総理大臣就任後、ほとんど会食をしていない高市総理大臣の働き方について、さまざまな評価があります。中には「ひきこもり宰相」などと揶揄する人もいますが、私は高市総理大臣の働きぶりを非常に高く評価し、総理大臣としての働き方としては当然と思います。
高市総理大臣の働きぶりとスピード感はビジネス界や医療界では当たり前であり、高市氏のような働きぶりを示す女性リーダーは各界にたくさんいるのではないでしょうか。特に女性の場合、「ガラスの天井」と言われてきたように、男性中心の社会の中で高いポジションを目指すためには男性以上に闘わなければならず、その中で闘い方を身に付け、男性に警戒感を抱かせないようにして強かにのし上がってきたのです。もしかしたら、社会の中で「闘う力」は男性より上かもしれません。
政界のみならず、ビジネス界、医療界など、どのような業界でも指導層の人々は会食を好みます。その目的は、会食で懇意になりながら交渉する、あるいはその業界での政治力を高め仕事を進めやすくするのが主な目的でしょうが、酒席での会食そのものが大好きという人も多いことでしょう。ただ、酒席で会食している間は、その業界や組織が抱える問題点や戦略を緻密に整理し考察することはできません。
国会議員の仕事は、あるイシューについて委員会で質疑するために、官僚のサポートを受けながら、そのイシューに関連する多くの資料を集め、読破し、問題点を整理し、考察し、質問の優先順位とポイントを把握し、本番に備えることです。まさに、このプロセスと洗練された質疑をこなせる脳こそが、「政治脳(Political Brain)」です。総理大臣であれば、国会開催中は日々が本会議と委員会に明け暮れ、その合間に外交と面会もこなさないといけません。会食している暇が無いのは、本来当然のことです。
私は2年間だけの陣笠代議士として30回以上の委員会質疑を経験しましたが、質問前の数日は週末も含めて議員会館に引きこもり、官僚や国会図書館のスタッフが集めてくれた資料や報告書を読破し、質問草案を作成し、委員会質疑に備えました。週末に地元の有権者と交流や国会報告などを精力的にこなさないといけないとは思っていましたが、質疑に備えて勉強と整理に使う時間を優先したため、地元有権者にとっては不満の多い代議士であったことでしょう。しかしながら、議員としてベストを尽くしたので後悔はしていません。
以上、「国会議員の主な仕事は、会食して親交を深め政治人脈を増やすこと」などという政治家の仕事のあり様はもう通用しない時代になりつつあります。時間の使い方の上手な政治家は、議員会館や国会内の一室で、飲食なしで政策議論しています。政策立案能力はもちろんですが、答弁力、外交でのコミュニケーション能力と英語力、政治的戦略センスなど、国会議員には「本来あるべき政治脳(Political Brain)」が求められているのです。
以上、高市総理大臣の働きぶりが、多くの国会議員の働き方意識を覚醒させることを願っています。尚、覚醒したといわれる防衛大臣 小泉進次郎氏の答弁も見事であり、敬意を表したいと思います。


