闇に佇みて -10ページ目

回廊



傘のない町に
生まれた

傘のない町で
育った

僕は知らない

傘を知らない




雨が空から
落ちるのを

不思議そうな
まなこで
見つめていたんだ


いつもは見えていた
遠い山も

鉄工所の鉄塔も

霞んで

おぼろ気で


不安なのに
これでいいと

諦めに似た
優しい気持ちに
なれるんだ



きっと僕は


そぼ降る雨の中

長い回廊のはしっこに
佇んで


静かで
何一つ変わらない

漂う風もない
時の止まった
部屋を


じっと

見ている
だけなんだ


やすらか



静けさに
気づいた時

もうすでに
時は経ち


でも
これで
いい

穏やかに
過ごせる


想い出まで

消えても



思い出せなく

なっても










この方が



いい








こーら



シュポッ!


独特なフォルムの瓶の
王冠を飛ばす


ゴクゴクと
一気に飲み干す

若かりし日々の
定番



家族が増えれば

1.5リットルの
ペットボトルで
常備され


冷蔵庫を開けば
扉に同化して

待っていました!


いつでも
爽快感を味わえる

その道を
選べた者の
定番


当たり前の
ように

爽快感を…




孤独に
時を過ごした
昨今


1.5リットルの
ペットボトルのコーラ


仕事帰りの
深夜のコンビニで
購入し

回しながら
封を切り

一瞬の
爽快感を
得て
眠る


冷蔵庫と
縁を断ち切られた
コーラ


散らかった
テーブルに放置された
ままの翌朝


余裕もなく
仕事へ向かう
僕を

そのまま
無言で
見送る


そんな日々は
何日続いただろうか




やっと
休日を迎え

勝手気ままに
時間の狂った
朝に目覚めた時

喉が乾いていた



散らかった
テーブルに目をやり


せつな気な
コーラに気づく

回しながら
蓋を開けるが

弾けるような
爽快な音は
もうしない



グラスも使わずに
ゴクゴク飲むと


気の抜けた
ただの砂糖水に
なっていた


甘ったるいだけの
こーら



こんな
僕を

写し出す



食道を通り
胃に達した頃


それを


感じた