  第5回  


 

片桐 宏典さん  

    第1回 ~三陸のリアス海岸が原風景にあります~ 

           第1回続き 略歴のご紹介

    第2回  ~彫刻でコミュニティーと関わってきました~ 

    第3回  ~芸術家の共働制作で「宇宙」を表現しました~

    第4回  ~アートをプロフェッショナルにやっています~

    第5回目  ~制作テーマ①  ストリームラインのシリーズについて~

 

第6回の今日は、片桐さんの制作テーマの一つから、サウンドインスタレーションについて
お話をおうかがいしました。

私は彫刻というと目で見るかたちだけを想像してしまうのですが
片桐さん、ケイトさんによるとサラウンドで聴くサウンドインスタレーションというのは
立体的、時間的、空間的な表現なのだそうです。

どうぞお楽しみ頂ければ幸いです。


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サウンド

サウンドインスタレーション 

「敗北を抱きしめて」
7ch オーディア作品 27分
2005

(会場風景)


現実的意識にないがしろにされた

「(現実的意識にないがしろにされた)ある不確かな響鳴を求めて覚醒する風景」
宮城県産玄武岩
幅12x厚7x高50cm
2003



 


「覚醒する風景ー分水嶺」」
スウェーデン産黒御影石
45x5x60cmH
2008




 


「黒い女のソネット」

「黒い女のソネット」
スウェーデン産黒御影石
8x8x35cm
2007





 


眠る心臓07ー05

"眠る心臓 2007-05"
宮城県産玄武岩
35x9x40cmH
2007

 

 


 

「望郷」
宮城県産玄武岩
幅90x厚17x高18cm
2004



 


 




七つの旅1

 


七つの旅2

 南郷プロジェクト
「七つの旅」
青森県八戸市南郷区図書館
(片桐宏典+ケイト・トムソン:共働製作)
 2004

メモ

この作品は、人間の知的好奇心と柔らかな精神が、
世界に広がる文化的多様性と叡智に触れる驚きと
喜びから生まれる「知的果実」を求めて、
理想と現実世界を駆け抜ける精神の旅を象徴しています。

 

 

 


ウオーターマーク

「ウォーター・マーク ~北上川の四季」
スウェーデン黒、岩手産白花崗岩
本体寸法   700x700x800cmH
いわて沼宮内アートロード計画 「シンボル・モニュメント」
岩手県岩手町いわて沼宮内駅前
2003





覚醒する風景2011

"覚醒する風景ー邂逅"
インド産黒御影石
50 x33 x 330cmH
2011


 


 

日下
大分以前ですが、片桐さんの海を題材にした映像作品を拝見したことがあります。
その時に、「実験、何でも実験」と仰っていた言葉が作品と共に印象に残っています。


 

片桐 宏典さん
僕は前にも話しましたが、学生の頃はホログラフィーをやっていたし、
最近は映像もちょっとやったりとか、 いろいろ手を出しています。(※ 第1回インタビュー参照

 

でも、映像はいまみんなやっているから、あんまりね。

 

今は、サウンド・インスタレーションが面白くて取り組んでいます。
来年の春に盛岡の展覧会に出すつもりです。

 


日下
片桐さんがなさっているサウンド・インスタレーションというのは、どのようなものでしょうか。


 

片桐 宏典さん
まあ、簡単に言えば、音を使った作品。ディスコみたいな。(笑)
でも一番最初の作品は公会堂アートショウ2005 でやりました。
 
    

 

公会堂アートショウ2005 というのは、取り壊し予定だった文化財の岩手県公会堂(※)を
なんとか保存して残していきましょうという運動をしていて、その保存はなんとか決まったんだけど、
せっかく残すんだから、みんなで一生懸命使うようにというお達しが来たんです。
当時はガラガラでしたからね。
でも今は、逆に予約で一杯になってるみたい、おかげさまで。

  

  ※岩手県公会堂【登録有形文化財】

 

僕も関係者から「アートで何かできない?」って言われていたんです。
公会堂には、会議室などの大部屋小部屋が一杯あるから、
それを全館使ってのビエンナーレを提案しました。

公会堂は保存が決まってから、壁にクギも打てない。
でも、自然光も入るし、インスタレーション作品には最高だった訳です。

 

それに、公会堂の部屋は古いせいか、変に話し声とか音が響いてうるさいんです。

 

僕は、音が響くから逆に面白いんじゃないかと思って、
「誰かサウンドインスタレーションやらない?」って言ったんだけど、誰もやらない。
しょうがないから「じゃあ私が。」というので機材を買ってそろえて、
サウンドを使った作品に挑戦した訳です。
今はコンピューターで簡単に出来るからね。

