論文:大都市制度改革  その5 | 宮沢たかひと Powered by Ameba

■大都市を構築する上で念頭に置くべきこと

 

1. 原発事故に備えた都市分布ポートフォリオ

 

大都市と原子力発電所の位置関係は重要である。地図1に原子力発電所の位置を★印でプロットした。3.11震災後の原発事故で、原子力発電所がひとたび事故を起こせば、その周囲数十キロ圏が立ち入り禁止になる可能性を我々は思い知らされた。さらに、原子力発電所はテロの標的になりうることを認識していなければならない。数十年間は原子力発電所がなくなることはないので、原子力発電所が近くにない都市は安全上重要である。例えば、釧路地区、秋田地区、長野松本地区、新宮地区、高知地区、松江地区、宮崎地区は少なくとも原発事故の被害は及びにくい。また、どの都市が壊滅しても、その都市と周辺の住民は近隣の他の大都市に避難できるよう、普段から協議と訓練をしていることが重要である。

 

2.自衛隊基地との位置関係

 

 残念ながら、自衛隊基地の全国分布地図は入手できなかったが、国防および防災の観点から、大都市と自衛隊基地との位置関係は重要である。日常から、住民と自衛隊の関係を良好にしておく必要がある。災害時には、大都市の首長の指示で周辺の自衛隊が出動できるようにする。国家が指揮を執ることの限界については3.11で学習したはずである。

 

3.過疎地をなくすことも目的の一つ

 

 全国的に、大都市圏を除き、過疎化が急速に進んでいる現状を防ぐことも本大都市構想の目的である。例えば、釧路地区、函館青森地区、新宮地区、高知地区、宮崎地区等は積極的にカネを投入し、ヒトとカネが集まるようにする必要がある。その結果として、周辺地域の過疎化が防ぐことができる。街づくりの細かい点は、自治体、市民、民間企業に任せればよい。

 

4.経済特区

 

 新興大都市や中堅大都市については、特に経済的優遇措置が必要である。例えば、法人税を10~20%と大幅に下げれば、国内のみならず、海外からも企業を誘致することができる。また、まずは海上輸送路を、次いで陸上輸送路も整備する必要がある。

 

5.アメリカ軍基地と自衛隊基地

 

 日本人は戦後、アメリカ軍に守られていることが当たり前と考え、国防に無頓着すぎた。各大都市を発展させる上で、アメリカ軍を含め、60年以上も沖縄に押し付けてきたアメリカ軍基地を誘致しなければいけない事態も念頭に置いて都市計画を練るべきである。日本人全員が国防について考える時が来ている。

 

6.各大都市が目指すのは巨大シンガポール様国家

 

 日本は資源がない。箱モノも軽視してはいけないが、国家財産の中心はヒトである。モデルとするのはシンガポールであるが、シンガポールを単に真似するのではなく、それを凌駕する魅力的都市をつくることを目指す。それぞれの都市が競争して世界から優秀な頭脳を誘致する努力を惜しまなず、健全な大都市間競争があれば、自動的に国家全体は発展して行く。

 

7.空港は各大都市近隣に整備

 

 地域発展と災害時のために空港は重要な施設である。どの地域にどのくらいの規模の空港を設置するかは国家全体で決めるべきである。

 

8.道州制にこだわらず、大都市を中心とした周辺市町村の競争を促す

 

 先に述べたように、日本全体が活性化し、発展するためには、大都市間のみならず、市町村間でも競争が必要である。そのためには、大都市も市町村もMBAなどの資格を持つ経営者を自治体に積極的に雇用するべきである。

 

9.ロシア、北朝鮮との都市間貿易の活性化

 

 ロシアとの間には北方領土問題がある。素人が軽々しく述べるべきことではないが、従来のようにただ「返還せよ」だけを言い続けても何も生まれないのではないか。この際、北方領土はロシア領と認め、その代わり経済的交流を深め、東北地方や北海道の都市が貿易で潤った方が国家の発展に寄与するのではないか。

 北朝鮮については全く見通しが立たないが、正常な国交が成立することがあれば、やはり積極的に貿易を始めてもいいのではないか。北朝鮮の民衆自身に罪はないのだから。
※追記(2024年3月2日):上記は現在のウクライナ戦争や東アジア安全保障情勢の緊張が存在しない2012年当時の記載。