キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩 | akaneの鑑賞記録

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ウクライナ民謡をもとに生まれたクリスマスソング「キャロル・オブ・ザ・ベル」をモチーフに、ウクライナ、ポーランド、ユダヤ人の3家族が戦火に翻弄されながらも子どもたちを守り抜こうとする姿を描いた戦争ドラマ。

1939年、ポーランド領スタニスワブフ(現ウクライナ、イバノフランコフスク)。ユダヤ人が暮らす母屋に、店子としてウクライナ人とポーランド人の家族が引越してくる。歌うことが得意なウクライナ人の娘ヤロスラワは「キャロル・オブ・ザ・ベル」を歌うと幸せが訪れると信じ、大事な場面ではいつもその歌を披露していた。やがて第2次世界大戦が勃発すると、スタニスワブフはソ連軍やドイツ軍の侵攻を受け、ソ連に占領されてしまう。ポーランド人とユダヤ人の両親たちは迫害によって連行され、彼らの娘たちは家に残されることに。ウクライナ人の母ソフィアは3人の娘を分け隔てなく守り続け、さらにドイツ人の息子も匿うことになるが……。
 

 

 

 

 


★1939年9月
ドイツとソ連によるポーランド侵攻

第二次世界大戦勃発
 

 

ユダヤ人のハーシュコウイッツ家。
父親は弁護士、ディナという娘と、生まれたばかりの赤ちゃんタリアがいます。

 

 

 


この家の2階に2組の家族が越してきました。
1組はポーランド人のカリノフスカ家。
父親は軍人、1人娘のテレサ。

 

 

 


もう1組はウクライナ人のイヴァニューク家。
父母共に音楽家で、娘のヤロスラワも歌が上手でした。

 

 

ヤロスラワは「キャロル・オブ・ザ・ベル」の歌が大好きで、「幸せになる、願いが叶う歌」と信じています。

 

 

 

 


同じような年ごろの女の子たちはすぐに仲良くなりますが、大人たちは政治的・宗教的に相容れない部分もあり、よそよそしい雰囲気でした。
ウクライナは当時、ポーランドの支配下であったため、そういうパワーバランスもありました。

 

 

 


ウクライナ人家族は2組の家族を招いてホームパーティを開き、3人の子供たちは「キャロル・オブ・ザ・ベル」を歌います。

 

 

 

 


歌が好きなテレサもソフィアの歌のレッスンを受けるようになり、次第に3つの家族は親交を深めていきました。

 

 

 

 

 


★1941年
6月 ドイツのソ連侵攻
9月 ドイツがウクライナ首都キーウを占領


しかしある日、町はナチスドイツの支配下となり、ポーランド人のご主人は家に戻ってこず、自宅にドイツ軍人が。
たまたま、娘のテレサは遊び疲れてウクライナ人家族の家で眠っていました。

 

 

 

「隣人にカギを預けたい」と申し出て隣家を訪ねたワンダは、「娘をお願い」と目配せし、連行されていきます。

 

 

 

 


しばらくすると、大家であるユダヤ人の家族も呼び出しとなってしまいます。娘2人をソフィアに託して出向いた夫妻が戻ってくることはありませんでした。

 

 

 

 

 


思わぬ戦況により、4人の子供を育てることになったソフィア。

 

 

 

 

 

いつ、検閲があるか分からず、子供たちには決して外に出ないよう言い含め、息をひそめての生活です。

 

 

 

 

 

ユダヤ人を匿ったとなれば、問答無用で逮捕されていまいます。


夫も、ナチスドイツ軍のために、クラブで「リリー・マルレーン」などを弾き語りする仕事は非常に屈辱的でしたが、唯一の収入源なのです。

 

 

 

 


その後、空き家になった2階には、ドイツ人の家族が越してきました。
夫婦は音楽にも造詣があり、一人息子に歌のレッスンを依頼。
しかし、使用人は非常に冷酷で、ソフィアに渡すものは腐って痛んだジャガイモでした。

 

 

 



★1943年
8月 ソ連のウクライナ攻勢
11月 ソ連軍によるキーウ占領

こうなると、今度はドイツ人家族が連行されていきます。
ウクライナ人のソフィアは、ポーランド、ユダヤ人の娘たちに加え「この子に罪はない」と言ってナチス・ドイツの子どもさえも預り、自分の子どもと同じよう懸命に戦火から守り抜くことに。

しかしとうとう、ソフィアと子供たちも見つかり、ソ連軍に連行されてしまいます!!


 

 

 

 

 

 


ウクライナという国は、これだけ迫害された歴史を持っていることが切に切に伝わってきました。


スタニスワブフ(ウクライナ西部)の街は、第一次世界大戦後に始まったポーランド・ソビエト戦争の結果としてポーランド領になっていました。

しかしソビエト領となったその他のウクライナは『赤い闇』でも描かれたスターリンによる過酷な搾取と弾圧の対象となったのです。

 

 

 

 


戦争のシーンはそれほど明らかに描かれませんが、街角に掲げられる国旗が次々と変わることで戦争に翻弄されていることがわかります。

 

 

 


ソ連が来たりナチが来たり、占拠国が変わる事で、正義が反転してしまい、人が簡単に連れ去られたり殺されたりする現実。
歴史は戦勝国により塗り潰し塗り替えられる惨事が、今も続いていることに身震いします。

 

 

 


どうして普通に懸命に生きている人々が犠牲にならなければいけないのか。
救いがなくて辛くて胸が苦しくなります。
 

 



陸の孤島でのほほんとしている日本ですが、ロシア、中国、韓国&北朝鮮と、政情不穏な国々に面しているのですから、本当に、戦争の足音がヒタヒタと迫ってきているようで恐いです。

国民がどれだけ平和に穏やかに暮らすことを願っても、ある一定層、戦争を必要とする人たちがいます。
景気が停滞すると「この辺で戦争でもやりますか」と戦争を始める。
自分たちは高見の見物で危険もなく、懐が豊かになるのですから、止められませんよね。

 

 

 

 


クリスマスキャロルとして有名な「キャロル・オブ・ザ・ベル」は、ウクライナで古くから歌い継がれている民謡「シェドリック」に、1916年“ウクライナのバッハ”との異名を持つ作曲家マイコラ・レオントーヴィッチュが編曲し、英語の歌詞をつけたものです。

映画『ホーム・アローン』(90)内で歌われ、世界中に知られるようになりました。この歌は「ウクライナ語、ウクライナ文化が存在している」という明確な証として今も歌い継がれています。

本当に美しい歌です。

 

 





2022年2月24日、ロシアによるウクライナへの侵攻が始まりました。ウクライナは抵抗を続け、この戦争は現在も世界中に多大な影響を与え続けています。

この侵攻が始まることを予感していたかのように2021年、ドキュメンタリーを主戦場とするオレシャ・モルグネツ=イサイェンコ監督は本作を作り上げました、
そして今、こうして公開されていることに心から敬意を表したいです。



ロシアの侵攻後、ウクライナ人であるヤロスラワ役のポリナ・グロモヴァちゃんはポーランド・ワルシャワへ避難。

 

 

 

テレサ役のフルィスティーナ・オレヒヴナ・ウシーツカちゃんは家族と共にドイツへ避難しているそうです。

 

 

映画の世界がそのまま続いているような現状に、心が痛みます。




今を生きる全ての人に見てほしい映画です。