 

公会堂というのは、天皇の成婚記念で建てられた建物だったので
天皇をテーマにして、終戦の玉音放送をアジア占領国の7カ国語に翻訳し


それを交響曲風にアレンジして30分の作品にしたのが
最初のサウンド・インスタレーション「敗北を抱きしめて」でした。


 

日下
それは素晴らしいアイデアですね!!
その作品は今も聴くことができるものなのでしょうか。

 


片桐 宏典さん
いやー、ちょっと難しいかな。
それは45チャンネルのプログラムで、
マックにつないだ音響機械を通してスピ-カーから音を出します。
今、整理して5.1チャンネルのサラウンドに置き換えようとしているんだけど
僕はプロじゃないからちょっといろいろ面倒臭くて。
それを今度ゆっくり作業して、CDに焼こうかなと思ってます。

 


ケイト・トムソンさん
サウンドも立体的、空間的だから。

 


片桐 宏典さん
そう、だからすごく面白いの。


 

ケイト・トムソンさん
でもやっぱり、彫刻のワン・ショットの写真と同じで、
CDではサウンドのいいところが少しだけしか出ないんじゃない?
サウンド・インスタレーションは空間と時間の両方のパフォーマンスだから
CDにするとすごく薄くなるんでは・・・。

 


片桐 宏典さん
いや、ちゃんとできる。
この作品は、スピーカーを12個使って真ん中に座って聴くものなんですよ。
で、音があちこちぐるぐる動きまわる、まさにサラウンドなんです。
だから5.1チャンネルのサラウンドCDにすればいいわけで、
理屈としては簡単なんだけど、ただ、トラックをまとめていくのが面倒臭いんですよ。

 

いずれにしても、われながら、けっこう面白い作品だと思います。

 


ケイト・トムソンさん
大変面白かったよ。

 


片桐 宏典さん
2つ目のサウンド・インスタレーション作品、
「コーカイドー・ゴーストマシーン」は、インタラクティブ作品です。
部屋の真ん中にマイクがあって、そのまわりにスピーカーが8個あって
マイクに向かって喋ると、自分の声が5段階に分けてリピートされるわけ。
5秒後、10秒後、30秒後、1分後、5分後かな。

 

マイクに向かって喋った自分の声があとから聴こえてくるんですよ。
自分が喋るときに、前の人の声が突然聴こえてエコーして来たりして。


3つ目の作品は「セブンス・ウエイブ(第七の波)」。
県令邸 (※)で発表したこの作品は、東日本大震災直後だったので海をテーマにしました。
三陸海岸に行って録音してきた波、風、鳥などの音を組み合わせて、
15分程度の作品にしました。

 

サウンド・インスタレーションって、録音した音源をいろいろ組み合わせながら編集していくので

すごい時間かかるの。
高価な機材もいるし結構大変ですね。

 

でもやっぱり、いま興味があるのはこのサウンドです。サウンドってすごく彫刻的なのね。
純粋に空間をマーキングするにはサウンドが一番良いかもしれない。

 

 県令邸 ⇒ 旧石井県令邸へようこそ!

  

 

日下
意外ですし、とても新鮮なお話です!(感動!)

 


片桐 宏典さん
サウンド・インスタレーションをやっている人も結構ポチポチいるんだけど、
一番多いのはサウンド・ハンティングしてあちこちの音を、
ただ並べただけというのも多いですね。
でも表現としての可能性は無限なので、もっとやってみたいなと思っています。

 

 

日下
そうですか~。
とっても素晴らしいお話をありがとうございました。




 


シンフォニア

「シンフォニア(交響曲)」
岩手産白花崗岩、クリ
450x180x900cmH
岩手県二戸郡奥中山いわて子供の森
県営テーマパーク施設のシンボル・モニュメント
2002


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編集後記

 私が片桐 宏典さん、ケイト トムソンさんに初めてお会いしたのは、
私が大学の副手1年目の冬に、お二人の住む岩手県岩手町にある㈲浮島彫刻スタジオを
訪問した時でした。 大自然の中の広いスタジオに姫神産の巨大な原石が置いてあり
「大学の石彫場とはスケールが違う!」と感動したのを覚えています。

 

 片桐 宏典さんは私が学生の頃から、「宮城教育大学の在学中から、そのままヨーロッパに渡って
彫刻家になっている方」として有名な存在の方でした。
今現在は、1年の半分ずつをイギリスと日本で行き来しながらの活動をされているそうです。

