「ディパーテッド」と「インファナル・アフェア」 | akaneの鑑賞記録

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巨匠マーティン・スコセッシが、香港映画『インファナル・アフェア』をリメイクしたアクションサスペンス。

マフィアに潜入した警察官と、警察に潜入したマフィアの死闘がスリリングに描かれる。

レオナルド・ディカプリオとマット・デイモンが主人公の警察官とマフィアをそれぞれ熱演。

名優ジャック・ニコルソンがマフィアのボス役で脇を固める。

 

 


犯罪者の一族に生まれたビリー(レオナルド・ディカプリオ)は、自らの生い立ちと決別するため警察官を志し、優秀な成績で警察学校を卒業。

しかし、警察に入るなり、彼はマフィアへの潜入捜査を命じられる。

 

 

 

一方、マフィアのボス、コステロ(ジャック・ニコルソン)にかわいがられて育ったコリン(マット・デイモン)は、内通者となるためコステロの指示で警察官になる。

 

 

お互い素性を隠して潜入生活を続けるビリーとコリンだったが、やがて警察もマフィアも内部に通報者がいることに気づき、お互いの情報源を使って、通報者を突き止めようとする。
 

 

 

予告編

 

 

 




2002年に公開された香港映画「インファナル・アフェア」は、私の生涯ベスト10に入るほど、大好きな作品です。
そのリメイク版が2006年に作られていたことは知りませんでした。
しかも監督・製作はマーティン・スコセッシ。
出演はレオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソン、マーク・ウォールバーグ、マーティン・シーン、アレック・ボールドウィンとくれば、大いに期待しちゃうじゃないですか!!!
 

 

 

 

 


でも・・・全然ダメでした。私は。

恐らく、この作品だけ見た人は凄く楽しめたと思います。
でもオリジナルを好きな人にはあまりお勧めできません。
見終わってからどうにもモヤモヤが収まらず、速攻オリジナル版を見直しました。



ストーリーも設定も、印象的なシーンもほとんどそのままリメイクされています。例えば


左手のギプス
封筒の文字
映画館
携帯電話の多用(折りたたみ~~!)
弁護士に化けて情報を得る
屋上での密会
夕食に帰れない、と電話する
落下して死亡
見張りをしている子分たちが「誰が警官か見分ける方法」を話している
身内に素性がバレてた(死ぬけど)
エレベーターのシーン(ドアがパタパタするところ)
潜入捜査官の警察登録を抹消する


などなど。
 

 

 

 


でも大きく違っていて、どうも腑に落ちない部分もいくつか。
以下、香港版との比較で多少ネタバレしてます。

 

 

 

 

 

 

 

 


このキャスト、覚えておいてくださいね。

 


●マフィアに潜入している警察官

 

ビリー(レオナルド・ディカプリオ)⇒アメリカ版

 

 

ヤン(トニー・レオン)⇒香港版

 

 

 

 

●マフィアから潜入している警察官

 

コリン(マット・デイモン)⇒アメリカ版

 

 

ラウ(アンディ・ラウ)⇒香港版

 

 

 

 

●二人の上司にあたるウォン警視

 

 

 

 

 

 

 

まず!登場人物が多すぎる。
「え?お前誰だっけ?」みたいな人が急に現われて重要なアクション起こしたりするから分かりにくい。

最後のエレベーターのシーンも、無意味に1人多い!

 

 


警察側の上司、ウォン警視にあたる人物が3人もいます。

 

★クイーナン警部(マーティン・シーン)

マサチューセッツ州警察の"特別捜査課" ビリーに潜入捜査を命じる。一応ポジション的には一番近い。

 

 

★ディグナム巡査部長(マーク・ウォールバーグ)

クイーナン警部の部下 メチャクチャ口が悪い

 

★エーラビー警部(アレック・ボールドウィン)

サリバンが配属されたエリート集団SIU"特別捜査課"のメンバー

 

 

 

 

警察とマフィア、それぞれに潜入捜査をしている二人の上司にあたる人が同一人物、というところが、この物語のキーポイントだと思うんですよ。
マフィアに潜入しているヤンに対しても、いつもさりげなく気遣っていて身寄りのないヤンの父親的存在でしたし、

 

 

 

直属の部下ラウとも信頼関係が築けていて、だからこそ、ウォン警視の殉職は大きなショックなんですよね。

 

 

 

 

 

なのに、それが3人もいたら意味なくないですか?

あんまりビリーと信頼関係もないし。
さらにFBIもからんでいるのですが、なんだかこじつけっぽい。
特にマーク・ウォールバーグがもう訳わからんぐらい暴言吐きまくりで、途中「こんなとこやってられっか!!」と退職したと思ったら、ラストにとんでもないことするんですよ!
なにそれ?個人的恨み?

