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これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『滲み』(2021)

自主制作映画

 

監督 加藤也大

 

夏の帰宅路。帰り道ヒロキ(近澤智)の家に行っていいか聞くマイ(笠松七海)。ヒロキもちょうど言いたいことあるからと承諾する。

 

ヒロキは転校する。マイはヒロキが好きなんだけど言えずにいる。おまけに弟が死んだことを知ってなお言い出せなくなる。ヒロキもまたマイが好きなのだが、なかなか言えずにいる。けれど最後の最後にようやく想いが通じ合う。

 

12分の映画。画角が変わってる。なんていうの、こういうの? シネマスコープより細長い気がする。

構成もMVの類いかイメージビデオか?そんなような印象の作品だった。

10分程度にまとめられる作品ってすごく難しいと思ってて、絞りに絞った言いたいことをわかりやすく、というより、匂わせ程度で、だけどきちんと相手に届くよう作る、それがその尺のように思う。それで言うと、余計な映像が多くて、散漫になってしまってて、結局監督自身の中で届ける技術が足りない、まとめ上げられてなかったんだろうなと思った。

 

演出として、息子の部屋でグラスが割れる音がした時、階下の母親が掃除機をかけるのは良かった。一番気が利いてた。

 

★★

 

 

加藤也大監督サイト

 

 

『ジャンクション29』(2019)

29歳の4人の青年の物語を描いたオムニバス形式の作品。

 

監督 ウエダアツシ(『うみべの女の子』他)、山田晃久

 

脚本

玉田真也(『あの日々の話』他):「ツチノコの夜」

ウエダアツシ:「ツチノコの夜」

飯塚花笑(いいづかかしょう):「結婚の条件」「ジャンクション」

加藤結子「結婚の条件」「ジャンクション」

保坂大輔:「バズる」

 

 

「ツチノコの夜」

 

吉田健一(田中俊介)は高校時代から映画を撮り続け、夢は映画監督。それは29歳になった今でも変わらず、ニート生活をしながら自主制作映画を撮っているが、まったく世には出ていない。

高校の同窓会で昔好きだった小林(佐藤玲)に会い、幸運なことに二人で抜け出そうと誘われる。行き先は吉田の部屋だった。なんだかいい雰囲気になったところ、友人の加藤(本多力)がやってくる。その上、泥酔しきった担任の飯田(菅原大吉)も上がり込んでくる。そこで思わぬ展開に…。

 

 

「結婚の条件」

 

結婚相談所経営でスーパー仲人と名を馳せる29歳の青年実業家鴛鴦ハジメ(水野勝)のところに同い年の癖の強い鳶田(細田善彦)が入会してくる。母親がうるさいから仕方なしに入ったため、本人まったくやる気がない。ハジメ自身も結婚はビジネスとしてしか見ていなく、自身の問題としての結婚には興味がないし、妹(加藤葵)の結婚にまで否定的だ。鳶田のことはなんとなく似た者同士で気持ちがわからないでもないが、ここは仕事、玉の輿を狙う年上の鷹野(山田キヌヲ)やトランスジェンダーの白鳥(中村中)など多くの女性を紹介し…。

 

 

「バズる」

 

守谷悟(本田剛文)は動画投稿サイトバズチューブの底辺バズチューバーボイリッチー。29歳でサラ金の借金もあるしもう崖っぷち。救いは、それでも応援してくれるファンキラキラ(成宮しずく)の存在…。しかしついに借金取りの権田夫婦(ゆかりの小雪、水澤紳吾)が乗り込んできた。起死回生をかけてさらに100万借り、全額ギャンブルに賭ける動画を投稿する。これが大当たりし、再生数が伸び、あっという間に借金を返したが、味をしめたボイリッチーと権田夫婦は提携し更なる躍進を目指す。が、そううまくはいかず、唯一のファンキラキラも離れていきそうだった。そしてボイリッチーはその命をもネタにしなければならなくなる…。

 

 

「ジャンクション」

 

