鬼平犯科帳 血闘 | akaneの鑑賞記録

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これまで幾度も映像化されてきた池波正太郎のベストセラー小説「鬼平犯科帳」シリーズを、十代目・松本幸四郎主演で新たに映像化する時代劇シリーズの劇場版。2024年1月放送のテレビスペシャル「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」に続く本作では、主人公の鬼平こと長谷川平蔵の過去と現在を交錯させながら、それぞれの時代で愛する者を救うため立ち上がる平蔵の熱き姿を描き出す。

テレビスペシャルに続いて、若き日の鬼平・長谷川銕三郎を幸四郎の実子である八代目・市川染五郎が演じた。そのほか平蔵の妻・久栄を仙道敦子、密偵・おまさを中村ゆりが演じ、劇場版ゲストとして志田未来、北村有起哉、松本穂香、中井貴一、柄本明が出演。

 

 





あーーーー!待ち焦がれていた幸四郎さんの鬼平!!
良かったわー!気合がこもっていて!

おおむね世間の評判も良くて、本当にホッとしました。
やっぱり30年以上演じた、中村吉右衛門さんの印象、強いですもんね。

幸四郎さん。かなり体重増やして貫禄付けたと思います。

 

 

 

 

 


若き日の長谷川銕三郎が、居酒屋で酒を煽り、どこかへ殴り込みに行くところから始まります。

 

 

 

 

そして現在。火付盗賊改方となった長谷川平蔵(松本幸四郎)の元へ、若かりし頃に世話になった居酒屋の娘・おまさ(中村ゆり)が密偵になりたいと申し出て来ます。
おまさを妹のように思っていた平蔵は、裏稼業ではなく幸せに暮らせとその願いを退けますが、おまさは平蔵が芋酒や『加賀や』の主人と盗賊の二つの顔を持つ鷺原の九平(柄本明)を探していることを知り、独断で探索に乗りします。

九平を探すうちに凶賊・網切の甚五郎(北村有起哉)の企みを知ったおまさは首尾よく網切一味の中へ入り込みますが、正体がバレて絶体絶命の危機に陥ってしまいます。。。

 

 

 

やんちゃをしていた若い頃の平蔵と今の平蔵。

 

 

時系列を巧く組み合わせ、網切の甚五郎との因縁が次第に分かってくる謎解きも面白くてストーリーに引き込まれますし、江戸の風物詩、料理など、池波正太郎原作ならではの楽しみもたくさん味わえます。
 

 


幸四郎さん親子はもちろん良かったんですが、凄かったのは悪役の網切の甚五郎を演じた北村有起哉さん!

 

ここまで振り切ってゲスな役に徹してくれるのは本当に素晴らしい。
逆恨みともいえる執念で鬼平を憎み続け、市井の人々を皆殺しにする残虐さを持ち、自分はいつも戦わずして逃げる卑怯な奴。
幸四郎さんとも同年代でバランスもいいし、彼の憎々しさがあってこそまさに「悪を知って外道に落ちるか、悪を知って外道を憎むか」を体現できたと思います。
 

 



そして鬼平の密偵になることを願うおまさ役の中村ゆりさん。

 

梶芽衣子さんのようなベテランになる前の、若き日のおまさ。
目元がキリッとしたメイクも相まって、若いながらも底辺を這いつくばるような苦い人生を歩んできたなかで、唯一の夢(初恋)だった平蔵に自分の人生を預ける覚悟が良かった。
 

 

 


網切の甚五郎の元で働くおりん役の志田未来さん。

 

子役のころから凄く演技が巧くて、最近あまりお目にかからないなと思っていたんですが、やっぱり巧い!!
色っぽさ、危うさ、哀しい女心の表現が見事でした。

 

 

 


あとは鷺原の九平を演じた柄本明さんと

 

 

相模の彦十を演じた日野正平さん。

 

 

お二人とも70代半ばですけど元気だよねーーー!
こういう年代の俳優さんが元気だと作品に深みと奥行きが出るのでとても嬉しいです。

 

 



若き日の鬼平・長谷川銕三郎を演じた染五郎君も高評価で嬉しかった。

「鎌倉殿の13人」木曽義高役で一躍お茶の間にも知られるようになりましたが、

 

 

元々おっとりしていて、品の良いお役が多かった染五郎君。
若さが迸る、無頼漢だったころの平蔵を熱演していました。
この撮影でしっかり鍛えられたから、今年の2月の博多座でも立派な悪役が演じられたんですね。

 

 

 

 

二枚目は「色悪(めっちゃイケメンで悪い奴)」を演じられないとダメなんです!!
まだ19歳ですけど、こういう表情もできるようになりました。

 

 

 


染五郎君は、こんな時から見てるからさ、もうホントに親戚のおばちゃんの気持ちで見守ってますよ。



 

 


それにしても、鬼平ってこんなに立ち回りありましたっけ?
密偵を使って情報を集め、

 

 

最後の最後に「神妙に縄につけ!」って流れが定番じゃない?

