★★★★★★★★☆☆

1982年 120min.

ネタバレ せずにはおられませんな。

敬称略

 

 

 監督 ジョージ・A・ロメロ

 脚本 スティーヴン・キング

 製作 リチャード・P・ルービンスタイン

 音楽 ジョン・ハリスン

 特殊メイクアップ トム・サヴィーニ

 

 ビリーの父:トム・アトキンス

 ごみ収集の男:トム・サヴィーニ

 ハンク:エド・ハリス

 ジョディ・ベリル:スティーヴン・キング

 リチャード:レスリー・ニールセン

 ヘンリー:ハル・ホルブルック

 ウィルマ:エイドリアン・バーボー

 プラット:E・G・マーシャル

 

 

 さて、ということで、「トワイライトゾーン 超次元の体験」に先駆けての1年前に公開されたオムニバス映画、しかもジョージ・A・ロメロとリチャード・P・ルービンスタインというゾンビコンビが、常連トム・サヴィーニに加えてスティーヴン・キングとも組んで世に送り出したという、ばりばりホラー映画であります。

 

 いやなにしろこれ、ほんとおもろいです。オープニングはアメコミからという斬新な手法で、けっこう考えてあるなとうならされますよ。しかもこれ全5話のオムニバスですけれど、全部スティーヴン・キングの書下ろしってんですからね、ファンにはたまりません。しかもキング、出演までしちゃってますしね。さらに、オープニングとエンディングに出てくる子供役ジョー・ヒルくんはキングの実の息子という……。気合入ってるというか、いやいや私物化やろというか、賛否ありそうですけどね、わたしはほのぼのとしましたよ。ちなみに息子くん、この当時はかわいいですけど、今現在50歳、お父さんそっくりになったというザンネンな結果ではあります。

 

 さて、そのオープニングでさっそうと登場するのは、ホラー映画と言えばこの人、的なトム・アトキンス。この人出てくるだけで、お、ホラーやなと身構えることになりますよね。「リーサル・ウェポン」に出てた時は、なのでちょっとビックリではありましたけれど、まぎれもないホラー映画役者ですよ。たぶん。

 

↑トム・アトキンス。ちょっと我がドラゴンズのジャリエル・ロドリゲス似ではあります。

 

 で、このオープニングがほんとに凝ってるんですね。アメコミのホラーマンガを映像化するというか、観客がホラーマンガの世界に入り込む、というか。さすがホラー小説界の帝王、スティーヴン・キング原作なのでありますね。トム・アトキンスをお父さんにしたってのがもうそれらしすぎて、逆に笑えるというもんですよ。そもそもこのホラー映画界の名俳優トム・アトキンスに、ホラーマンガを「くだらんもの」と言わせるというのがシャレが効きすぎてます。

 

↑スティーヴン・キングの息子くんです。かわいいのに……。

 

 曲もいいんですよ、これ。ジョン・ハリソン。でもわたしこの方、知らないです。なんか調べてみても時計職人の方しかでてきませんね。でもこれ、名曲ですよ。忘れられないくらい耳につくんです。しかもまさにホラー映画の音楽、って感じで。すごい才能だと思いますね。

 

 で、もうそうやってのっけからグイグイ引き込まれて、第1話にすんなり突入するわけです。

 

 

↑第1話タイトル。こうやってマンガだと認識させておいて、

 

↑マンガの一コマから……、

 

↑実写に変わるわけです。

 

 いいじゃないですか。おおっ、てなりますよ。今の時代、こんな手法は山ほどあるのでしょうが、当時はこれわたし、初めて観ましたからね。ほほう、ってなったのを鮮明に覚えてます。

 

 で、いよいよ本編開始となるわけですが、いきなり今度はモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」の第2楽章が流れてきます。「エイリアン」でも使われてましたけれど、ホラーの雰囲気だったのが一変しますので、逆にこれ怖さを予感させることとなってますよ。

 

↑でもってエド・ハリス。

 

 この方、「ライトスタッフ」とか「アビス」、「アポロ13」などに出演してて、今でこそ性格俳優として名高いですけれど、若いころ(頭がちょっと寂しいですけど、32歳です)はこうしてホラー映画で下積みしてたわけですね。時代を感じさせます。なんか本作では、めちゃくちゃモテてましたけど、わたしにはイミがわかりませんでした。

