彫刻家 渡辺 知平さん (再放送) 第4回 ~水の表現と, 想い出の表現と~  | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

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生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

彫刻家 渡辺 知平さん (再放送) 第4回 ~水の表現と, 想い出の表現と~ 

みなさま こんにちは。

彫刻工房くさか 日下育子です。


今日は素敵な作家をご紹介いたします。

彫刻家の渡辺 知平さんです。



渡辺 知平さん



前回登場の杉 英行さんからのリレーでご登場頂きます。

  彫刻家 杉 英行さん 第1回  手記 
 第2回   第3回   第4回   第5回  

渡辺 知平さん

第1回   ~ 自分のものを作れるようになった頃  ~ 

第2回   ~子供の頃、眠るのが怖かったことと、温室体験 ~ 
第3回   ~過去と僕が出会う場所を想いながら  ~ 



第4回の今日は、渡辺 知平さんが取り組まれた野外での水鏡を題材にした作品と
ギャラリー空間全体を活かして水を表現された作品、
ご自身の子供の頃の想い出を表現された作品について
お話をお聴かせ頂きました。


2014年2月27日の掲載を再放送でお届けします。


どうぞお楽しみ頂ければ幸いです。


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o1
水平なガラス  2010
ガラス  水  アクリル
3600×2700




e3


水面
鉄 ガラス 水 石 鉄筋(H2000)
900×900×70 6~9ピース

2010年




r1

INORU TETU  2011
鉄 木
2500×400×350




s1



s2

SHIZUKA NO FUNE
木 ガラス 金箔
ガラス 3500×3800×380
木部  1700×400×300



l2
MIZU NI TATU HITO  VERSION B
1150×200×70
アクリル 木 金箔 水
2013年




l1

MIZU NI TATU HITO   
アクリル 木 金箔 水
1200×450×200
2013年







日下
渡辺 知平さんは、鉄、木、ガラスなどいろいろな素材を使っていらっしゃいます。
前回は、「これをガラスを通して観たらどのように見えるだろうか」
というところから始まるというお話でした。




どんな風に見えるだろうというご興味が
素材選びのスタートだったりするのでしょうか。




渡辺 知平さん
いや、(笑)そこまでではないですけどね。
作りたいものがあって、
ガラスがあったらどういう風に見えるだろうじゃなくて、
込み込みなんですけど、その、世界というか・・・。(思考中)




日下
直感でしょうか?







渡辺 知平さん
んー・・・。(思考中)
ガラスだけの作品がありますでしょ。




野外の作品は、これはちゃんとしたガラスをこうしたいというか、ありまして。
これはその「子供たちの夜」と全く関係ないんですけど。




ある時田んぼに水が入っているのを見まして。
で、それに月夜だったんですけど、水鏡になっているところに月が映って
なんて美しいんだろうというか。
全くの水面、レベルというか、真っ平らですよね。
当たり前ですけど。


変な話ですけど

田んぼってこんなに水平なんだって、これはすごいなーと想って。




で、田んぼの水面にそのままガラスを張ってみたいなと想ったことがあるんですよ。
でも怒られちゃうんで。





日下
はい、はい。(同感)







渡辺 知平さん
出来ないんですけど、
でもいずれ棚田というところでカラスを張って見たいな
というのはありますね。




この作品は2度目で、
最初の時はここの場所に小川が流れていまして、
その小川を覆ったこともあるんです。


ガラスを通してというというか、ガラス自体に興味があるんですね。
興味があるというか、もう綺麗だと想っている。


とても不思議な感じがする素材だなと想います。





日下
そうですね~!
これは場所はどちらでしょうか。





渡辺 知平さん
これは横浜の何とか公園。
公園の近くのファームで、建築家の方が経営していらして
そこの庭に柿畑があって、そこの庭を開放して何年も続けて野外展をやっているんですよ。

そこに参加した時のこれ、2回目かな。





日下
素晴らしいですね。

さりげなく、水色の液体がホースを流れていますが・・・。





渡辺 知平さん
これが、その要するに、
水平なことをやるには・・・。




ガラスの四カ所、四つ柱がありますよね。
そこにこの水色の液体が入っている所から管が出ていまして
それが全部四カ所に行っているんですよ。
そこはレベルがちゃんと出ている訳ですよね。


こっちの水槽みたいなのと同じレベルに
水が管でずーっといっているんですよ。
それに合わせてガラスを張っているので、だから完全な水平なんです。




日下
ああ~。なるほど~(感心)







渡辺 知平さん
題名も「水面」ってすれば良かったなって想うんですけど。
だからその田んぼにやって見たかったことをここでやっているんです。




日下
それは素晴しいです!完全に水鏡ですね。




さてもう一つ、ビルなのか、「水面」という作品も面白いですね。
これは自由美術展でしょうか。





渡辺 知平さん
これは国立美術館で、そう、これは自由美術です。







日下
こういう展示も出来るんですね。







渡辺 知平さん
外はそうですね。これ、僕は見なかったのですが
トンボが水と間違えてそこで産卵していたとか聞きました。

表面はガラス何ですけど、中は水が入っていますよ。




日下
昆虫も参加してしまうほどの水鏡なんですね。
それは素晴らしいです!!




