八月花形歌舞伎「与話情浮名横櫛」 | akaneの鑑賞記録

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はい、六本木の後は東銀座ですよ。
半年ぶりに開場した歌舞伎座!
八月花形歌舞伎です!



通常は、昼の部と夜の部の二回公演ですが、今回は四部制。

 

 

 

出演者もスタッフもお客様も4回総入れ替えでの公演です。
こうすれば、どこかの部で感染者が出てしまっても、全公演中止しなくても続けられるシステム。
歌舞伎と言えば、休憩中にお弁当を食べたり、お土産屋さんをひやかしたりするのも楽しみなのですが、それは一切なし。
贔屓の方や役者さんのご家族も楽屋に行くのは禁止なのだとか。

 

 

 

 


今回は第4部の「与話情浮名横櫛 よわなさけうきなのよこぐし」のみ観劇。

これは世話物(江戸時代の現代劇)としては、とても人気で有名なお芝居で、浮世絵もたくさん残っています。

 

昔は「お富さん」という歌謡曲もありました。
「死んだはずだよ お富さん~♪」という一節は、私もなんとなく聞き覚えがあります。
「切られの与三」などのタイトルで、映画などにもなっています。

 

 


簡単にあらすじをご紹介しましょう。

 


主役の男女はこの二人

 

●与三郎
江戸の小間物問屋「伊豆屋」の若旦那。

元々は武家の息子で、子供のない伊豆屋へ養子として入りました。
働き者で気立ても良く超イケメン。

しかし義理の親に実の子供が生まれたため、その弟に店を継がせた方が良いだろうと思ってしまいます。

わざとグレた振りをして放蕩三昧を重ねて勘当され、木更津の親戚のもとへ預けられ謹慎中。



●お富
元は深川の売れっ子芸者、こちらも超美人!
身受けされて今は木更津のやくざの親分・赤間源左衛門の妾として、何不自由なく暮らしていますが、やはり田舎暮らしは刺激がなく、江戸での暮らしを思ってちょっと憂鬱モード。



ぶらぶらと浜辺へ出た与三郎は、大勢の子分や女中をお供に浜遊びをするお富とすれ違って一目惚れしてしまいます。

お富も片田舎では見かけない江戸前イケメンの与三郎にフォーリンラブ!

 

この「見染」の場面では、与三郎はかなり優男で、ちょっとオネェが入ってるぐらいのキャラなんです。
お富さんに見惚れて、羽織が脱げるのも気付かないぐらいボ~~~っとしちゃう「羽織落とし」のシーンが見せ所。
お富さんも、花道を去りながら与三郎を見つめ「良い眺めだね~」って言います。

 

 

 


その後も、源左衛門の目を盗んでひっそりと手紙を交わしたりしていた二人ですが、親分が泊まりで鎌倉に行くと知り、お富は与三郎を呼び寄せ、逢瀬を楽しみます。
しかし子分に気付かれ、その知らせで急遽戻ってきた源左衛門に見つかってしまいます!
与三郎は、体中34か所も切り刻まれて放り出され、お富は逃げ切れないと悟り、海へ飛び込みます。

 

 


ここまでが前振りですが、今回は上演されません。
その騒動から三年後。

三幕目の「源氏店妾宅の場」のみの上演です。

 


とってもざっくり言うと「重役が囲っている愛人宅に、元カレが訪ねてくる」場面です。
 

 


お富は、偶然通りかかった船に助けられ、質店和泉屋の番頭多左衛門に囲われ、源氏店(げんじだな)の妾宅で何不自由ない暮らしをしていました。


通常は、お富さんが銭湯から帰ってくる外の場面から演じますが、すでに家の中に入っているところから開始。極力、場面転換、セットの転換を減らしているのだと思います。

 

 


雨宿りをしていた番頭の藤八さんも座敷に座っています。
藤八は化粧を直すお富にずうずうしく近寄り、自分もおしろいを付けて欲しいと言い出します。

お富も退屈しのぎに適当にあしらうこのシーンは、役者さん御用達のおしろいメーカー名を出したり、色々と遊んで良い場面です。
今回は「おしろいはね、ここから出して自分でやっておくれ」と言ったり、紅もさして欲しいとねだる藤八さんに「こういうご時世だからね」と、伸縮棒の先に付けた紅筆で塗ってあげたりしてました。





傷だらけの体で流れ着き、ごろつきの蝙蝠安(こうもりやす)に拾われて相棒になった与三郎は、傷跡を見せて脅しては強請りたかりで日銭を稼ぐ日々。
今日も、蝙蝠安はお得意先の「源氏店」へ、初めて与三郎を連れて行きます。

 


「俺が話つけるから、お前は黙って座ってな」

 


「傷だらけのコイツを湯治でも行かせてやりたいんで…」とネチネチお金をせびる蝙蝠安。
居合わせた藤八さんが小銭をくれてやっても取り合わず、だんだん押し問答が面倒になってきたお富は「これでも立派な亭主のある体だ」と啖呵を切って、一分(3万円ぐらいの銀貨)を投げてやる。
蝙蝠安が有難く受け取って引き下がろうとすると、それまで黙っていた与三郎が押し止めた。





「もし、御新造さんえ、おかみさんえ……お富さんえ……イヤさお富、久しぶりだ~な~」

お富さん、ビックリ!

「おぬしアおれを見忘れたかい!」「与三郎だ!」

と、頬かむりをとって、着物の裾をパッと捲って、太もも丸出しで座って決まる姿のカッコよさ!