漫画家志望の丸山晋輔(小林豊)は高校時代1作だけ漫画賞佳作に入ったものの、以来29歳になる今まで入選も果たせず絶望の淵にいた。行く当てもなくふらっと山の方へ向かうバスに乗った。そこへ高校時代加藤と一緒によく漫画の話をしたり描いたりした田中(福山翔大)が乗ってくる。懐かしむ田中に最初はウザそうな丸山だったが、次第に昔話に花が咲く。そうして丸山の助言で新たな漫画のストーリーを考え出すのだが…。

 

 

丸山を軸に派生する作りで、映画は丸山がバスに乗ってるところから始まる。ガラケーに加藤からのメールが入り「ツチノコの夜」へと流れる。同窓会で丸山は加藤始め同窓生に漫画家先生だともてはやされる。違うのについ見栄をはってしまう。「ツチノコの夜」が終わると、バスに乗った丸山の場面に戻り、田中が現れ、丸山の現状と共に「結婚の条件」へ。ここでは、丸山は鴛鴦の会社が入るビルで清掃員のバイトをしている。同じ歳の鴛鴦を複雑な思いで見ている。「結婚の条件」が終わると、再度バスの中の丸山と田中が入り、「バズる」へ。ここでは丸山の住むアパートの隣りが守谷だ。ちょうど間違えて投函された手紙を届けに来た守谷が、ついでに動画のネタにするためにレモン汁を借りる。そして「ジャンクション」、これが丸山の物語となっている。

こういう構成は好きだし、各物語自体30歳という節目の年齢を前に何者にもなれていない、またはどうしたいのかわからない29歳の葛藤が描かれているところも好きだし、なんとなく折り合いをつけて前へ進もうとする締め方もまあ現実的でいいなとも思った。「ジャンクション」ではまさかの意外な展開が待っててさらに良かった。

でも爆発的な感動はない。コミカルなところもあって、起承転結、展開もしっかりしてるから、お話としてはこれでいいんだと思うけど物足りない。

 

水澤紳吾の新たな面が見えたのは儲けものだった。いい役者さん。

 

★★★

 

 

 

 

制作 NAC

配給 スターキャット

 

 

『エッシャー通りの赤いポスト』(2020)

監督・脚本 園子温(『自殺サークル』『紀子の食卓』『気球クラブ、その後』『愛のむきだし』『ヒミズ』『希望の国』『地獄でなぜ悪い』『TOKYO TORIBE』『ひそひそ星』『冷たい熱帯魚』『リアル鬼ごっこ』『愛なき森で叫べ』『新宿スワン』シリーズ、他)

 

藤丸千、黒河内りく、モーガン茉愛羅(まあら)、山岡竜弘、小西貴大、上地由真、縄田カノン、鈴木ふみ奈、藤田朋子、田口主将、諏訪太朗、渡辺哲、吹越満、青木成臣、有田あん、伊藤亜美瑠、遠藤雄斗、小川真鈴、烏森まど、岸田茜、銀代良、北林佑基、河野通晃、小松広季、佐伯紅緒、桜井梨理、柴崎圭佑、錫木うり、関幸治、高須賀浩司、田澤陽奈子、たしろさやか、橘麦、田中倫貴、徳留歌織、とみやまあおい、永井ちひろ、永栄正顕ながえまさあき、中村莉久、二條正士、柊まこ、ひまり、heim record、星名利咲、堀さやか、宮崎悠理、みよし、基村優介、盛井雅司、保田泰志、八ツ橋さい子、山崎美香子、山本宗介、吉井有子、他。

 

人気映画監督小林正(山岡竜弘)は新作「仮面」制作にあたり、プロアマ関係なく広く出演者募集を行うことにした。オーディションには様々な事情を持った者、一風変わった者らが集まる。興味深い新人を発掘するなど順調に見えたオーディションだったが、小林の脚本が滞っていた。そこへ元カノの方子(モーガン茉愛羅)が現れ、力を貸してくれるが…。また、エグゼクティブプロデューサー山室(渡辺哲)からダメ出しがあり、助監督のジョー(小西貴大)始めスタッフもてんやわんや、映画制作は難航する…。

 

ワークショップの一環で制作された映画とのこと。「園子温による役者のための実践的ワークショップ」というコンセプトのようだ。なので、出演者51名は本当に未経験者含めた役者の卵たちのようだ。

 

