ターゲット―出品者は殺人鬼― | akaneの鑑賞記録

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ネットの中古品売買取引のやりとりをきっかけに、主人公が思いがけないトラブルに巻き起こまれるさまを描いた韓国製サスペンススリラー。

新居に引っ越したスヒョンはネットのフリマサービスで中古の洗濯機を購入する。しかし、後日壊れた洗濯機が届き、スヒョンは詐欺にあったことに気づく。警察から捜査に時間がかかると告げられたスヒョンは、売り主のアカウントに直接連絡をとり、返金を要求するが相手にされない。そのことで感情的になったスヒョンは、相手に怒りに満ちたメッセージを送りつけてしまうが、それ以来、彼女の身に恐ろしいことが次々と起こり始める。捜査に動き出した警察は出品者の家を訪れるが、そこには思いもよらない事態が待ち受けていた。
 

 

 



これは面白かったです!!

 

フリマサイトでのトラブルから始まるのですが、ともかく怒涛のスピード感。
そして「これでもか!」「これでもか!」とどんどん畳みかけて来る狂気に満ちた犯人の容赦のなさ、最後まで息も付けない面白さです。




オープニング。
1人の男子大学生が、ほぼ新品のiMacを14万円ぐらいでフリマに出品します。
多くの応募がありましたが、彼は可愛い顔写真の女性と交渉を始めます。
もちろん下心あり。

これもある種のネット犯罪ですね。

 

 

彼女は動作を確認したいと言い出し、ソワソワしながら待っていると…やってきたのは男性。
「妹に急用が出来たので代わりに動作確認と支払に来た」と言われ落胆する大学生でしたが、男を部屋に通します。

動作確認をした男は「問題ないですね」と言ってお金を渡し、受け取った大学生の腹にナイフを!!
血まみれで死にゆく大学生には一切構わず、男は彼の携帯を開いて、部屋にある売れそうなものを片っ端から写真に撮り、フリマに出品し始めます。




30代女性、インテリア会社で働くチャン・スヒョン。

 

 

 

 

内装工事現場のチーム長となり、完璧に仕事をしようとしますが、男性ばかりの職人たちは思うように作業をしてくれず、ついつい声を荒げてしまいます。
会社に戻ると、その件で上司からネチネチと責められストレスは溜まるばかり。

 

やっと引っ越したばかりの新居に戻ると、洗濯機は壊れて動かなくなっていました。
物入りが続いたスヒョンは、フリマで中古の洗濯機を買いますが、これが先程の大学生の部屋から出品されたものだったのです。

お金も振りこみ、配送業者に設置してもらったのですが、不良品で使えず!
さっそく売主に連絡しましたが、アカウントも口座も削除されていてコンタクトが取れません。

 

 

警察に相談するもろくに取り合ってくれず、怒りの収まらないスヒョンは、執念で別アカに乗り換えていた犯人を探しだし「これは詐欺です!購入してはダメ!」と書き込みをしまくりました。
犯人から届いたメッセージにも、挑戦的な言葉で応酬するスヒョン。


怒った犯人は即座にスヒョンのIDを検索して住所その他の個人情報を収集、サイトも携帯も乗っ取ってしまいます。
まず、スヒョンのフリマサイトに「洗濯機を無料で譲渡します」と、携帯番号まで晒して書き込んだため、ガンガン電話がかかってきます。

さらには、チキンやピザなど、大量のデリバリーが届くなど、執拗な嫌がらせが始まります。

 

 


この辺りまでは

 


などでも描かれていた手法ですね。

 

 


ようやく警察も動き出してくれましたが、犯人の嫌がらせは益々エスカレート。

 

 

 

携帯番号を変えても、もはやどうにもなりません。


母親のIDを使ってスヒョンにLINEして、お金を振り込ませようとしたり、業者を装って防犯カメラを設置し、玄関ドアの暗証番号を入手して部屋に侵入したり。

 

 


警察も殺人事件が絡んでいるとわかって、ようやく本格的に捜査に取り組んでくれるのですが、後半は刑事も危険に巻き込まれながらの壮絶バトルとなります。

 

 

 

 


犯人はネット犯罪常習者ということでハッキング能力はプロ並み、殺人の形跡も一切残しません。
しかも結構体力もあるので、相当無敵なんです。

あとから考えてみると、ちょっとツッコミどころもあるんですが、やっぱり脚本と演出、演技力のバランスが素晴らしいんですよね。主人公と一緒に、観客もどんどん追い込まれ「もうだめだ」と絶望感を味わいます。


社会問題の提起でもあり、エンタメとしても一気呵成に見せる手腕が見事です。
オアク・ヒゴン監督は、制作するにあたり、現役の警察官や刑事から話を聞き、犯人逮捕のプロセスやその過程で直面する課題について学んだそうで、描かれている内容が非常にリアルなんです。



主人公のスヒョンを演じたシン・ヘソンさん。

 

 

真面目にちゃんと仕事をしようとすればするほど、人が動いてくれないというジレンマ。
すっごく良く分かります!!
先輩のように、適当におだてたりしつつ場を収めていくことができず、正攻法で行けば行くほど「小娘にあれこれ言われたくない」と反発を受けてしまうんです。
結果が出せないから上司には叱られ、自腹を切って責任を負うことになったり。
そんな等身大の30代女性としての葛藤、詐欺に遭った怒り、何者かに行動を監視される恐怖、犯人の監視から逃れられない絶望感。様々な感情を非常に説得力のある、なおかつとても自然な演技で魅せてくれました。

 

 

 


 

 

 

でブレイクしたカン・テオさん。
事件に真摯に向き合う、人柄の真っすぐな刑事役がピッタリでした。スラっとしているから、兵役前に撮影したのかな?

 

 

 

 



初めは「よくあるネット詐欺」ということで鼻にも引っかけなかった先輩のチュ刑事(キム・ソンギュン)が、次第にのめり込んでいく様子も鬼気迫るものがありました。

 



 

 

 


私はこういう中古フリマサイトは利用しませんが、日本で主流の「メルカリ」も、個人同士の取引ですし、ちょっと見てみたら洗濯機や冷蔵庫といった大物家電も取り扱っているようです。
品物の状態、振込などでトラブルはあるようですが、それほど大きな事件は起こっていないのでしょうか?
でも今後は、こういった陰惨な犯罪が発生するかもしれませんね。

 

 

 



スマホでのトラブル、という映画ではこれが思い浮かびます。

 

 




これも韓国でリメイクされたんですけど、後半はかなり違う展開になっていて、こちらも非常に面白かったです。

 

 

 

 


韓国版のリメイクって、骨子は同じでも肉付けはかなり変えてくることが多いんですが、ちゃんとドラマとして成立させるところに制作力を感じますね。