貴重なものが7000点。県重要文化財の松井屋酒造資料館で心を学ぶ。 | 大工の休み時間

大工の休み時間

三島建設の2代目大工が書く日記です。
大工成分は少なめです。

こんばんは。

文化財な酒蔵見学してきました。

2代目大工の三島です。



前回の加治田城山登り。

富加町の小さな名所。山登りをして加治田城を散策。


その後はのんびり下山して岐阜に戻る。





と、その途中で寄り道。


とは言え加治田城の登り口からすぐ。

気になってた場所があるのです。




たしかあの辺り、か。


ゆっくり自転車を走らせる。



うん、ココだココだ。

名前は「松井屋酒造資料館」です。



駐車場には文化財のマーク。

そう、この資料館。

ただ酒蔵を解放しているだけではない。


しっかり県の指定を受けたスゴイヤツなのです。





よーし、まだ時間もある。

バッチリ見学していきますよ!



中に入ると目に入る。

立派な木造の母家です。

この建物も文化財。

築200年以上という歴史がある。


は〜、すんごいなぁ。



しばらくするとご主人さんの登場。

なんと酒蔵の案内をしてくれるそう。




え!


いいの?



私1人なんだけどなぁ。




入場料300円を払って案内開始。


一つ一つ丁寧な説明を受ける。




太い窓の格子「鬼格子」。

カーテン代わりの「蔀戸(しとみど)」。


大戸(おおと)にくぐり戸。

生活の工夫が凝らされまくり。

豪華な作りですよねぇ。



母家を抜けて酒蔵へ。


その間にあるのは井戸とコレ。

デッカい釜です。

米を入れやすいよう釜が埋めてある。
火は下に潜って調整するのだそう。


そんでもってこの釜。

なんと今でも現役。


レトロな酒蔵はたくさんある。

でもココまで江戸時代なのは流石に珍しい。



さすが重要文化財。





そしていよいよ酒蔵の中へ。

中に入ると沢山のタンク。

さすがに木の樽は使っていない。

ホーローの樽で仕込んでいる。


ソレでもかなり昔のまま感。




酒蔵の上を見ると大きな滑車。

オニグルマという名前。

今で言う固定式クレーン。


コレで二階荷物を運んでいたらしい。




どれも一つ一つ解説して貰える。

しかもアルバイトではなく社長自らの案内。


なんなんだこのマンツーマン。

私、300円しか払っていません。




2倍……いや3倍払っても足りないほど。



採算度外視。

ありえないほど豪華な蔵元見学。


ココ以外、絶対にありえません。




コチラは麹を作る麹室。


そして今でも使っている事務室。




樽を治す部屋や従業員の休憩部屋……等々。



当時の生活用具もそのままある。

コレらももちろん重要文化財。



内訳は母家1棟、酒蔵2棟。

酒造用具3000点に酒造文書500点。

その他の生活用具を含めて計7000点以上が対象。



もはやどれが文化財か把握できない。


そんな圧倒的な文化財の量。





でも思う素朴な疑問。


「なんでこんなに残ったのか。」





社長に聞くとあっけらかんと言う。


「あんまり儲からなかったからねぇ。」

「設備が古いまま残っただけ。」


との返事。




あはははは。

なんとも正直な返答。



社長の人柄がよく分かります。



というよりこの丁寧な案内。

ソレだけでも分かるかな。



何度も言うけど払ったのはたった300円。

コレで1時間近く教えてくれる。



時給とか考えるのも馬鹿馬鹿しい。


でも終始ニコニコとなんでも教えてくれる。

それも包み隠さない本音ばかり。



人としての器が違うなぁ。



普通は時給とか商売に不利とか考えてしまう。

私ももちろんそう思うタチ。



うむむむむ。

コレが長く続く秘訣なのかもしれないなぁ。



大きく儲けるか、細く長く続けるのか。


日本人の老舗文化。

その心の部分を感じますよね。



私も個人の大工。

見習うべき部分があります。





1時間ほどアチコチ見学。

最後にはもちろんお酒を購入。

ふふふ。


今度の晩酌が楽しみだ。




お礼を言って退館。


再度自転車にまたがって家路へ。






うん。

良い所…だったな。


教えてもらったのは酒蔵の歴史だけでは無い。



経営学を超越した老舗の心。

私にとって少し欠けている大切なモノ。


そんなお酒以上に良いものを持ち帰ってなんだか心がポカポカと温かくなった富加町にある松井屋酒造資料館だったのでした。