 

 

そして「しがねえ恋の情が仇、~」で始まる七五調の名セリフ。




死んだと思っていた女が生きていて
しかもまた、知らない男の妾になってる!
俺はこんなに苦労したのに!
この家のものは、かまどの灰までオレのものだ!
はした金なんかもらって帰れるか!



与三郎さん、激オコ!



そこへお富を囲う和泉屋の番頭・多左衛門が帰ってきました。
この男は誰かと尋ねられ、お富はとっさに「兄さんだ」と言いつくろいます。
すべてを悟った多左衛門は、与三郎に向かって「お富を囲っているが男女の関係はない」といい、「ちゃんと身辺を整理して適当な商売でも始めなさい。それが落ち着いたらお富を迎えに来なさい」と、与三郎に相当な金を渡します。

 

 



金をもらった蝙蝠安と与三郎が引き上げたあと、店から迎えがきたので、多左衛門はお富に自分のお守り袋を渡して店へ戻っていきます。お富がお守り袋を開くと臍の緒書が入っており、多左衛門はお富の実の兄だったのです。(よくあるパターン)

 



そっと戻ってきた与三郎に、お富は多左衛門が実の兄であったと知らせ、二人は多左衛門に感謝、最後は二人でひし!と抱き合って「おめえを一生はなさねぇよ!!」で幕切れになるんですが、





今回は手ぬぐいを投げて、その端と端を持ってソーシャルディスタンスを保ちつつ(笑)見つめあう形で幕。





与三郎は松本幸四郎さん。
今はやさぐれているけれど、本来は良家の出身で品のある優しい人物というのがピッタリです。
七五調のセリフも鮮やかで惚れ惚れしました。

 

 

歌舞伎のお化粧って、この目頭のところにラインを入れるんですね。
元々幸四郎さんはとっても睫毛が長いんですが、こうすると、目を伏せた時に、もっと睫毛が強調されて、涼やかな目元になるんです。


物憂げに登場するところから超絶にカッコいいし、一途に思っていたお富に裏切られたと思って怒りつつも、ちょっと甘えた可愛げもあって、いやもうカッコかわゆす。それしか言えん。
 

 




児太郎さんのお富さんは、ちょいとガタイが良すぎたかな~。ラグビー選手だったからね。
器用な人なんだけど、ぞんざいな物言いとかすると、ドスが効いてて強すぎるかも。色っぽい感じ、与三郎への思いの部分と差がつきすぎちゃうというか。
その辺は今年1月、浅草でやった米吉君の方が巧かったです。

 

 

 

児太郎さんは、時代物の方が合うのかも。

 

 


蝙蝠安は坂東彌十郎さん。
情けない感じとドスのきいた感じ、両方演じられるベテランですから安心。

 

藤八さんは、坂東亀蔵さん。
こういうちょっと下卑てていじられキャラ、お手の物です。

多左衛門は市川中車(香川照之)さん。
うん、基本通りきっちり演じてたかな。
大人しい大和田部長だったです。




やっぱり久しぶりの歌舞伎座は華やかな気持ちになりますね。
地下の木挽町広場もそのまま、

 

 

夏らしく風鈴が売られていました。

 

 

 


入場時にはグラフィックモニターで体温測定、アルコール消毒、チケットは自分でもぎり、筋書(プログラム)も販売せず、簡単なあらすじと配役が書かれたチラシを各自で取ります。
徹底的にスタッフと客との接触を避けていますね。

 

 

 

客席ももちろん半分以下。

歌舞伎座らしく、赤い布で椅子を止めてあります。

 

桟敷席は、靴を脱ぐので使用せず、上演中も換気のため扉を全部開けっ放しです。
ブランケットやオペラグラスなどの貸し出しもありませんし、売店も水ぐらいしか売っていません。
自販機もストップ。大向うも禁止です。
場内では常に、感染対策のアナウンスが流れ、スタッフも一切声を出さず、大きなボードを持って通路に立ちます。
退場の際も「ここまでの方、ご退出ください」と書かれたボードで、数列ずつのご案内。

それぞれの上演の合間には、客席を消毒。

 




出演者やスタッフ、総勢500名ほど全員がPCR検査を受けています。
8/5、第3部のスタッフに発熱者が出た際には、即座に第3部のみ公演を中止。
夜には陰性と判明したので翌日からはまた上演など、徹底した対策を実行しています。

 


厳しい制限はありますが、こうしていくつか劇場に足を運ぶと、やっぱり気持ちも華やぐし楽しいですね。
いつ頃になったら、通常通りの興行ができるようになるのかなぁ。。。


また前のブログに戻ってしまいますが、ここまで徹底して赤字覚悟で公演をしているのに、政府は…って思ってしまいます。

 

 

 


歌舞伎座から帰宅したら、ちょうど「半沢直樹」が始まりました!
今回も超コッテリでしたね!!
油マシマシでしたね!!
そして鮮やかな大岡越前のお裁き!


ちが~う!!

 

 



銀行に戻ることが決まった半沢が、証券会社の若手たちに残していくスピーチがとっても良かったです。
『どんな会社にいても、どんな仕事をしていても、自分の仕事にプライドを持って、日々奮闘し、達成感を得ている人のことを本当の勝ち組というんじゃないかと、俺は思う。』


泣くよねーーー。

 

 


次回からは帝国航空のお話になるので、猿之助さんはもう登場しないのかな??
半沢と大和田。
憎みあっているようで、意外と気が合うのかも(笑)
 

 

 


さてさて、これで8月9日(日)のスケジュール、ミッションコプリートです!
13時に新国立劇場
15時に新宿
17時に六本木ヒルズ
19時に歌舞伎座
21時に自宅

と、全て狙った通り。

きら~ん!