 

 

馬を駆ってたった1人で敵地に乗り込んでいって大立ち回りとかびっくりしちゃった!!

 

 


幸四郎さん、もともと殺陣は巧かったけど、今回、長谷川平蔵役が決まってから、2年間しっかり殺陣の稽古をしたそうです。

劇団☆新感線のようなスピード重視のカッコ良さより、もっと命をかけて斬り合う肉弾戦というか、本当に殺気があって殺し合うパワーが漲ってました。
どれだけ動いても、幸四郎さんの体幹はブレないんです。
重心が低い位置でしっかり決まるということは、膝の使い方が凄く巧い。上半身はブレず、膝のクッションで動きを支えているんです。




邦画でも色々と時代劇風の作品が作られますが、なんちゃって時代劇と言うかパロディっぽいのが多い中、

 

 

 

 

 

藤枝梅安含め、このシリーズは、本当に本格的な昔ながらの時代劇が堪能できます。

 


カメラワーク、演出、照明、セット、衣装、そのすべてにおいて、現在最高峰のスタッフが揃って作り上げられた映画。
色々な小道具をつくる職人さんもどんどんいなくなってしまう昨今、衣装や所作、メイク、床山、小道具。そういうものもこうやって作品を作り続けないと廃れて行ってしまうんです。
予算的には厳しいかもしれないけど、是非、この伝統をしっかり残していって欲しい。

 

 



鬼平犯科帳のテレビシリーズは、祖父の八代目・松本幸四郎が1969年からら1972年まで。
丹波哲郎、萬屋錦之介を経て、叔父の中村吉右衛門は、1989年から2016年まで。全シリーズ150本が撮影されました。

今回は「時代劇専門チャンネル」の制作で、地上波放送がないのが残念ですが。。。

シリーズの第1弾「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」は、U-NEXT、Hulu、TVerで配信中です。

是非、こちらもご覧ください。

 

 

 


ほぼ半世紀に渡って、一族が同じキャラクターを演じ続けるなんて、世界的にも奇跡なのではないでしょうか。
歌舞伎の世界が、襲名という形で脈々と受け継がれているおかげですね。

そうやって400年にも渡って、代々の芝居を引き継いできた経験がないと、この重圧に耐えられなかったと思います。。
歌舞伎は舞台を見にくるお客様だけが相手ですが、テレビシリーズとなると、もっともっと多くの人が吉右衛門・鬼平への想いがありますから。
それを受け継ぐのは想像を絶するプレッシャーだっただろうし、また同時に自分の鬼平を吉右衛門の叔父に見て欲しかったという思いも強かったでしょう。

インタビューなどで涙ぐんでいる時もありましたし、クランクアップの時には、ビックリするほど号泣だったそうです。



この映画を観て、幸四郎さんのカッコよさに気付いてくださった方は、ぜひ2005年公開の映画「阿修羅城の瞳」を観て下さい!

 

 

U-NEXTかHulu で配信中。

youtubeなら購入で。

 

 


30代の幸四郎さん(当時染五郎さん)が堪能できますよ。

 


1835年に建てられた現存する日本最古の芝居小屋「金丸座」で撮影しているので、当時の芝居小屋の雰囲気が味わえますし、

 

 

 

退廃的な役者の佇まいと、

 

 

町に蔓延る鬼を成敗する鬼殺し、2つの顔を持つ病葉出門が、メッチャかっこいい!!

 

 

腰でキュッと締めた帯だけで絶対に着崩れない着流し姿とか、もう惚れ惚れします。
このね、刀を蹴り上げるシーンが大好き!!

 

 

この映画で沼ったんですよねーーーー幸四郎さんに。


劇団新感線の「髑髏城の7人」もね、色々なキャストで今も上演されていますが、このラストシーンをカッコよく演じられる役者さん、いないんですーーーー!
 

 

 



 

 


火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)は、江戸時代に主に重罪である火付け(放火)、盗賊(押し込み強盗団)、賭博を取り締まった役職で、特に凶悪犯を取り締まる専任の部署でした。近代以降でいうと国家憲兵・特殊部隊のような、いわば事実上の準軍事組織と言えます。


長谷川平蔵は実在の人物で本名は長谷川平蔵宣以。

青年時代は本当に放蕩無頼の風来坊で、「本所の銕」などと呼ばれて恐れられ、旗本であった父の財産も使い果たし、遊廓へ通いつめていたのも記録に残っているそうです。
1787年(42歳)から1795年(50歳)に亡くなるまで火付盗賊改方を務めました。彼が火付盗賊改方になってからの検挙率は飛び抜けた成績でした。

1789年、「人足寄場」を設立。これは今でいう軽度犯罪者・虞犯者に対しての教育的・自立支援的な施設で、晩年は自腹を切ってでも存続に貢献しました。
庶民からは「本所の平蔵さま」「今大岡」と呼ばれ、非常に人気がありましたが、幕府内ではあまり人気がなく出世もできなかったことを愚痴っていたそうです。
でも池波正太郎さんの小説のおかげで、こうやって200年以上経っても名前が残っているのは素晴らしいですね。