ちょっと間が空きました。やはり一気に記事をアップすることがだんだん出来なくなっているワタクシです。
先週はすっかり四大陸選手権でのりくりゅう事で終始したような週でしたが、他にも色々な事がありましたよね。
おそらく一番大きなニュースは、2022年北京五輪で勃発した「カミラ・ワリエワ選手ドーピング事件」に関する調査の最終結果が出た、ということだったと思います。予想よりも重い4年の出場停止処分がワリエワ選手に課されたことに、ちょっと驚いたフィギュア界隈だったかも知れません。(その後、処分の根拠を説明する報告書を読み込んだ人たちが色々と呟いていますが、私自身はそこまで綿密に読んでいません)
いや、それよりもたったの15歳だった彼女だけが処分を受けたことに納得の行かない人たちが多かったでしょう。コーチや医師、連盟関係者たちが未成年の選手のドーピングに一切、関わっていないはずがなく、その責任が問われて当然だと考えられるからです。今後、お咎めなくそんな「大人」たちがスケートの大会に顔を出したり、役目を担ったりするのがおかしいですよね。
まあそれでもとにかく一段落ついたかのかと思いきや、またまた驚きのニュースがISUから発信されました。
団体戦のメダルはアメリカが金、日本が銀、というところまでは皆が考えていた通りでしたが、なぜか銅メダルはカナダが繰り上がるのではなく、ロシアが順位を下げられて獲得、と。これには腰を抜かした人が多かったんじゃないでしょうか?
いやまさかね、と冗談では言われていたかも知れませんが、本当にこんなことがあるんだろうか、と。
カナダのスケート連盟及びオリンピック委員会がこのニュースを受けて何らかの提訴を行うことになりそうですが、ロシアまでもがこの判断に不満だというからビックリです。なんでやねん。
あまりにも不可解なISUの判断でした。
陸上・水泳のリレーや体操の団体戦などを例にとっても、と力説するりくりゅうのコーチのメーガン先生、メンバーの一人がドーピング違反に引っかかればチーム全体が失格になってメダルをはく奪される、と。
“If this case is a precedent, why wouldn’t more people start feeding athletes drugs to get glory for their country when there is no recourse for those bad actors?” @RobKoehler2 via @CTVNews @wada_ama pic.twitter.com/8Z5gvBiN3J
— Global Athlete (@GlobalAthleteHQ) February 5, 2024
この動画でそれ以外にも言われているのは、こうやって違反を犯してもルールが適応されないのであれば(まあ今回の場合、ワリエワ選手自身は罰されたわけですが)今後「ドーピングをやったもん勝ち」の前例になる危険性がある、ということ。
また同じくカナダ代表として3度のオリンピックに出場したカーステン・ムーアタワーズも、今回4位に終わったカナダチームの一員としてコメントを寄せています。
カナダがISUのメダル授与の判断を疑問として提訴することはもちろんだけれど、すでにメダルが確定しているアメリカや日本のチームも本当に気の毒だ。自分は少なくともソチで団体の銀メダルを獲って、セレモニーを経験できたから、その機会をはく奪された選手たちを思うとたまらない、と。
The ISU has fallen under intense scrutiny for its handling of the Valieva case and subsequent medal standings ruling.
— Devin Heroux (@Devin_Heroux) February 9, 2024
About integrity. Magical podium moments missed. And doing the right thing.
Thank you for your thoughtful perspective @kmooretowers
pic.twitter.com/Kh82zdVWLq
カーステンは特にりくりゅうのことをとても可愛がっていたので、いっそう、胸が痛むのかな、と思ったりしました。実際、木原選手も「メダルを獲ったという実感がない」と言うくらい時間が経ってしまって、今となっては腹立たしいのを通り越して、呆れ、諦めへと移行して、感情も冷え切ってしまうでしょう。
また、カーステンはワリエワが未成年であったことにも言及していて、「でも私たちは(彼女と同じような)若い年齢の頃からさんざん、摂取する物には気を付けるように、と頭に叩き込まれてきています」とアスリートとしての自覚が大事であることを主張しています。
風邪薬や痛み止めも気軽には服用できず、必ず医師の許可をもらるようにする。食べ物であっても原材料を丁寧にチェックして、カーステンは「ポピーシード(ケシの実)のついたベーグルでさえも怖くて食べられなかった」と言っています。
こうやって常にWADAのルールを確認したり、突然、自宅に早朝に押し掛ける抜き打ちのドーピングテストにも耐えたり、と試合会場以外でも厄介な目に遭うのは、ルールを守らずに禁止薬物を使う人がいるからです。当然ながら、こんな面倒は誰でもが避けたいに決まっているけれど、クリーンであることを証明するには仕方がない。
それなのに違反が現行犯で見つかったにも関わらず、結局ちゃんと皆が納得するような制裁が加えられなければアホらしくてやってられないですよね。
。。。とまあ、私はこのテーマになるとけっこう血圧が上がってしまうのでこの辺りで締めくくっておきますが、2017年にけっこう真面目な記事も書いていますので、ご興味があればぜひ読んでみてください。
追記:
いったんアップしてから自分の過去記事を読み返してみて、6年余りの月日を経てあまりにも今回の事態に当てはまる文章があったので抜粋したくなりました。
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どんな経緯によって摘発されたとしても、ドーピングが判明すれば罰せられなければなりません。組織レベルでシステム化されていることが分かれば、組織レベルでの制裁が加えられなければなりません。全てのアスリートの健康を守るためにも、クリーンに戦っている選手たちの努力に報いるためにも。
不正をしていないのに連帯責任を取らされるロシアの選手は確かに気の毒ですが、クリーンであることを証明できる場合は参加の道が残されています。そして私はそれ以上に、今回のIOCの決定が世界中の多くの選手たち(日本のジャンプの葛西選手も含めて)に評価され、歓迎されたことに注目したいと思います。
何年もかけて一心不乱に練習してきて、ようやくつかんだ大舞台で不正を犯した選手に負けた場合、その不正が何年か後に判明して成績が是正されても気が済まない、というケースはたくさんあります。しかし時間が経ってからでも是正されるのは、まだよい方かも知れません。
最初にご紹介したベン・ジョンソンのドキュメンタリーの中で「一般の観客には分からなくても選手同士は誰が何をしているのか、たいてい分かるものだ」というコメントが何度か出てきますが、不正の証拠がなければ泣き寝入りするしかありません。自分が獲るべきであったメダル、乗るべきであった表彰台の段、聞くべきであった国歌。大会後も得られるはずであった支援金、名声。それらを手に出来なかった悔しさを一生、心の中にしまったままで生きていくことになります。
自分の子供が、応援している選手が、その様な目に遭ったとしたら、どんな気持ちでしょうか。