 

 今回は片桐宏典さんの制作テーマの一つ、サウンド・インスタレーションについて
お話をお聴かせ頂きました。

 片桐さんは「サウンドは、すごく彫刻的。」「純粋に空間をマーキングするにはサウンドが一番良い・・・。」
と仰っていましたが、確かにそうかもしれないとも思いました。


私は彫刻というと目で見る(あるいは手で触る)、視覚、触覚の芸術だと思ってきましたが
確かに聴覚でも空間の距離感など感じられそうだなぁ、と改めて思いました。


今度はぜひ、実際に片桐さんの作品で、それを体感したみたいと思いました。

 

 次回は、片桐 宏典さんの制作素材と 制作の想いについてお話をお聴かせ頂きます。


どうぞお楽しみに。


 

浮島彫刻スタジオ 片桐 宏典さんとケイト・トムソンさん

岩手県岩手郡岩手町浮島

 

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◆片桐 宏典さん、ケイト・トムソンさんのホームページ
 浮島彫刻スタジオ 

 

 

 

スターリング大学(イギリス)での展示
 片桐 宏典さんの紹介ページ 

 スターリング大学 Corridor of Dreams 「夢の回廊」 インタビュー動画)

 (全23分中、お二人と作品が映るのは11:30~15:30頃です。)

 

 スターリング大学 アートコレクション 片桐 宏典さんの紹介ページ 

 スターリング大学のFacebook ⇒Art Collection at the University of Stirling

 

                        ⇒片桐 宏典さん、ケイト・トムソンさんの作品写真


 

 

◆近日開催の展覧会です。
 

IMAGINATIVE LANDSCAPE 3人展
「片桐宏典+ケイト・トムソン+上門周二」

− 「風景」をテーマにした彫刻とドローイングによる三人展 ー

会期:2016年11月24日(木)〜29日(火)
会場:プロモ・アルテ・プロジェクト・ギャラリー
時間:11:00〜19:00 (最終日のみ17時終了)/会期中無休
      プロモ・アルテへのアクセスはこちら:http://www.promo-arte.com/galeria2/map_images/galeria_ArtsMap.htm
   
   プロモ・アルテギャラリー
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5丁目51-3ガレリア2F
Tel. 03-3400-1995  Fax.03-3400-9526
info@promo-arte.com
www.promo-arte.com

 

片桐宏典
「環境と造形芸術」をテーマにヨーロッパと日本を中心に普遍的な造形を目指す作家活動はもとより、国際彫刻シンポジウム運動による公共空間での実験的なアーティスト同士の恊働制作プロジェロトや地域性と連携した様々な特色あるアートイベントの企画運営を次々と手がけている。浮島彫刻スタジオを日本1991と英国2014にケイト・トムソンと共に設立。シンプルな抽象的構成の黒御影石や玄武岩による作品。

 

ケイト・トムソン
ケルト文様や神話をモティーフとした大理石の抽象的彫刻を中心に手がける。代表的な作品として駐日英国大使館、大手町ファイナンシャルシティ、グラスゴー・ゴーブルズ・オートランド地区再開発事業モニュメントなどがある。グラスゴー・スカルプチャー・スタジオ共同設立1986、UK98アートフェスティバル1998企画運営などスコットランドと日本を中心に世界各地でアートプロジェロトを広く手がけている。

 

上門周二
鹿児島県種子島生まれ。春は森でヤマモモと野いちご捕り、夏は珊瑚礁の海で魚たちと戯れ、川エビ捕りに勤しみ、冬はサトウキビ畑で収穫を手伝い、強烈な自然体験と原風景を胸に東京へ出る。1985年株式会社アネトス地域計画を設立しランドスケープ・アーキテクトとして独立。自然と人間との共生をテーマにランドスケープ・コンサルティング及び設計に関わり、日本及び東アジアを中心に世界各地のプロジェロトを手がけている。今回「Creative Landscape」をテーマとしたドローイング作品を初めて発表する。

 

 

 

 

日本・石の野外彫刻―ストーンアート写真集
  藤田観龍 著(写真)  本の泉社

 

 片桐 宏典さんの作品写真と手記「石彫というジャンル」(318ページ)
 ケイト トムソンさんの作品写真が掲載されています。


 

彫刻家 片桐 宏典さん 第1回続き 略歴のご紹介

 

 

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★☆ アーカイブス ☆★


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学び場美術館登場作家リストⅡ
学び場美術館 登場作家リスト Ⅲ ー2014

 


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