選曲、意味を感じないカット、高2病的台詞、当たり前だけど園子温色が濃く、これら下手くそな芝居で正解なのだろう。面白くはないけど、若さとかパッションとか、混沌の中に情熱がある…とかなんとか、とにかく園子温作品らしい作品だった。

特に、藤丸千演じる安子が父親から性的虐待を受けていたという設定で、気のふれようは園子温みが強い。また、安子は狙ってるんじゃないかと思うくらい鳥居みゆきぽかった。

 

藤田朋子、渡辺哲、諏訪太朗らは、明らかに力量が違って見てて安心した。

 

同じような手法で田口清隆監督の『12人のイカれたワークショップ』があるけど、こっちの作品の方が芝居力高かった。そもそも園子温は芝居力なんか必要としてないと思うけど。どっちにしろ役者になるのって大変だなぁ、と思った。

 

★★(★)

 

 

 

 

制作 Hikoki Films International、AMGエンタテインメント

配給 ガイエ

 

『スモーキング Smoking』(2018)テレビ東京系列 全12話

原作は岩城宏士の漫画

監督 権野元、元木隆史(闇金ドッグス』『ガチバン』他)

脚本 根本ノンジ(『フルーツ宅配便』他)、粟島瑞丸(あわしまずいまろ)、守口悠介(『ブラック/クロウズ』、『こはく』『きらきら眼鏡』他)

 

石橋凌、金子ノブアキ、吉村界人、橋本マナミ、丸山智己、螢雪次朗、山中崇、髙橋和也、麿赤児、松田龍平、他。

 

普段はホームレスとして地味に廃品で小金を作り生活している四人組の男たち。実はスモーキングと呼ばれる暗殺集団で、法で裁けない悪人、犯罪者に制裁を下していく。その多くは刺青を入れている者たちで、依頼者にはその刺青の部分を剥ぎ取りったホルマリン漬けを贈る。それをもってして仕事完了というわけだ。

メンバーは昔中東で医者をしていたボスの剥ぎ師こと左辺(石橋凌)、武器から生活用品まであらゆる物を調達する物足師(=ぶったし)こと八丁(金子ノブアキ)、類い稀なる格闘センスと怪力を持った元地下格闘家のチャンピオン潰師(=つぶし)ことゴロ(丸山智己)、壮絶な子供時代を経験し口がきけなくなったあらゆる薬品調合能力に長けた薬罪師ことヒフミン(吉村界人)

暗殺依頼を受け確実に遂行していく中で、メンバーそれぞれの過去や出会い、スモーキングの成り立ち、また、スモーキングの母体であるクリーナーの存在と、それを牛耳る政治支援団体美国会議との抗争も描かれる。

 

我欲のためには非道になれるという怖さもあるけど、人とのつながり、家族愛みたいなものを感じる情深いドラマだった。

 

面白かった。

左辺をこの道へ誘った暗殺集団クリーナーのドン砂地麿赤兒、政治支援団体美国会議の議長榊原松田龍平。その他、クリーナー構成員に山中崇高橋和也など、濃いめで魅せる。

 

刺青のホルマリン漬けなんて…と思ったけど、『皮膚を売った男』でホルマリン漬けではないけどアートとして残す技術が描かれていたので、有りかもなぁと思えた。

 

やはり吉村界人、うまいなぁ。

 

★★★★(★)

 

 

 

 

 

 

『8 1/2』(1963/日本公開1965)

イタリア・フランス合作映画

原題『Otto e mezzo』(訳:8と半分)

 

監督 フェデリコ・フェリーニ

脚本 フェデリコ・フェリーニ、トゥリオ・ピネッリ、エンニオ・フライアーノ、ブルネッロ・ロンディ

原案 フェデリコ・フェリーニ、エンニオ・フライアーノ

 

 

 

 

主人公グイド(マルチェロ・マストロヤンニ)は映画監督。新作に取り掛かっていいたが、アイデアに詰まりスランプに陥っていた。おまけに妻ルイーズ(アヌーク・エーメ)始め女性関係にも問題を抱え、心身に支障をきたすほどになっていた。グイドは療養を兼ねて湯治場へ行くが、そこにはプロデューサーら映画関係者、出資者などがわんさか押しかけ、まだかまだかとせかされるわ、ルイーズや女優らに囲まれるわ、前代未聞の前衛的舞台装置が仕上がるわ、逃げても逃げきらない。それら妄想と現実の区別がつかない世界へとグイドははまり込んでいく…。

