DOGMAN ドッグマン | akaneの鑑賞記録

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「レオン」のリュック・ベッソンが実際の事件に着想を得て監督・脚本を手がけたバイオレンスアクション。

ある夜、1台のトラックが警察に止められる。運転席には負傷した女装男性がおり、荷台には十数匹の犬が乗せられていた。「ドッグマン」と呼ばれるその男は、自らの半生について語り始める。犬小屋に入れられ、暴力を浴びて育った少年時代。犬たちの存在に救われながら成長していく中で恋を経験し、世間になじもうとするも、人に裏切られて深く傷ついていく。犬たちの愛に何度も助けられてきた彼は、生きていくために犬たちとともに犯罪に手を染めるが、「死刑執行人」と呼ばれるギャングに目をつけられてしまう。2023年・第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品。

 

 

 



リュック・ベッソン監督と言えば『レオン』 (94)ですが、私は『ニキータ』 (90)が一番好きです。



この映画のポスターを見たら、絶対血みどろバイオレンス系だと思いますよね。
犬小屋に閉じ込められて育った少年が、狂人となって親や街の人に復讐していく、みたいな。
 

 


でも全然違います。むしろノーブルな寓話みたいな感じ。
まっとうに生きたかったのに、世の中がそれを許さなかったという流れは「ジョーカー」にも通じるものがあると思います。
兄が犬小屋に貼ったスローガン「IN THE NAME OF GOD」を裏から映し出す「DOG MAN」がタイトルになっています。




オープニング

 

 

負傷した女装男性が運転するトラックが警察に止められ、荷台には十数匹の犬。

 

 

 

 

この「ドッグマン」が犯罪への道を歩む経緯を、精神科医との対話で綴っていくストーリーです。
ダグラスは非常に落ち着いており、会話も知的。

 

カウンセリングを担当するのは、黒人女性でシングルマザー。

 

 

彼女もまた、社会的には弱者の立場であり、理不尽な扱いを受けているだろうという共感を持って、自分の半生を語っていくのです。




DV気質で狂信的な父親、それに追従する兄、母との4人家族。
自宅では闘犬用の犬を多数飼っていました。
ある日、犬の世話のことで父親に反抗したダグラスは、犬小屋に閉じ込められてしまうのでした。
数日のお仕置きではなく、何年もの間!!

 

 


犬たちの協力を得てやっと犬小屋から救出され、保護された施設では、美しい教師とともに、演劇に打ち込んだりもしましたが、いざ社会に出てみると、車椅子の彼が働く場所はありませんでした。

 


犬の保護シェルターの仕事も補助金が降りず閉鎖。
処分される運命の犬たちを連れ、廃校に逃げ込んだダグラス。

 

 

 

 

 

彼がようやく職に付けたのは、キャバレー。
週に1回、ステージで歌うことになりました。

 

 

 

この店を初めて訪れた時は、ショーのリハーサルをしている場面だったのですが、その時ユーリズミックスの「sweet dreams」が流れていてテンションぶちあがりました!

大好きなの!この曲!

 


ダグラスが「リリー・マルレーン」を歌う場面は圧巻です!
他にも何曲か歌うシーンがあり、往年のエディット・ピアフの録音が使われています。

 

 

まぁこういうお店のステージは口パクが当然(見た目としてショーを楽しむ)ですが、ここで本当に生声で歌ってたら、もっと感動的だったかも。
 

 

 


しかし生活のため、犬たちを養うため、彼は次第に犯罪に手を染めていきます。

 

 

 

 

 

犬たちを使って、富豪の家から宝飾品などを盗み出すのが、なかなか痛快。
ちょっと「ホームアローン」みたいな感じです。
本当にびっくりするほど犬たちの演技が凄くて!!
落下の解剖学」でも、ワンちゃんの名演技に驚きましたが、それが10匹以上ですからね!

 

 

 

 

 

 

 

しかし、ある事で町のギャングと関わったために

 

 

彼らから報復を受け、逃げてきたところが冒頭のシーンとなるわけです。




不幸な星の下に生まれ、理不尽な暴力に耐え、不自由な体で必死に生き、人生の不条理の塊のようなダグラスの人生。
なぜこれほどまで、神は彼に試練を与えるのか。

しかし、それでも、彼は神の身元に帰っていくのですね。

 

 

 

 

 


ともかく、純粋さと狂気が共存するダグラスを演じたケイレブ・ランドリー・ジョーンズさんが素晴らしかったです。
近年で記憶に残っているのは、「スリービルボード」での広告代理店社長役かな。

 





不幸ではあるけれど、犯罪は犯したけれど、誇り高き自分を持っているダグラスは、なんとなく「スワンソング」の世界観に通じるような気もしました。