1周回ってマフィア側の人間だった??
 

 

 

 


カウンセラーの女性

ドクター・リー(ケリー・チャン)が美しい。。。

 

 

彼女とヤンの関係って、とてもピュアでプラトニックで美しいんです。
カウンセリングのひとときは、ヤンが唯一、安心して眠れる場所だったんです。
ラウには、ちゃんと小説家の婚約者がいました。

 


なのにねー、精神科医のマドリンは、コリンと同棲しつつ、

 

ビリーの担当医でもあって、ちょっとフタマタかけたりする。

 

 

 

 

 

 

マフィアのボスであるコステロもね、もちろんジャック・ニコルソンの演技は素晴らしいです。

 

 

バットマンのジョーカーみたいな感じかな。
でもね、ちょっと品がなさすぎるっていうか~~
静かでニコニコしてるサムの方が、怖いよね。


 

 

 

 

 

 

こういうマフィアの組織には、必ず「先輩風吹かす割には頭悪くてパシリしかできないけど、なんか主人公になついている可愛い奴」みたいなキャラ、いるじゃないですか。
オリジナル版だと、ヤンが潜入捜査官だと気付いて「ボスに気を付けろよ…」と言いながら死んでいくんですけど、アメリカ版だとこれも「お前だれ?」ってぐらいうっすい存在の人だった。

 

 

 


ビリーのキャラも荒れすぎなんですよ。
すぐにブチ切れて暴力振るう。
そうやってアピールしてコステロに取り入って早く重要メンバーになりたい、っていうのもあるのかもしれませんけど。
ヤンは、有能ではあるけれど、どちらかというと物静かであまり目立たないようにしてますから。
その憂いを秘めた雰囲気がいいんですよ~~。トニー様~~。

そう考えるとオリジナルの方は、最後の銃撃戦ぐらいで、アクションシーン、少なかったですね。
でもメチャクチャ緊張感あふれてますよ。

 

 

 


この佇まいの違い


 

 

 

 

 

そして、非常に重要な「モールス信号」は全く使われていませんでした。

 

 



アイリッシュマン」でも思いましたけど、ハッキリ言って無駄なシーンが多いと思います。
オリジナルが1時間40分、アメリカ版が2時間半というのが物語っているでしょう。

 

 

 

 


そして最も違和感があったのがラストシーン。
きちんとヤンの身分も復活させ、殉職警官として手厚く弔ったのに対して、全員皆殺しで終わるってねぇ・・・
東洋人と西洋人の考え方の違いかなぁ
これで第79回アカデミー賞 作品賞、監督賞、脚色賞、編集賞受賞ってのは納得いかん!
どうもスコセッシ監督とは相性が悪いのかも。




シチリア系イタリア移民の家に生まれ、マフィアの支配するイタリア移民社会で育ったマーティン・スコセッシ監督の感性なんでしょうね。
この映画でも「マフィアと警官はアイルランド系が多い」というセリフがあり、ちょっと調べてみたところ(ウィキペヂアより引用)



アイルランド人は歴史的にアメリカ人の圧倒的多数であるイングランド系のルーツであるイングランドに支配された地ということ、カトリック教徒であることから不当な差別を受け、アイルランド人の利用を公然と拒んだ店も存在した。この差別に立ち向かうためにマフィアとなったアイルランド系も少なくなかった。
初期の移民の職業は警察官、消防士、軍人などが多く、アイルランド系の警官、消防士、軍人が活躍する映画が多い。これは移民として比較的後発だったため、命がけの危険な仕事にしかありつけなかった歴史的事情や、血気盛んなアイルランド気質ともマッチしている要因が挙げられる。このことからアイルランド系移民には、それぞれの家代々で警官や消防官を勤める者がいる場合も少なくない。また文化・伝統的側面においても大いに影響があり、警察や消防では慶弔様々な式典においてバグパイプ隊による演奏が行われる。



こういう背景があるんですね。
だから葬儀のシーンでバグパイプが演奏されていたのか~



あとね、血の気が多いというかとにかくFuckとかファッキンとか乱発しすぎ。語彙力!って感じ。
 

 

 


前半に、ヤンとラウが、お互いを知らずあるオーディオショップで会話を交わすシーンがあります。
とても穏やかで印象的なシーン。
ラストに繋がる伏線でもあり、お互いが「あの時の…」ってなるんですけど、心理が丁寧に、静かに描かれているオリジナル版が、やっぱり好きです。
カメラワーク、音楽も素晴らしいですよ。
当時、共に40歳のトニー・レオン、アンディ・ラウの二人も非常にカッコイイです。

もし未見の方がいらっしゃいましたら是非!おススメします!

 

 

 

 

2012年には、香川照之×西島秀俊 で日本リメイク版も作られましたが、これは観ていないです。