新作歌舞伎 FAINAL FANTASY X in IHIステージアラウンド東京 | akaneの鑑賞記録

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歌舞伎や演劇、映画、TVドラマなど鑑賞作品の覚書

 

 

 


2001年に「ファイナルファンタジー」シリーズの第10弾として、初のPlayStationR2対応ソフトとして発売された『ファイナルファンタジーX』。
続編を含め世界累計出荷・DL販売本数は、2,110万本以上(2022年3月末時点) のシリーズ屈指の人気作。
大いなる脅威『シン』に立ち向かう少年と少女の切ない物語が、シリーズで初めて採用されたキャラクターボイスや状況に応じて表情が変化するフェイシャルアニメーションの採用により感情豊かに描かれ、その感動的な物語は今なお多くのユーザーに愛され続けている。




【前編】

大いなる脅威『シン』に人々がおびえて暮らす、死の螺旋にとらわれた世界スピラ。
そんなスピラへと迷いこんだ少年ティーダ。そこで可憐で気丈な召喚士ユウナと出会う。
ユウナの目的はただ一つ。『シン』を倒すこと。
そのための『究極召喚を手に入れること』であった。
ユウナの決意に胸をうたれるティーダは同じくユウナを援護する仲間たちと共に旅にでる。
水球競技ブリッツボールでの熱戦や、父の盟友アーロンとの再会により、
一行は「真実」に近づくこととなる。
だがそこに立ちはだかるグアド族の族長・シーモア。
「死の安息こそスピラの願い」というゆがんだ考えを抱いている男である。
その原因ともなった彼の幼き頃の悲哀に満ちた物語とは果たして……。



【後編】

グアド族の族長・シーモアの策略はティーダたちをますます追い込んでいく。
狡猾なシーモアは、ユウナを誘拐し、彼女を利用するために政略結婚を企てる。
それに抗った一同は反逆者の汚名を着せられ、旅の中断を余儀なくされる。
絶望し泣き崩れるユウナを見て、ティーダはなんとしても彼女を守りぬこうと決心。
出会った頃から互いに惹かれあっていた二人は秘めた恋心に身を委ねるのであった。
一同は決意を新たに、再び『シン』を倒す究極召喚を手に入れるために立ち上がる。
だがそこに待ち受けていたのは衝撃の出来事……
『シンの正体』『究極召喚と引き換えになってしまうユウナの命』
そして『ティーダの存在の真実』……
彼らはそれを乗り越え、自分たちの物語をつむごう
 

 

 

 

 

行ってきました!

FFX歌舞伎!!


 






すごく面白かったです!!
ファイナルファンタジーが好きな人は、絶対見るべき!!
歌舞伎のカッコ良さが満載だし、劇場の特性を生かしたスムーズな場面転換と大スクリーンの効果バツグン!!

 

 

 

発売して速攻で申し込んだので、なんと前から4列目のど真ん中でした!
見て!この近さ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

この劇場、今まで4回ぐらい来ていますけど、いつも真ん中より後方の席で、足元なんかほとんど見えないっていうのが不満だったのですが、この至近距離では、目線の動きまで全部見えました!
最前列なんか、役者と1メートルも離れていない、ほとんど顔を突き合わせるぐらいなんじゃないかしら。
スクリーンの全体像などはあまり良く見えなかったのですが、かぶりつきで役者さんを観られて大満足でした。

 

 


転換の間、スクリーンでも芝居のシーンが流れてどんどん展開していくので、「ナウシカ」よりは説明セリフが少なく、物語が進みます。ストーリーもとても分かりやすいし、もう目一杯のめり込んで完全に芝居の世界観にハマってしまいました。




劇場の雰囲気はほぼ80~90%が、20~30代の若者で、そのうち半分以上は男性。
通常の歌舞伎の劇場とは、全く客層が異なります。
半数以上が「歌舞伎は初めて」というお客様で、歌舞伎どころか演劇を生で見るのも恐らく初めてじゃないかな、という雰囲気の方も多くて、本当に嬉しく思いました。

私はゲームをプレイしたことがないので、ファイナルファンタジーの内容も知りませんが、世界中でヒットした名作とはいえ、すでに20年前のゲーム。

歌舞伎なんてどんなものか分からないのに、3万円ものチケットを購入して、劇場に足を運ばせるだけのパワーを持っているということが凄い!!
そしてゲームファンの方々の行動力が素晴らしい!!
やっぱり「分かる 分からない」ではなく、面白い物、本物にはちゃんと集客力があるということですよね。