それから私は、ガラスを使った作品と言うことで言いますと、
個人的にですが、「SIZUKANOFUNE」という作品が
凄く素晴らしいと想って気に入りました。





渡辺 知平さん
これは去年の。
これは木を彫ってやっぱりちょっとリアル過ぎて、何というのかしら、
その前に震災のあった時の、鉄板がゆるゆるっと立っているような。

「INORU TETU  2011」という作品。




これ個展にやった時はガラスを張っていたんですけど、
ガラス張りのギャラリーだったので、ちょっとガラスとガラスでいやだなと想って
この作品にはガラスを取って置いたんですけど、
これなんかはそうですね。






渡辺 知平さん
で、「SIZUKANOFUNE」はそれの翌年。
だからそういう想いも多少はありますね。





日下
ああ、そうですか。震災の・・・。
「MIZU NI TATU HITO」もそうでしょうか。

私はこの作品を観た時に、震災のこともあるのかと感じました。



渡辺 知平さん
これも、同じ時期です。


ダイレクトにはそれを作っている訳ではないんですけどね。

そういう影響を受けたんだと想います。





日下
ええ、勿論、何も特定する説明もないですので、
作られた頃と、作品からうけた私自身の勝手な印象かも知れませんが。



何か、人のたたずまいにとても祈りを感じるというか、
そういう雰囲気を感じました。







渡辺 知平さん
先ほど好きだと仰ってくれた作品は、
パロスという、同じ自由美術の人が経営している画廊なんですよ。
それで佳作賞をとった時に、佳作展をやってもらったのですが
この画廊で2回ほどをやって。




石屋さんを経営なさっている方なので、
石をふんだんに使った画廊なんですけどね。
一段下がった箇所がありまして。



ちょっと面白い空間なので
最初に上にガラスを張って、作品を作りたいんだけどって言ったら
じゃあ、企画でやったらどうかということで、
「SIZUKANOFUNE」はそれに合わせて作ったんですね。




日下
本当に、段差のあるギャラリー空間を
水の浅い深いのように表現されて・・・。
見事に生かして作品にしていらっして

本当に空間の使い方が素晴らしい作品ですし、
内容も素晴らしい、すごい作品だなと想いました。



渡辺 知平さん

ありがとうございます。



自分で構想した時には
これ面白いだろうなと想いました。






u1


u3



u1

NU BA TA MA (ドローイング)  2014
鉛筆  400×300





u2

u4
NU BA TA MA (月)  2014
鉄 ガラス アクリル ミシン
1200×1000×450 





日下
あと、もうひと作品興味があってお聴きしてみたい作品がありまして
「NUBATAMA」という作品です。
ミシンとドローイングの。







渡辺 知平さん
これは今、杉 英行さんと一緒に出している
彫刻7人展(※)に出した作品なんですよ。

       (※)現在は終了しています。




日下
「ぬばたま」というのは「黒や夜をイメージさせる言葉を導く」枕詞

ということですが。





渡辺 知平さん
そうそう。「黒」に対しての枕詞。
だからそれに関連しての「夜」だとか「月」だとか
まあ、そういうのがかかるみたいですね。





日下
これを作って見ようと想った意図をお聴かせ頂けますでしょうか。





渡辺 知平さん
このミシンは10年位前に横浜でたまたま通りかかったところで
落ちていたのを拾って持って帰ったんです。




これでテーブルでも作ろうかなと想っていたんですけど、
中を開いてみたら結構しっかりしていまして、
とてもフォルムが美しくてなんて綺麗なんだろうと想って、
これはいずれ何か作ろう!と決めていたんですよ。




それから何年も経っていますけど
今回そういえばそれで何かやりたいなと、
それをガラスで覆ってみたんですけど。




ぬばたまって、これを最初にみて思い出すのはやっぱり母親のイメージで
それで、夜、小学校に行くか行かないか位の頃に、
夜寝て何かミシンの音がするので薄眼を開けると
母親が縁側でミシンを縫っている後姿があって、
本当に変な話ですが月が浮かんでいて
そんなイメージがずっとあったんです。




これがずっと一連の流れの中の感覚で作っています。

くどいようですけど、後ろに母親と僕らが映った写真のドローイングでやって。



日下
ああ~。そうでいらっしゃるんですか~。

この中の何番目が・・・。





渡辺 知平さん
僕は真ん中です。末っ子です。




日下
そうですか。
やはりご自身の記憶と結びついた作品なんですね。





渡辺 知平さん
そうですね。今回これは賛否両論で。
「なんだよ、ミシンそのままじゃないかよ。」って言われたりして(笑)。

面白いっていう人もいましたけど。
大体はそんな雰囲気でした。




日下
でも、この覆うということで別のものになっていますよね。





渡辺 知平さん
勿論そうです。







日下
そうですか。
素敵なお話をありがとうございます。







t1


水の詩
アクリル 水 針金
500×150×150

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今回、杉 英行さんからのご紹介で、初めて渡辺 知平さんのお話をお聴かせ頂きました。


渡辺 知平さんは2010年頃まで「子供たちの夜」という題名で作品制作をされてきました。


一つの素材に限定せず、木、鉄、ガラスなどいくつかの素材から
独特の雰囲気の作品を作られています。


それは、渡辺 知平さんが子供の頃の、
眠ると向こうの世界に行ってしまうのではないか、という不安な感覚や
何かしら此岸と彼岸の意識を根底にもっていらっしゃることから来るのではないかと感じました。


そしてそれらの作品は、観る側にとっても、その人それぞれの
今現在と過去という記憶を行き来させてくれる、不思議な入り口になるように感じます。


いつも新しい作品を作るときは、手技的には荒々しくても、窮屈な感じがなくて好き、
制作はいつも楽しいと仰られていて、その制作の姿勢がとても素敵だと想いました。


みなさまもぜひ、渡辺 知平さんの彫刻作品をご覧になって見てはいかがでしょうか。・


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◆渡辺 知平さんが登場するWEBページ
  
 ◇  
自由美術協会公式ウェブサイト

 ◇  渡辺 知平さんの紹介ページ
 

 ◇  ハマ展:横浜美術協会ホームページ



本日もご訪問下さいまして、ありがとうございました。


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