回廊
傘のない町に
生まれた
傘のない町で
育った
僕は知らない
傘を知らない
雨が空から
落ちるのを
不思議そうな
まなこで
見つめていたんだ
いつもは見えていた
遠い山も
鉄工所の鉄塔も
霞んで
おぼろ気で
不安なのに
これでいいと
諦めに似た
優しい気持ちに
なれるんだ
きっと僕は
そぼ降る雨の中
長い回廊のはしっこに
佇んで
静かで
何一つ変わらない
漂う風もない
時の止まった
部屋を
じっと
見ている
だけなんだ
こーら
シュポッ!
独特なフォルムの瓶の
王冠を飛ばす
ゴクゴクと
一気に飲み干す
若かりし日々の
定番
家族が増えれば
1.5リットルの
ペットボトルで
常備され
冷蔵庫を開けば
扉に同化して
待っていました!
と
いつでも
爽快感を味わえる
その道を
選べた者の
定番
当たり前の
ように
爽快感を…
孤独に
時を過ごした
昨今
1.5リットルの
ペットボトルのコーラ
仕事帰りの
深夜のコンビニで
購入し
回しながら
封を切り
一瞬の
爽快感を
得て
眠る
冷蔵庫と
縁を断ち切られた
コーラ
散らかった
テーブルに放置された
ままの翌朝
余裕もなく
仕事へ向かう
僕を
そのまま
無言で
見送る
そんな日々は
何日続いただろうか
やっと
休日を迎え
勝手気ままに
時間の狂った
朝に目覚めた時
喉が乾いていた
散らかった
テーブルに目をやり
せつな気な
コーラに気づく
回しながら
蓋を開けるが
弾けるような
爽快な音は
もうしない
グラスも使わずに
ゴクゴク飲むと
気の抜けた
ただの砂糖水に
なっていた
甘ったるいだけの
こーら
こんな
僕を
写し出す
食道を通り
胃に達した頃
それを
感じた