 

 内容は、父親を殺した娘ってのが、父の日にゾンビと化したその父親に殺される、ってお話です。殺されるのは娘だけじゃなくって、なんか集まった親戚一同、なんならメイドさんまで殺られるんですけれども、まあゾンビものですからね、ジョージ・A・ロメロとトム・サヴィーニにとってはお手のものなのでしょう。

 

↑こうして、なんかよく観るようなシーンですけど、ゾンビ出現、となります。

 

 ていうか、わたしいつも思うんですけどね、「パタリアン」とか「スペースバンパイア」でもそうだったんですけど、こういうゾンビと化した骸骨がしゃべったりするときに、唇がないのに“B”とか“M”とか“P”の発音がきれいなんですよね。アメリカの骸骨ってのはみんな腹話術師なんか、って思いますよ。ゼッタイ無理ですもん。だからちょっとそこがマイナスっちゃマイナスです。

 

 あと、オープニングから第1話のわずかの間に、大きな音でビックリさせる演出も多いんですよ。これちょっとロメロっぽくないですね。前からずっと言ってますけど、ビックリさせるのはホラーじゃないですからね。ので、これもマイナスです。せっかくなのにもったいないなあ、という気がして仕方ないです。

 

↑ゾンビったら、力もめっちゃ強いですし。軽々とクビひねってますよ。

 

 怖いもんは怖いんですよ。でもなんかザンネンだなあ、で2話に移っちゃいました。

 

 

↑宇宙からの隕石を触ったせいで、草人間と化してしまう男のお話です。

 

 キング自身が出演してるのがこれですね。

 

↑キング、隕石を素手でさわってますよ。

 

 もう、なんで宇宙から降ってきたものを平気で触るかなあ、と嘆息ですけれど、ちょっとオツムの弱い人の役のようなので、まあナットクですかね。

 

↑こちらが、われらがスティーヴン・キングです。

 

 ホラー小説を書いてそうな感じはあります。本作ではどの話もちょっとコメディ要素も含まれてますから、サム・ライミを意識したのかな、なんて思ったりもしました。キングの小説ではコメディ要素はまったくと言っていいほどありませんので、新鮮ではありましたね。

 

↑わたしこのシーン、この映画ではなんか特に好きというか、印象に残ってるというか、です。

 

 いやこの飲み物がですね、なんなんでしょうね、なんかにお酒まぜてるみたいなんですけど、わたしお酒まったく飲めないのでよくわからなくって、どうにもビックルに見えてしまって、ものすごくおいしそうなんですよ。そんなことか、って思われると思いますけど、もう映画館で観た当初からずっとそれが気になってるのです。

 

↑そうこうしてるとこんなんなってしまいます。

 

↑キングもこうなりました。

 

 でもね、これ、宇宙からの落下物ですからね。だからこうなることなんてありえんやろ、ではないんですよ。ひょっとしたら、あるかもしれないじゃないですか。そうなるとやっぱり、なんかおちゃらけてる感じはあっても、怖いわけです。こんなんなっちゃったらどうしよう、みたいな。それやっぱりスティーヴン・キングのスティーヴン・キングたる所以、なのでしょうね。なにしろ「キング」なのですからね。ホラー小説界の「王様」なのです。

 

↑偶然でしょうけれど、丸で囲った部分、キングの顔に見えてしまいました。

 

 偶然なら偶然で、そらまたすごいわけです。

 

↑で、モリゾーかキッコロかになって、猟銃自殺してしまいました。

 

 つくづく、あれに触らんかったら、と悔やまれてなりません。

 

 ていうか、その後の地球はどうなったのでしょうね。なんか周りじゅう草だらけになってましたけど、無事だったのでしょうか。それは気になるところではあります。

 

 

↑妻が不倫していることをつきとめた男が、その妻と不倫相手を殺すものの、その後ゾンビとなった殺した二人に逆に殺される、というお話。レスリー・ニールセン主演ですよ。

 

