論文:大都市制度改革  その6 | 宮沢たかひと Powered by Ameba

■国政を担う政治家に求められるもの

 

 橋下氏が指摘されるように、今の国政、自治体の多くの政治家たちは、どのような資質を持ち、その資質が政治リーダーに相応しいか否かの検証もされることなしに、各党の内部事情や地縁、血縁、世襲などに基づいて選ばれている。これが、国際社会から政治が二流と言われ、政治の停滞を招いている元凶である。

 

 霞が関官僚にも大きな問題がある。しかし、それなりの選抜試験を通過し、総じて基礎学力がある官僚たちをいじめて追放しても、日本国が得るものはない。むしろ、「変われない官僚たち」を「変えることができず、言うなりになっている政治家たち」に問題がある。永田町では、当選回数に応じてポストを与えられたり、党内の人事が決められるのが慣例であるが、この時代、従来の政治家としての経験は役に立たないのではないか。特に、IT全盛の時代、できるだけデジタル世代に任せる方向にむけるべきであろう。橋下氏も述べているように、政策を単発的に発信するだけではだめで、それを実行に移せるか政治家が必要とされている。100年後も安定し、繁栄する日本国となるためには、適正な時期での世代交代ができ、優れた政治リーダーが絶え間なく生まれる社会にすることである。

 

 従来の国政選挙および地方選挙においては、候補者の資質はとくに問われることなく、地元での地縁血縁を土台にして、地元での顔の広さと利益誘導の可否に応じてリーダーが選ばれてきた。しかしながら、少なくとも国政においてはこのようなプロセスでのリーダー選択では、これからの日本を引っ張っていくことは不可能である。そこで、日本国全体として、国家、都道府県、大都市、市町村それぞれにおいて、リーダーとして要求される資質を明確に定義し、その資質に見合う能力を持った人材を選挙民に提示し、その中から見識ある人材を選挙で選択するというプロセスを考えるべきあろう。資質に見合う能力とは、論理的思考力、共感力、政治的知識、法律的知識、バランス感覚、英語力、等。脳機能は加齢とともに低下して行くので、党として厳密なる年齢制限を設定するのも重要である。必ずしも学歴を偏重するものではなく、経歴の精査と多重面接で選考する。このような優れた候補者を備え、なおかつ施策が一致した政党をいくつかつくり、選挙民の投票意欲を削がないようにすれば、嫌でも投票率は向上するはずである。

 

■大都市首長に求められるもの

 

 一言でいえば、首長には「国家戦略とグローバリゼーションを念頭に置いた地方自治をビジネス感覚で行う能力」とが求められる。橋下氏らが提唱する「二層一本の仕組み」(二層は基礎自治体と広域自治体、一本は国)により、単純な上下関係でなく、それぞれの役割を相互に認識し、将来は道州制に移行しながら国家の繁栄を目指すのは道理にかなっている。その他、官僚たちと徹底して討論し、官僚たちを説得でき、あるいは官僚や市民の反対に遭遇しても、中長期的国家および大都市の展望に基づき、強引に施策を押し通せるだけの闘争能力を備えている必要がある。

 

 地方自治体の首長のみならず、国政に関わる政治家も含め、必要なのは「勉強力」と「発信力」である。現在、政治家としての豊富な経験は役に立たない。要求されるのは、テクノロジーと情勢の変化に応じて、勉強し、現状を把握し、新たな施策をスピーディに発信できる能力である。