 

印象的な台詞があって、

「死ぬまで明快であるべきだ

この乱雑な世に更なる混乱など必要ない

必要なものが創れない時は壊す方がいい

この世に絶対必要なものなどあるか?」

からの

「結局我々に必要なのは衛生、清潔、消毒だよ

我々を窒息させるのは存在理由のない言葉や映像や音

空から生まれ空に向かう

芸術家の名に値する者なら

沈黙を習得することだけを求めるべきだ」

そして

「我々の使命は世に出ようともがく失敗作を日々追い払うことだ」

 

映画作品のみならず、全ての創造する表現物についてその意味を問うているようだった。

 

さらに「人生はお祭りだ」と言う。

生きることの意味も問うていたのかと。

 

どこからどこまでが妄想で、何が現実なのか境目は曖昧で、おそらく観る側に委ねているんだと思う。

ラストはキャスト全員が揃いダンスをする。そこでこの映画そのものがフェイクであることを言っているのかもしれない。

 

★★★

 

 

当時の映画制作事情なと知る由もないが、めちゃくちゃお金かかってそう。登場人物も多いしスタッフを考えたらその倍以上はいるわけで。

 

タイトルの意味はフェデリコ・フェリーニ単独監督作品が8作目にあたり、また、デビュー作が共同監督作だったことから、数えると本作が8作目と半作になることに由来しているらしい。

 

 

(英語版)

 

 




 

 「8 1/2」というと、バンドを思い出す。80年前後、東京ロッカーズと呼ばれるインディーズバンドの集合体にいた。実際聴いたことも見たこともないのだけど、名前だけは知っている。パンク・ニューウェーブというジャンルに属されていたと記憶するけど、のちのハルメンズの上野耕路がいて、その後戸川純、太田蛍一とゲルニカを作っている。そのゲルニカで8 1/2の曲「踊れない」が歌われている。その程度しか知らないが、バンド名はこの映画からとったらしい。

80年前後のインディーズシーンはほとんど空気感でしか知らないけど、こんなような映画が好きな人が集まっていたような印象。

 

『なっちゃんの家族』(製作2021)

ndjc(New Directions in Japanese Cinema)

文化庁委託事業・若手映画作家育成プロジェクトの作品

 

監督・脚本 道本咲希

 

お父さん(斉藤陽一郎)はどうやらリストラにあったか失業中だ。お母さん(須藤理彩)はそんなお父さんと喧嘩中。というか、仲が良くない。お兄ちゃん(山﨑光)は何かとなつみ(上坂美来)をこき使う。登校時、なんだか学校に行くのが嫌になり、なつみは電車に乗って遠いおばあちゃん(白川和子)の家へ向かう。おばあちゃんちは居心地がいい。何より会話がある。しかし家出同然で出てきたため見当をつけた両親がかけつける。親身になっている気でも両親の不仲は感じてしまう。なつみはついに両親に「離婚して」とお願いする。戸惑い、真意を探ろうと必死な両親になつみは譲歩し、ひとつ提案を持ちかける…。

 

すごいなと思ったのは、離婚しない理由に「本当はお母さん(お父さん)を愛しているんだよ」という類の台詞が一切なかったこと。あくまでなつみを思って離婚はできないと言い張る。これでは離婚も当然と思ったが、なつみの提案は回覧板を届けに行った先で楽しそうに笑いながらバドミントンをするおばさんたちを見て、その中に入って自分も楽しかったからという経験のもと、両親に50回バドミントンでラリーが続いたら離婚しなくていいというもので、なるほどと思った。やってるうちに楽しくなり笑いが漏れてくれば関係修復も可能なのではないか。とはいえ、15回くらいまでしか続かない。でも、そこで諦めずにラリーを続ける両親。完全な笑顔にはなっていなかったけど、この後なるかもしれないし、50回クリアするかもしれないし。という、なかなか素敵なラストだった。

 

なつみ役上坂美来うまい。そして白川和子もさすがだった。脚本、キャスティング、共に良かった。

 