 やっぱりレスリー・ニールセンと言ったら「フライングハイ」に始まって「裸の銃を持つ男」シリーズ、テレビシリーズ「フライングコップ」なんかのコメディアンて印象ですよね。でも若いころはそらもうたくさんのいろんなジャンルの映画に出ておられまして、わたしは「ポセイドン・アドベンチャー」の船長役が強く印象に残ってます。もちろんコメディアンですからね、主戦場はコメディ映画なわけですが。

 

↑レスリー・ニールセン。

 

 こうしてるとやっぱり「裸の銃を持つ男」ですけど。

 

↑妻と不倫していた男の役、テッド・ダンソン。

 

 男前ですけど、胸毛はキャンセルです。

 

 殺し方は凝ってますよ。浜辺に穴掘ってそこに首だけ出して埋めて。そのあと放置して潮が満ちてきて、溺死させる、という。怖いですねー、おそろしいですねー、って淀川さんならきっと言うと思いますよ。よくこんなん考えつくな、って思います。キング、やっぱりどっか頭の構造がおかしいのでしょうね。いや、いい意味で、ですよ。大学時代はわたし、キング作品は読破しましたからね。まあだから、そういうわたしも、頭の構造がどっかおかしいのかもです。

 

↑テッド・ダンソン、あれ、ちょっと頭頂部、さびしくないか、て感じはありましたが。

 

↑妻は先に水につかりそうになってます。

 

 その後テッド・ダンソンもこうなるわけですけど、不倫ですからね、そらしゃあないわ、とは思いましたよ。昔の日本だったら、切り捨て御免、だったわけですしね。

 

↑こりゃつらいです。もうだって、死ぬしかないじゃないですか。

 

↑で、メル・ギブソンになりました。

 

 まあ、メル・ギブソンなら助かりそうですけど。

 

 でもこれで終わりじゃない、ってのが怖いわけですよ。どうでしょう、わたし的には全5話の中ではこの話が一番怖いですかね。いやま、倫理的(?)に言えば、レスリー・ニールセンは裏切られたほうなわけですから、あとから復讐されるってのは理不尽なのでしょうけれども、まあ二人の恨みが勝ったってことでしょう。

 

↑これで、当時56歳だそうです。同い年ですよ。いろんなイミでビックリです。

 

↑復讐はこわい、というお話でした。でもやっぱり理不尽ではありますけどね。

 

 

↑大学の地下室で見つけた箱の中に怪物が、ってお話。キングっぽいっちゃ、ぽいです。

 

↑名優ハル・ホルブルック主演、です。

 

 この方、どちらかというとTVとか舞台の人のようですので、わたしはよくは知りません。よくは知りませんが、幾度かホラー映画でお会いしております。昨年95歳で亡くなられました大御所なのでありますね。気の強い妻の尻に完全に敷かれている気の弱そうな大学教授、って、このシーン観ただけでわかりますよね。

 

↑エイドリアン・バーボー。気の強すぎる奥さん役です。

 

 37歳ですよ。もうちょっと行ってるのかと思いました。老け演技ならいいですけど、いずれにしてもたしかもう少し美人かわいい役がらの人、というイメージでしたから、ビックリしました。ジョン・カーペンター監督の奥さんだったこともある人で、けっこういい女的な役が多かったですからね。

 

↑いや、そんなとこに手を入れるから、と思っても時すでに遅いわけです。

 

↑で、こやつが出てきましたよ。怪物、いうか、マンドリルですけど。

 

 以外に簡単に実物が見られましたけど、これがまた大騒動を引き起こします。怪物ものの定番ですけれど、だから安心して怖がれるわけですね。

 

↑学生のチャーリー。こいつも言うこと聞かないからいかんのですよ。

 

↑この一連のシーンは緊張マックスでしたね。さすが「ゾンビ」の監督なわけです。

 

 すっかり忘れてましたけど、監督、ジョージ・A・ロメロでした。

 

↑で、あえなくチャーリー撃沈、となります。

 