実質のゲーム時間は500時間ぐらいだそうですが、その壮大なストーリーを、前編&後編 6時間にまとめたもの。


◇前編 上演時間:3時間35分
第一幕<55分> 12:00~12:55
 休憩<20分> 12:55~13:15
第二幕・第三幕<75分> 13:15~14:30
 休憩<20分> 14:30~14:50
第四幕<45分> 14:50~15:35

【前編・後編間休憩 15:35~17:00】

◇後編 上演時間:3時間25分
第五幕<55分> 17:30~18:25
 休憩<25分> 18:25~18:50
第六幕・第七幕・第八幕<125分> 18:50~20:55



休憩含むと9時間の拘束になります。
歌舞伎公演ではわりと当たり前のスケジュールですが、一般の方にはハードル高いですよね~~!

 


外には、ステーキ丼やパスタのキッチンカーが出ていて、休憩中はテントで食事もできます。

 

 


 

 

 

 

 


まず最初に、口上として、中村萬太郎君が演ずる23代目オオアカ屋が登場。スピラ各地を回っている旅商人です。

 

 

 

この掴みの部分がまずとっても素晴らしかったんです!!
萬太郎君は見た目も可愛らしいし、とにかく涼やかな声が良く通って滑舌もよく、喋りが巧いんですね。
ちょっと緊張しているお客さんの雰囲気をほぐすため、ツケ打ちや見得の仕組みなどをとても分かりやすく説明。
歌舞伎って、なんとなく「凄く年上のおじいさんが演じている」みたいなイメージがありますが、自分たちと同年代の青年が弁舌爽やかに登場したらやっぱり親近感が増すと思うんです。
その重要な導入部を任された萬太郎君が、見事に役目をはたしていて、なんかそれだけで涙ぐんじゃった。




異世界スピラに召喚された少年ティーダと、召喚士の少女ユウナが魔物「シン」を倒すため冒険の旅に出るというストーリー。

ユウナは「シン」を倒す魔術「究極召喚」を授かるために、最果ての廃墟ザマルカンドを目指します。
彼女を守るガードは、ワッカ、ルールー、キマリ、ティーダ、そしてティーダの父の友人アーロン。
そこに加わったリュックを含め、一行7人は、シーモア、大召喚士ユウナレスカ、そしてシンとの戦いに挑んでいきますが、
ユウナの力、シンの正体、ティーダの本当の姿など、色々と謎が解き明かされていきます。




ストーリーはゲームをプレイなさった方々の方が詳しいと思いますが、歌舞伎版では、まずは巨大な敵「シン」を倒すという目的があり、召喚獣や様々なバトルはありつつも、親子の関係をしっかり描いた内容になっています。
 

 

 


■ティーダとジェイク

ブリッツボールの伝説的選手だった父・ジェイク。

 

 

行方不明になっている今も、偉大な父親の存在に圧倒されコンプレックスを感じているティーダ。
ぶっきら棒で息子とうまく本音で話せないジェイク。
実際も、大きな存在である父・尾上菊五郎の後を継ぐ命運を担っている尾上菊之助さんには、ティーダの心情が身に染みて分かることでしょう。
大柄な坂東彌十郎さんと菊之助さんの体格差もジェクトの大きさが感じられて良き。

 

 

そして息子の手によって最期を迎えるのが、鎌倉殿の北條時政とも被ります。
 

 

 

 


■ユウナとブラスカ

大召喚士でとても優しかった父ブラスカを「シン」との戦いで失ったユウナ。

 

 

自らも召喚士を目指して修行をし、愛する世界「スピラ」を守るために立ち上がります。
早くに父親を亡くした彼女にとって、伯父(母の兄)のシドは、大きな心の支えでした。

 

 

物腰柔らかく聡明な父・ブラスカは中村錦之助さん。

 

 

 

 

 

シドはかなり歌舞伎に寄せた頼もしい親父。(中村歌六)

 

 

 

シドとユウナを演じているのは、実の親子です。

小川さんです。

 

 

 

 

 

 


■シーモアとジスカル

 

今回の歌舞伎化に際して、より膨らまされた関係です。
人間である母とグアド族長である父との間に生まれたシーモア。

 

 

 

その引け目もあり、若き指導者でありながら屈折した思いを抱えています。
息子の危うさを感じ取った父は、母子共々、ある場所に幽閉。
その冷たい仕打ちに対して、憎しみをたぎらせるシーモア。
死だけがスピラの唯一の“救い”と捉えるなど、冷酷で歪んだ思想の持ち主となってしまいます。

 

美しい姿と伸びやかな声を持つ松也さんが演じる屈折したシーモア。

 

 

 

そして父ジスカル役の澤村國矢さんも、安定の素晴らしさ!