★★★★★

 

 

制作プロダクション アミューズ

 
 

 

 

『LONG-TERM COFFEE BREAK』(製作2021)

ndjc(New Directions in Japanese Cinema)

文化庁委託事業・若手映画作家育成プロジェクトの作品

 

監督・脚本 藤田直哉

 

ある日、キャリアウーマンの優子(藤井美菜)はキャリーバックに寝袋を持った職業は俳優だという直樹(佐野弘樹)に声をかけられる。定住する自分の住まいは持たず、いくつかの(女の)部屋を渡り歩いているという。その関係性は相手によりけりで、決まりはないという。優子はそんな変わってる直樹を気に入り、自然な流れで直樹は優子宅に居候することになる。やがて二人は結婚する。しかし、直樹の俳優業は芳しくなく家にいることが多くなっていく。優子の会社の後輩みゆき(小槙まこ)は上司との不倫でトラブルを起こし、直樹の友人翔太(遊屋慎太郎)は妻真希子(福田麻由子)に秘密で浮気をしていた上、交通事故で亡くなる不幸が起こる。みゆきと上司の関係、翔太と真希子の関係は、優子の気持ちを見つめなおす機会となり…。

 

翔太は俳優を目指す仲間だったが、鳴かず飛ばずで諦め、真希子と家庭を持つ道を選んだ。浮気はしてるけど、真希子のお腹には子供がいた。家庭を壊す気はなかった。翔太の事故車に同乗してた直樹も、大怪我を負い、しばらく俳優業はできない。潮時を感じたのだろう、実はEDであること、でも二人で克服していこうと、家庭を作る道を選ぶわけだが、優子が「子供を欲しがる女だと思った?」という(旨の)台詞を吐いてつっぱねるの、かっこよすぎた。

優子はもともと、子供がいて家族のために働く旦那様、絵に描いたような幸せファミリーには興味がなかったのだろう。翔太は亡くなったのに浮気を疑って止まない真希子、後輩の不倫の顛末も見た。そんな利のない関係も軽蔑していたと思う。往々にして仕事を楽しんでる女性はそうだ。直樹のやりたい職種に向き合ってる姿、自由さに面白みを感じていたのに違ったと、数個の会話であっという間に冷めた感じがまさにクールで良かった。

根無し草のような男に翻弄される女、そんな匂わせで始まっておきながら逆だったのが痛快だった。

 

毎度、福田麻由子の中にある怖さ、素晴らしい。

 

★★★★

 

 

制作プロダクション ジャンゴフィルム

 

 

 

 

 

『遠くへいきたいわ』(製作2021)

ndjc(New Directions in Japanese Cinema)

文化庁委託事業・若手映画作家育成プロジェクトの作品

 

監督・脚本 団塚唯我(だんずかゆいが)

 

ファミレスで働く沙良(野内まる)は15歳の時に母を亡くしている。自殺だった。ある日、バイトの面接に来た竹内(河井青葉)を見て動揺する。母に似ていたのだ。沙良は竹内と開店準備をしながら話を始める。竹内にも13歳で自死した娘がいた。昂ぶる感情を抑えられない沙良は開店する前に店を抜け出しどこか出かけようと誘う。沙良は竹内の中に母を見て、竹内は沙良の中に娘を浮かべる。贖罪を持って…。

 

良かった。

彼氏(金澤卓哉)はいるけど執着はない。沙良の中では母がいなくなった喪失感を埋めるものでしかないようだ。

沙良の母への慕情がよく出ていて、それが竹内では満たされないとわかっていても甘えたい、我儘を言いたい、気持ちが抑えられない、それは見てる側からすると不快だけど、その不快さがきっと狙いだろう。竹内の事情もなかなかきつい。不倫にかまけて娘の方を見ていなかったのだ。生涯後悔を背負っていくだろうと思いきや、すでにお腹には新しい命が宿っているというまさかの展開…。沙良はきっと竹内の中の汚い母親像が許せなかったんだろう。自分の母はそうじゃなかったと思いたいのだろう。真実はわからないけれど。

ショッピングで沙良が結局黄色のセーターを選んだのは、やはり母は誰にも替えが効かないことの無意識の認識なのだろうな。

 

ネタバレしてしまってるけど、情感を見る作品だと思うので、ぜひ、機会があれば。

 

竹内の心情語り、おそらく意図的な抑揚を抑えた台詞だと思うのだけど、その効果はよくわからなかった。普通に演技入れた方が良かったようにも思う。

 

癖のある常連客(フジエタクマ)店長(津田寛治)の存在意義も見て取れた。でもあれっぽちに津田寛治って、もったいないwいや、だから締まったのか?

