クリーチャー・デザイナーズ  ハリウッド特殊効果の魔術師たち | akaneの鑑賞記録

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「ターミネーター2」「ジュラシック・パーク」「スター・ウォーズ」など映画史に残る数々の名作に登場するクリーチャーやモンスターたちと、彼らを生み出してきたクリエイターたちの関係性に迫ったドキュメンタリー。
想像の産物であるクリーチャーやモンスターをスクリーン上に出現させる特撮、特殊効果、特殊造形、そして近年発達の目覚ましいデジタル技術の魅力と背景を、数々の映画で活躍してきた著名アーティスト、クリエイターたちのインタビューをもとに探っていき、「現代のフランケンシュタイン(怪物の創造主)」とも呼ぶべきスペシャリストたちが、クリーチャーやモンスターに息吹を吹き込む瞬間を映し出していく。

 

 

 

 

 

 


2015年にフランスで制作され、2016年から世界で順次公開、そして今年ようやく日本でも公開されました。
一世を風靡したクリエイターたちのインタビューが基本ですが、使われた模型や製作工程、撮影の裏側などもたくさん紹介されています。


まず、特撮には以下のような手法があります。


●特殊メイク

 

役者の顔や体に造作を施すこと。一番の基本ですね。
 

 

 


●着ぐるみ
特殊メイクがもっと進んで、人が中に入って演じるもの。
初代エイリアンも人が演じたそうです!

 

 

ただ、形状によっては演じる人にかなり無理な体勢を強いたり、動きが制限されたり、長時間脱ぐことができないなど、限界もありました。
 

 

 


●パペット

 

クリーチャーそのもののアップなどは、人形を作って手を入れて動かしたり、棒で動かしたりします。
パペットというと可愛いイメージですが、ほぼ実物大の大きな怪獣なども含まれます。
動かしているワイヤーや装置、人を、あとからCG処理で消すなども。

 

 



●ストップモーションアニメ

 

いわゆるコマ撮り。人間の動きでは限界があるものは、まず骨格を組み立ててそこに肉付けし、静止している物体を少しずつ動かしてカメラで撮影し、あたかもそれ自身が連続して動いているかのように見せる映画の撮影技術、技法。

 

 

 



●アニマトロニクス

 

パペットやコマ撮りがもっと進化したのがアニマトロニクス。生物を模したロボットを使って撮影する技術で「アニメーション(動作)」と「エレクトロニクス(電子工学)」を組み合わせた造語。ディズニーランドの人形などでも大活躍しています。

 

 

アニマトロニクスも、眼と口は分業するなど、全身の細かい表現をするために大勢で操作するようになっていきます。






こういった特殊撮影(まずは特殊メイク)を始めたのは、1925年の映画『オペラの怪人』で怪人を演じたロン・チェイニーでした。
彼は自分自身でこの特殊メイクをやったそうです。

 

 

 

 


そして1931年の映画『フランケンシュタイン』
フランケンシュタインといえば、眉のあたりが飛び出したこの顔を思い浮かべますよね。

 

 

モンスター役を演じたボリス・カーロフは、その後もいくつかモンスター役を演じたそうです。

 

 

 

 

 

 


1968年の『猿の惑星』などはラバー製のマスクをかぶっていましたが、まだまだ顔の表情は乏しいものでした。

 

 

 


それらを大きく飛躍させたのはジョージ・ルーカス!
1977年に公開された『スターウォーズ』では、様々な形状の多くの異星人が登場しました。

 

 

 

後述する多くのクリエイターはほとんど、この映画にかかわっており、様々な撮影方法が生み出されました。

 

 


1981年『ハウリング』『狼男アメリカン』は、同時期に作られた狼男の映画で、その変身シーンは非常に画期的でした。

 

 

 

 

 


1982年『遊星からの物体X』の特殊メイク、

 

 

 

1984年『グレムリン』のパペットなどを経て、

 

 

いよいよCGの時代となります。

 

 

 



ジェームズ・キャメロン監督が1989年に手がけ、優れた映像技術でアカデミー賞特殊視覚効果賞を受賞したSF海洋映画「アビス」。

 

 

発光する水中動物のほとんどは、光ファイバーなどを駆使して作り上げた模型でしたが、このシーンは、初めてコンピューターグラフィックスが使用されました。

 

 

CGはまだまだその表現力や価値は決して確立されたものではありませんでしたし、ほんの1分ほどのシーンを作るのにも1年ほどかかったそうです。



1991年、同じくジェームズ・キャメロンが監督の『ターミネーター2』
最新型の液体金属でできたボディを持つ殺人マシン「T-1000」の動きなどでCGを使用しましたが、

 

 

撃たれたりするシーンは人形なのだそうです。

 


 

 

 


1993年、スティーヴン・スピルバーグ監督の『ジュラシックパーク』では、多数の恐竜にCGが使われましたが、

 

 

アップのシーンでは実物大の着ぐるみやアニマトロニクスも多く使われており、

 

 

クリエイター達はCGばかりが注目されることに相当不満だったようです。




その後、現実の人物や物体の動きをデジタル的に記録するモーションキャプチャや3D撮影が開発されます。

 

 

ジェームズ・キャメロン監督、2009年に公開された『アバター』は、製作に4年をかけ、最新の映像技術を駆使して作り上げた初の3Dデジタル作品でした。

 

 

 

 