 

 

 

 

 


まず、なんといっても菊之助さん本人が直接オファーしたというキャスティングが素晴らしいです!
アテガキしたかというぐらいのハマりっぷり!


以下はバトルメンバーの7人。

 

 

 

 

 


●ティーダ(尾上菊之助)

本作の主人公。ブリッツボールチームのエースである少年。17歳。

 

 


17歳はちょっと厳しいけど(笑)溌剌として清潔感があり、一途なキャラを熱演。
ちゃんとパーカー着てるんですよ(笑)

 

 

歌舞伎公演はみんなそうなんですが、主役を務めながら全体の演出やプロデュースなど全てを担う重圧は凄かったと思います。
テーマとしては「ナウシカ」にも近いものがありますが、きっと菊之助さんが伝えたいテーマなんでしょうね。
 

 

 

 


●ユウナ(中村米吉)
本作のヒロイン。召喚士であり『シン』を倒す旅に出ている少女。17歳。

 

 

昨年、「風の谷のナウシカ」でもナウシカに抜擢され、年始の外部公演「オンディーヌ」でも可憐な少女を演じた米吉君のユウナは、本当に可愛くて所作も綺麗で完璧でした。

 

 

 

分かります?この指先の美しさ

 




最も有名なシーン「異界送り」

 

 

 

 



●ワッカ(中村橋之助)
ビサイド島のブリッツボールチーム「ビサイド・オーラカ」の選手兼コーチ。23歳。

 

 

 

ワッカの陽キャラは、橋之助君にピッタリ!

弾むような若々しさと、ちょっと弱気なところもありつつ、個性豊かなガードのメンバーを影ながらまとめる役割も。
 

 

 

 


●ルールー(中村梅枝)
ワッカの幼馴染である黒魔道士の女性。22歳。

 

 

梅枝さんはメチャクチャ芝居が巧いので、久しぶりにその台詞術を堪能しました。
海老反り、美しい!

 

 

 

ちなみに、梅枝君とオオアカ屋の萬太郎君は兄弟です。

 

 

 

 

 

 


●アーロン(中村獅童)
ティーダのザナルカンドでの知り合いの男性。35歳。

 

 

獅童さんはここ数年、バーチャル映像とのコラボ「超歌舞伎」で初音ミクとの共演を続けています。

 

 

 

多くのゲームファンをこの会場に連れてきてくれた立役者かもしれませんね。
こういう「キャラ」で決まるのは本当にカッコいい。

もはやフィギュアじゃん!

 



 

 

 

 

 


●キマリ=ロンゾ(坂東彦三郎)
獣のような風貌を持つロンゾ族の青年。25歳。

 

 

実年齢としては、他のメンバーよりちょっとお兄さん。

 

 

彦三郎さんと亀蔵さんの兄弟は、この業界でも有名なメッチャ美声なんです!!
キマリはあまり喋りませんが、響き渡るバリトンボイスは、頼もしいガードにピッタリ!!
 

 

 

 


●リュック(上村吉太郎)

アルベド族の少女。アニキの妹で、ユウナとは従姉妹同士となる。15歳。

 

 

リュック役の吉太郎君は、もう一歩だったかな。
バトルメンバーの中では21歳と最年少。主流のお家の御曹司でもないのであまり大きな舞台に立つ機会もないし、特にこんな新作にメインとして出演するのは初めてだから、やっぱり経験不足かな。
普通の歌舞伎での踊りなんかは、とても巧いんですけどね。


 

 

 



そしてユウナレスカ役の中村芝のぶさん

 

 


この衣装が一番凄かったかな!!
イメージとしてはメデューサですね。

実際ヘビを操ってバトルをします。

芝のぶさんは、ほんっとーーーーに凄いんです!!