 

★★★★

 

 

制作プロダクション シグロ

 

 

 

 

『少年と戦車』(製作2021)

ndjc(New Directions in Japanese Cinema)

文化庁委託事業・若手映画作家育成プロジェクトの作品

 

監督・脚本 竹中貞人

 

中学生の田崎(鈴木福)江田(笠井悠聖)滝口(林裕太)を中心としたグループにいじめを受けている。田崎と滝口は昔は友達だったのに、あることがきっかけで上下関係ができてしまった。そんな過去からも、また思春期の真っただ中であることもあり、いじめを受けながらも将来は芸人になるんだと明るい江田とは違って、田崎は鬱屈した思いを持っていた。同級生の咲良(黒崎レイナ)を想い妄想することが唯一心を開放できる癒しであり、できることなら滝口はもちろん、見て見ぬふりの教師たち、学校もろともぶっ壊してやりたと思っていた。そんなある日の歴史の授業で、旧日本軍がこの街にある浜沢湖に戦車を沈め隠したという話を聞き、現状打開に探しに行く…。

 

面白かった。

江田の台詞に現在受けてるいじめについて「10年後には笑い話になってる」というのがあり、なかなか達観してるなと思った。江田にとっては将来芸人になるという夢のことの方が大切だということだろう。田崎にはそういう宝がない。

滝口らのいじめに対しての応戦がラストにあるのだけど、そうきたか、と、だいたい気持ちよく復讐して相手が改心して…というのがデフォな中、こういう締め方もあるのだなと感心した。

何より、いじめを介して少年の成長(田崎の場合自己との闘い)が描かれているのがいい。

 

★★★★(★)

 

 

制作プロダクション 東映東京撮影所

 

 

 

 

『窓たち』(製作2020)

ndjc(New Directions in Japanese Cinema)

文化庁委託事業・若手映画作家育成プロジェクトの作品

 

監督・脚本 志萱大輔(しがやだいすけ)

 

美容師の朝子(小林涼子)とバイトで食い繋いでる森(関口アナン)は同棲してだいぶ経つ。友達のチカ(瀬戸さおり)が引っ越しをしたので新居伺いに行くことになった。チカには夫(小林竜樹)もいるし子供もいる。森はその子供と遊んで自分の変化に気づく。バイトも正社員になりたい旨、上に伝えた。そう、朝子のお腹の中には新しい命が宿っているのだ。二人の関係も次のフェーズへと移る時が来たのかもしれない…。

 

なにが言いたいのかわからなかったし、けっこうイラついた。

けど、そんなでも解釈すると、

 

元カノだか浮気相手だか、森の女、南(里々佳)が現れても平静さをとりあえずは保っていられる朝子。だけど森に妊娠を伝えて、いったい何を得ようとしたのか、たぶん自分の今を変えたかっただけで、森との関係をひとつ先へ進める気はなかったんではないかな。どんな変化が起きて自分は何を選択するだろうかと、自身の現状からの脱却だけが目的だったように思う。だから、たぶん、この二人はうまくいかない(どっちとも取れるラストだけど、信号の色からも関係は続くとみるのが妥当)。例え一緒になってもやがて不満が出てきて壊れる。森だって妊娠を告げられて状況を変えようと思い始めたわけで、あまりに他人任せ。何より、嘘をついたしつかれた。

でも、こういうカップル、多いかもね。自分じゃ決断に至れないから、きっかけをふってみる、とかいうの。

 

作品的には、だから? という感じ。

心情に焦点を当てているわりには観る側に不親切で独りよがり。伝えるには余分なもの、必要なものを見極めないと。(とか偉そうに言ってみる)

 

★★

 

 

制作プロダクション 角川大映スタジオ