 


インタビュー出演するクリエイターの一部を紹介します。
特撮マニアの方々にとっては「神」的な存在なのでしょうね。




フィル・ティペット(1951年~)

 

アメリカのストップモーション・アニメーターの第一人者。
『スターウォーズ』のAT-ATも彼のコマ撮りだそうです。

 

 

『ジュラシックパーク』ではあまりにもCGの恐竜映像が素晴らしかったためティペットは降板となりましたが、CGスタッフも恐竜の動作に個性を与える事はできず、ティペットは再び招聘されました。

そしてストップモーション・アニメのように動きを一コマずつコンピュータに入力する装置を開発し恐竜全体の動きを監修するだけでなく、CGスタッフたちにも恐竜の動きを教え、再びアカデミー賞で特殊視覚効果賞を受賞しました。




デニス・ミューレン(1946年~)

 

 

視覚効果スーパーバイザー。常に革命的な技術を生み出してきた人物で、特にスティーヴン・スピルバーグやジョージ・ルーカスの作品『スターウォーズ』『インディージョーンズ』『ジュラシックパーク』などでSFX/VFXを担当しました。
アカデミー視覚効果賞に14回ノミネートされ、8回受賞していて、これは最多記録だそう。





リック・ベイカー(1950年~)

 

 

特殊メイクアーティスト。
『スターウォーズ』『狼男アメリカン』『グレムリン』『メン・イン・ブラック』『マレフィセント』などを担当。

リックが見出したロブ・ボッティンは、『ハウリング』で注目され、当時22歳で『遊星からの物体X』SFX担当に抜擢。「トータルリコール』『ロボコップ』など多数の作品を手がけましたが、業界を去ってしまったようです。




故人なので出演はしませんが、レイ・ハリーハウゼン(1920年 - 2013年)は、アメリカを代表する特撮映画監督・ならびに特殊効果スタッフで、ストップモーション・アニメーターとして20世紀の映画における特撮技術の歴史を作ってきたといわれる人物なのだそうです。主に1950年代から1970年代に活躍、代表作は『キングコング』。

 

 

 



監督として登場するのは


ギレルモ・デル・トロ(1964年~)

 

彼がクリーチャーのデザインでこだわるのは、目の位置と顎のラインだそうです。
目線が上向きか下向きかによって、キャラクターの性格や感情が伝わるのだと。深いですね~。
 

 


『グレムリン』『ハウリング』を手掛けたジョー・ダンテ(1946年~)

 


『狼男アメリカン』『ブルース・ブラザース』、またマイケル・ジャクソンの『スリラー』などを手掛けたジョン・ランディス(1950年~)

 


の会話も面白かったです。
この二人は1981年、奇しくも同時に『狼男アメリカン』『ハウリング』を製作していたのです。

 

 



80年代、特撮が発達した時代に20代だった彼ら。

 


製作陣もまだ若く、予算も技術も何もないところから、手探りで、手作りで作った映画。
監督もスタッフも一丸となって、どうやって撮るか議論をして、不眠不休は当たり前。仕事だなんて思っていなかった。

この世に無いモノを作り出すのは、まるで神のようでもあり
創り出した作品は、自分の子供のようでもありました。

クリエイターたちはみんな、自分も着ぐるみの中に入って演じたりもしてきたわけです。



急激にデジタル化が進み、アナログ手法のクリエイター達は仕事を失う危機に陥り、全てがデジタル化して分業化していくうちに、特撮のスタッフへの尊厳もなくなっていきました。
廃業した人、スタジオを閉めた人も多かったようです。

 


CGで動きを作る際も、解剖学に基づいた骨格設計をし、関節の可動域なども、ちゃんと計算しているそうですが、リアルな動きの特徴や表現などは長年の経験に勝るものはありません。
そういったアドバイザーとして復活した人、後進の育成やCG制作にシフトした人もいます。

 


操演者の動きをモーションキャプチャーでトレスしたり、昔の特撮技術の表現を踏まえて作らなければ、空想の産物であるモンスターたちはリアリティを伴う表現とならないとし、ハリウッドではアナログ特撮の重要性を踏まえた教育・育成に務めているというのがさすがですね。





納期が短くなり、無理して仕上げると次はもっと短くなる

予算や納期に縛られると「仕事」になってしまう


ハリウッドでも私たちの俗世と同じように、世知辛くなってきているんですね。



彼らの青春の全てを賭けた80年代の映画作りは、本当に楽しかったのだろうなと思います。
70歳代となった今でも、怪獣とヒーローを両手に持って遊ぶ男の子そのまま、目をキラキラ輝かせて語る姿が微笑ましかったです。

そして親子で仕事を継いでいる人も何人かいました。
お父さんの仕事、誇らしかったんでしょうね。





同じように映画技術の裏側を描いた作品としてはこちらもあります。
 

 

 


こちらの方が、系統立てた構成で映画としては分かりやすく、「クリーチャーズ」の方は、ほぼインタビューで実際の映画シーンの紹介は少なかったですね。フランス制作だから制限があったのかも。
でも両方見ると「音と映像」それぞれの発展が良くわかって面白いですよ。

80年代、いかに「映画」というコンテンツが進化したか。

いずれも『スターウォーズ』でそれまでの映画表現を覆す手法が多数生み出され、『ジュラシックパーク』でデジタル化が進んだのは共通しているようです。