歌舞伎町大歌舞伎 in シアターミラノ座 | akaneの鑑賞記録

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行ってきました!中村屋公演!

新宿・歌舞伎町は、1945年、戦後復興事業の一環としてこの地に歌舞伎の劇場誘致を図っていたことから「歌舞伎町」と命名されたもの。当時、劇場の建設は叶わなかったものの、エンタメの発信地として発展してきました。


中村屋兄弟は、庶民の生活に根付いていた江戸時代の歌舞伎の良さを現代に蘇らせようと、古典を大事にしながらも現代的なアプローチで様々な挑戦を続けています。今回、「歌舞伎町大歌舞伎」の宣伝として歌舞伎町のホストクラブのようなアドトラックが東京の街を走ったのも話題になりました。

 

 


新宿の雑多な雰囲気は、歌舞伎の世界に通じるものがあるということで、花園神社や小劇場でも歌舞伎が上演されてきましたが、今回、東急歌舞伎町タワーのTHEATER MILANO-Zaにて「歌舞伎町大歌舞伎」が開幕。ついに「歌舞伎町に歌舞伎がやってきた!」となったわけです。

 

 

 

劇場の雰囲気としては、シアターコクーンに近いかも。

 

 

 

 

ロビーはあまり広々とした感じではありませんが、幟が飾られています。

 

 

 

舞台の大きさは、とても良い!!

歌舞伎座だとちょっと広すぎちゃうので、こういう芝居をやるにはピッタリの大きさでした。

 


前半は、古典舞踊が2本。


●正札附根元草摺

しょうふだつきこんげんくさずり

初春芝居として上演されることの多い「曽我物」(曽我兄弟の仇討を題材にしたもの)の一種です。
曽我物については、下記をご参照くださいね。

 

 



新しい場所での歌舞伎公演ということで、縁起を担いでの演目なのでしょう。確かにおめでたい気分になります。

 

今にも父の仇を討たんといきりたつ曽我五郎(中村虎之介)と、「今はその時ではない」と止める美しい女性・舞鶴(中村鶴松)の丁々発止のやり取りが、荒々しくも華やかな舞踊で展開していきます。

 

 

 

共にまだ20代の虎之介君と鶴松君。

エネルギッシュでフレッシュな華やかさを見せながら、古典らしい重厚感もしっかりと表現しています。

 

 

 

教わった通り、キッチリ楷書の踊り、といったところはありますが、指先まで神経が行き届き、角々まできちんと決まった踊りは好感が持てます。

まだまだ自分流に崩さず、基本に忠実に。
虎之介君は、お目目パッチリなので、むき身の隈取がとっても似合いますね。

 


 

 


●流星
前半は七夕の夜、年に一度の逢瀬を楽しむ牽牛と織女のロマンチックな恋模様が描かれます。

パステルカラーの雲が舞台いっぱいに広がるファンタジックな世界の中、牽牛と織女に扮するのは、中村勘太郎クンと中村長三郎クン。

 

 

しっとりした恋模様を踊るにはまだまだ(笑)13歳と10歳のふたりはとっても可愛らしく、客席も温かいほほえみで一杯。
長三郎君、お顔がまん丸ですね!!

何とも言えずとぼけた表情で福福しい。
勘太郎君は、随分背が高くなっててビックリしました!もうお父さんとあまり変わらない?
台に乗ってる?と勘違いしてしまうぐらいシュっと伸びてて、脳がバグりました。

 


そこに飛び込んでくるのが、お父さんの勘九郎さんが演じる流星。彼は長屋に住む雷夫婦がケンカを始めたと牽牛と織女に報告します。

 



カミナリのダンナさんが、うっかり下界に落ちてしまうんです。落ちた時に腰を痛めて、戻りの雲に乗れず、次の便まで待つことに。
落ちたのが端唄の師匠の家で、暇だから練習しているうちにハマってしまって、無事に家に帰っても力強く「ゴロゴロ」って言えなくなっちゃってるんです。
「これからは今流行りの端唄風にやる!」とか言っちゃって。
それで奥さんが「そんな気の抜けた雷でどうすんのよ!!」って怒りだし夫婦喧嘩が始まります。
ダンナさんが「うるせー!ゴタゴタ言うなら出て行け!」っていうんですけど、ダンナさんはマスオさん。
「フン!ここは私の家よ!アンタが出て行きなさい!」

それを見ていた子供カミナリが「パパ、ママ、喧嘩しないで~」って言ったり、隣のカミナリばあさんまで登場して仲裁に入るんですが、そのうち入れ歯を飲み込んじゃって大騒ぎ!

みたいな、とても他愛のないお話です。


この4人を勘九郎さんがひとりで、コミカルにテンポよく演じ分けていくんです。

 

 

 

4役をお面を取り換えつつ演じ分けることもあるんですが、勘九郎さんは手に持つ小道具のみで演じ分けるのが見事!!