 ここらへんを目の当たりにしていたのは、ハル・ホルブルックの友人である、同じ大学教授のスタンレー教授(演じるのはフリッツ・ウィーヴァーという人ですが、わたしはまったく知りません。テレビ界の人なのでしょうかね)。で、ハル・ホルブルックに助けを求めるが、その話を聞いたハル・ホルブルックは、今や殺したいほど憎んでいる妻をこの怪物に食わせようと謀略をめぐらす、ということになってくるのですね。

 

↑やけにハル・ホルブルックが冷静やな、と思ったのですよ。

 

 そしたらそんなことを考えていたなんてまあ、あとでビックリでした。いい演出ですし、いい演技です。素晴らしいです。

 

↑ので、ここのシーンでは緊張せずに観られました。

 

 冷静なハル・ホルブルックのおかげなわけですよ。まだわれわれ観客にはこの時点では、ハル・ホルブルックの謀略はわからないですからね。演技力と演出力が完全にあうんの呼吸、という感じなのですね。

 

 で、ラストはなんかもうすっかり溜飲が下がる、ということになりました。映画バンザイ、なのです。

 

 

↑潔癖症の老人が、大量のゴキブリに襲われるお話。

 

 始まりに流れる曲が「ゾンビ」のエンディングで流れた曲って楽屋落ちが、ファンにはたまりませんね。こちらも大御所、E・G・マーシャルの一人演技をとくとご覧あれ、というところでしょうか。

 

 E・G・マーシャル、名わき役ですね。1998年に肺がんで亡くなられてます。古い人なのでわたしもよく知ってるわけではないのですけれども、「スーパーマンⅡ」では大統領の役をやったり、ハリウッドでは欠かせない役者さんでありました。

 

↑こちらがE・G・マーシャル、狂気の老人です。いや、髪型!

 

↑で、あっという間にこうなりますよ。

 

 最初は、ボタンひとつ押すのにもティッシュで指をくるんで、なんてして潔癖症ぶりを発揮してるのに、なんでこんなに次々とゴキブリが出てくんねん、と思ってましたけど、そんな思いをあざ笑うかのようにあっという間のゴキブリたくさんにはもう笑うしかなかったです。

 

↑で、こうなって……

 

↑こうなって、

 

↑さらにこうなって、

 

↑そんなところに閉じこもろうとするもんだから……

 

↑こんなんなるわけですよ。

 

↑これは笑いました。

 

 まあ、E・G・マーシャルも、なんかの社長の役でしたけれど、ちょっと遅刻した社員を簡単にクビにしたり、なんか下請けの会社の人間をパワハラで自殺に追いやったりなんかして、ロクでもないヤツでしたからね、こうして報いを受けるのは当然なわけで、観ていて、キモかったですけど、スカッとはしました。

 

 

↑そしてエンディング。左にトム・サヴィーニ、最近よく見ますね。

 

 で、このエンディングがオープニングとつながって、めでたしめでたし、とはならず、オープニングで「こんなくだらんもの」と言ってマンガを捨てられた息子が、そのマンガ雑誌についていたプレゼントで取り寄せた呪いのわら人形で父親を呪い殺す、というところでエンドタイトルに入るという……。いや、最後の最後で最強の理不尽が待っておりましたよ。そんなんで殺されたら、世のお父さん、何人いても足りませんね。まあ、それがホラー映画、なのですけれどもね。わたし的には、後味が悪いとまではいきませんでしたけれども、まあなにしろわたしに息子がいなくてよかった、と思った次第です。

 

↑問題のシーンなわけです。

 

 下手に情操教育もできませんね。怖い世の中になったもんです。

 

 総括しますと、これって5話全部、なんかホラー的な不思議なことが起こってみんな死ぬんですけど、死ぬのはみんな、悪いことやってその報いを受けるって感じなんですね。そこがキングっぽいというよりもロメロっぽいって感じがしました。一番キング的なのは、キング自身が主演した第2話ですかね。けっこうこわくて、楽しめる作品ですよ。もうこの映画、何度目かわからないほど観てますけど、ほんとにおもしろいホラー映画だと思います。演出と演技と技術の結集、しかもそれが5話も観られる。ホラー映画の傑作であることは間違いないですね。とってもいい時間でした。

 

 

今日の一言

「モップで拭くだけで血だまりはキレイになるんかなあ」

 

 

レビューさくいん

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