 

「風の谷のナウシカ」での「庭の主」

「野田版 桜の森の満開の下」での「エナコ」


など、この世のものではない 尋常ならざる者 を演じたらもう世界一ですよ。
その声、セリフ、動き、表情、どれをとっても凄まじく恐ろしく、美しい、
普段はとても大人しい慎ましやかな方なんですけどね。


 

 

 

 


そしてティーダの子供時代と 祈り子を演じた尾上丑之助君。

 

 

菊之助さんの息子さんです。
まだ8歳というのに、そのたっぷりと間を取ったセリフ、抑揚、見事!!
ちゃんと日本舞踊をやっているから、体の動きも綺麗だし
なかなか行く末が楽しみです!!





歌舞伎には、あらゆる型があって、「○○っぽいキャラクターなら、あのお芝居の何々の役で」と、役者同志がすぐに分かる共通の認識があります。
その役なら、体の使い方はこう。

発声やセリフ回しはこう。

化粧はこう。
というようにすぐに演技の方向性が決まり、そこに魂を入れていきます。
まるでジャズセッションのようですね。

だから「台本を読み込み、稽古を重ねて演技を固めていく」現代劇よりもずっと、芝居を作るのが早いんです。
 

 

 


登場した時に名乗りを上げたり、お馴染みの芝居のセリフを使ってみたり、自分のチームと相手チーム、並んでそれぞれ交互に台詞をいう渡り台詞など、自然に歌舞伎の要素を散りばめ、立ち回りのシーンは、黒子も大活躍、様々なアナログの方式で見せていきます。

 

 


梶原景時と後鳥羽上皇のバトル(笑)

 

 

 

 

 

 


歌舞伎の見得は、クローズアップのようなもの。
ここぞという時にポーズを取り、ツケが入ることによって形が決まります。

 

 

 

 

それは「戦隊モノ」の変身ポーズと同じです。
みんな小さい頃はそういうヒーローに憧れたのですから、実はとても身近にあったワクワクする感覚が呼び覚まされるのではないでしょうか。

こうやって並んだ様は、まさに戦隊モノ。

 

 

 

 

 

 


発表された時は、ゲームを歌舞伎化なんて、どうなることかと思いましたが、元々のゲーム動画をみても、ユウナなどはほとんど着物っぽい衣装だったし、召喚獣が、こういう姿で登場するの、最高じゃありませんか!!

 

 

もちろんクライマックスは毛振り

 

 

 



こちらは衣装のメイキング

 

 




こちらはヘアメイク

 

 

 

 

 

 

 

 

アンコールの最後には、1分間だけ撮影タイムがあります。

 

 

 

客席まで降りてきたシーモア!

真後ろ歩いてるーーー

近すぎで慌てすぎてブレてるーーー

 

 

 

 

 

終演後に聞こえてくる言葉も

完璧!
再現度半端ない!
カッコいい!


という興奮した感想で溢れていました。
泣いている人もたくさんいました。
 

 


ユウナの最後の台詞

 

「私たちの時代だよね」

 

「いなくなってしまった人たちのこと、時々でいいから、思い出してください」

 


これこそ、菊之助さんがFFX歌舞伎を通して伝えたかったことなのかな、と思いました。
コロナ禍で壊滅的な打撃を受けた演劇界

志半ばで世を去ってしまった先輩たち
400年に渡り多くの先人たちが作り上げてきた「歌舞伎」を、次の世代に繋いでいく使命。
そういうたくさんの想いの詰まった台詞を、後輩の米吉さんに託したのではないでしょうか。

 

 

 



難しい台詞はないけれど、時に挟まれる七五調やべらんめえ口調のカッコよさ!

 

ド派手な衣装と大胆な演出!

 


もう、まさに「歌舞伎!」というカッコよさが一杯に詰まった舞台です!
まだ4/12まで上演していますし、チケットもありますから、皆様、ぜひ劇場にお運びください。
アラウンドシアターは、この公演を持って閉館となります。
あの360度の空間で再現されるFFXの世界はもう二度と体験できませんよ!!







映像で見ても、迫力の10分の1も伝わりませんが、ご参考までに

 

 

 

 

 

 





そしてこちらは、普段の彼らの様子です。

 

 





FFXのストーリー部分だけを抜き出した動画があったので、少し見てみました。
なかなか忠実に再現されてますね。
でも9時間もある…