顔の表情、体の使い方、それだけで、男、女、子供、おばあさんを演じ分けるんです。

親子三人の共演もほっこりとする、楽しい舞踊劇でした。
 

 



●福叶神恋噺

休憩をはさみ、最後は上方落語「貧乏神」をもとにした世話狂言の新作歌舞伎です。

 


仕事嫌いで根っからの怠け者、大工の辰五郎。

お金がないのに働かないため家はボロボロ、食べ物にも困るありさまです。

大工の道具箱まで質に入れてしまい、それを受け出すからと妹のおみつの婚約者にまで借金をしたのに、そのお金さえも飲み代にしてしまいます。おみつは怒って家を出ていってしまいましたが本人はどこ吹く風。

 

 

そこへ忽然と現れた貧乏神のおびん。

 

 

本当は「おあしなんたらかんたらの姫」って正式名があるんですが忘れちゃった!

名前が長いので、辰五郎は「おびんちゃん」って呼ぶことに。

おびんちゃんは「貧乏神は人間から養分を吸い取るものなのに、おまえには吸い取るものすらないから少しは働け」と小言を言うんですが、「働かなくても貧乏、働いても貧乏神に吸い取られて貧乏になるのなら、働かない方がいい」と屁理屈を言う辰五郎。でもなんだか憎めない辰五郎のため、おびんちゃんはせっせと内職をし、辰五郎の世話を焼き始めます。

いわゆる「ダメンズ」に入れ込んでしまう貧乏神のお話です。

辰五郎を演じるのは虎之介君。

言い訳ばかりなのにどこか憎めないダメ男を愛嬌たっぷりに演じ、まさに水を得た魚でした。

ここまで主役を演じることはあまりなかったのですが、今回は本当に素晴らしい活躍ぶり。
こんなに世話物が巧いとは!驚きです!
台詞も明瞭で生き生きとした江戸っ子。

良く通る声。クルクル変わる愛らしい表情。
大きな目で上目遣いに借金をねだる様子が本当に可愛らしく、まわりの人々がついほだされてしまうのも無理はないと思わせる説得力。

 

 


落語では貧乏神は男なんですが、今回は女性で七之助さんが演じます。

年下の男に振り回されながらせっせと世話を焼き、家賃も払い、とても働き者のおびんちゃんです。

こちらも七之助さんのキャラにピッタリ!

派手な衣装を着こなしつつも「お前さんが貧乏で養分が吸い取れないから、髪もボサボサなんだよ!」と嘆いたり。
一向に辰五郎が働いてくれないと愚痴るおびんちゃん。

聞いているのは貧乏神の兄貴分のすかんぴん(勘九郎)

 

 



途中、キャピキャピしたギャルの町娘が黒服を連れて長屋にやってきて「このところ全然店に来てくれないじゃなーい」と「シャンパンタワー」ならぬ「味噌汁タワー」を始めるなど、いかにも歌舞伎町ならではのお遊び!

 

 

ミラノ座は、2~3階席の手すりにLED照明が仕込まれているので、派手な照明とお決まりのホストの掛け声も入って大盛り上がりでした。
もちろん、最後はめでたしめでたしで幕。

 

 

ともかく虎之助君と七之助さんの相性がバッチリで、何度も爆笑してしまう楽しいお芝居でした!

 

 


シアターミラノ座は「パラサイト」の公演が中止になって行けなかったので、今回初めて。
上階はあまり評判が良くないので、1階席を取ったのですが、この座席表見たら分かりますよね!

 

 

左側のE列部分が花道になっているんです!
私はH列だったので、何度もここを通る役者さんたちが間近に見られてそれもラッキーでした。

 

 

 

 

 

 

 


東急歌舞伎町タワー、9~10階には「109シネマズプレミアム新宿」という、いわゆる高級な映画館が入っています。
話のネタにオープンした当時行ってみました。

確かに椅子も立派だし、

 

 

ポップコーンやドリンクも食べ放題、ラウンジでゆったりできるのは良いんですが、

 

 

チケット代が4500円と6500円はどうかな、と思いますね。
そんな値段払って映画見ます?

 

 

それに歌舞伎町のど真ん中にあって、雑多な空間を歩いていくし、歌舞伎町タワーって、エントランスが1ヵ所しか無くて、必ずこの2階フロアを通るんですよ。

 

 

3階はゲームセンター。
歌舞伎町の賑わいってことで、海外の方には面白いだろうけれど、6500円も出して映画を見に行くのに、この動線はないよね。別に直通エレベーターとか作れば良かったのに。
ということで、この映画館は1回きりでした。
だって向かい側にはTOHOシネマズがありますから。